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第四章⑨

 ザックの隠れ家に帰ると、皆、意気消沈の面持ちだった。僕も、色々なことがあり過ぎて気持ちの整理が出来ていなかった。


「作戦は失敗だ。ザック、助けに来てもらってすまなかった。穴埋めは絶対にする――ただ、少し席を外してくれねぇか」


 ザックは頷くと、「見張っとく」と一言告げて外に出た。僕たち三人だけが、隠れ家に残った。


「まず一ついいか」


 ソウが第一声を話した。その声には、いつもの快活さは感じられなかった。


「ーーアリシア。クルエスに寝返ったわけじゃねぇんだよな」

「私は……そうするのがみんなのためだと思って――」

「どうなんだ!?」

「寝返ったわけでは、ない、です。昨日、たまたま彼に出会って、話をしただけです。でも、グレンさんが私たちを助けにくることを……伝えてしまった……」


 アリシアもとっくに状況は理解出来ているようだった。


「……裏切りじゃねぇってことは理解した。済んだことは仕方ねぇんだ。じゃあこれからどうするかの話をしないとなんねぇ。ハルーー今回の件で俺たちの目的はどう変わった?」


 僕はソウに名指しで問われた。アドレナリンは落ち着いている。一呼吸つくと、答えた。


「元々の目的は、僕たちの無実を証明したかったことと、クルエスと話をすることーーだった。でも、奴は、僕たちが考えているよりも、もっともっと良くないことを考えている。もはや、罪の証明やらの話じゃない。それに、グレンを、仲間も取り戻したい。でも、それだけじゃダメだ。奴をなんとかする。何ができるか分からないけど、そうしないと、もっといろいろなものを奪われてしまうと思うから……仲間を、グレンを取り戻して、クルエスを止める。僕は、その二つだ」

「……クルエスは、『理想のため、赤いドラゴンが必要』と言っていた。グレンを取り返すことは、そのまま奴の野望を打ち砕くことになる。俺たちの目標は――グレンを取り返すこと。アリシアは?」


 アリシアは名指しされると、体を震わせ、言葉に詰まりながらも想いを発した。


「……私は、分からない。何が正しいのか、何に従えばいいのか――分からなくなってしまいました」

「まあ、そう考えてしまう気持ちはわからなくもねぇ。ただ、仲間が捕まったんだ!それすら何とも思わねぇのか?そんなに薄情だったのか?」


 ソウは、アリシアの反応に鬼気迫る剣幕で返答した。さすがの僕も言い過ぎだと感じたものの、突然のことで静止することは出来なかった。

 アリシアはーー目に涙を浮かべると、顔を伏せてしまった。


「ソウ、言い過ぎだって」

「……ふん」


 会話が、止まった。旅を始めて初めて、三人の感情がバラバラになってしまった。ずっと一つの方向を向いているものだと思っていたのに、クルエスに出会って、想いが空中分解してしまったのだ。


「お前ら、ちょっといいか?驚かないでほしいんだが……」


 しんとした室内に、玄関扉が開く音とザックの申し訳無さそうな声が広がった。


「なんだ?俺たちに用事?今大事な話をしてるんだ。後にしてくれ」


 ソウはザックに断りを入れたものの、場のボルテージが徐々に下がっていくのを感じる。僕も、この雰囲気を遮ってまで何の話があるのかと驚いた。


「あ、おい、まだ話はついてなくてーーちょっと待て……」


 家の外には人がいるようで、ザックはその人が家に入るのを引き止めようとした。でも、その人はお構いなしに扉を開け放ち、僕たちはそれが敵かもしれないと身構えたところでーー


「皆さん、ご機嫌よう。ソウの母の、ゾラです」

「は……母……さん?」


 ソウの母と自称するゾラという女性が、扉の向こうから背筋をしゃんと伸ばして真っ直ぐ僕たちを見ていた。

 その女性の顔立ちは、確かにソウと似ていて、整っていた。そして、僕たちの心を見透かしているような、強い目をしていたが、柔らかな笑顔も合わせ持っている。顔には皺も刻まれているものの、透き通った白髪を下ろしており、年齢はそこまで年配と思えなかった。さらには、シシリーは僕の中にある"魔法使い"と同じイメージの紫のコートを羽織っていたが、なぜだろう、同じようなコートを身に着けていたのだ。


「ソウ、皆様。突然で申し訳ありません。先程の式典で姿を見かけ、跡を付けさせて頂きました。ただ、これは私の独断ですので、誰かに私の行き先を告げている訳ではありません。その反面、お話できる時間はわずかですが」


 突然のことに、みな戸惑いを隠せなかった。確か、ゾラはクルエスの元で研究をしているとのことだったから、僕だって、こんな俗世間で姿を見ることになるとは思ってもいなかったのだ。


「いや、何もかも突然過ぎて……なんでここに?」

「今日は、クルエスにとって、とても重要な式典だったの。彼の目的のためにね。だから、その一員である私も招集されていたわ。式典は終わったから、夜が明けたら元いた施設に戻るけれど」


 それを聞いたソウは、苦しげな表情になった。


「そうじゃなくて!せっかく八年ぶりに会ったのに……何の話をしに来たのか――」

「それも含めて全てお話しします。皆様はクルエスを止めに来たのですよね?私はそのことについて、大事な話を伝えに来たのです」

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