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第三章⑨-ex(サウル)

「サウルさん。この前の奴ら、ミストラに連れていきましたよ。でも、あの運ぶだけのつまらない仕事、これで最後だって聞きましたけど本当ですかね?」

「ああ。受け入れ上限に到達したらしいからな。今後は通常処理に切り替える」

「よかったー。サヌールで処理できるならまだ耐えられますよ」


 部下の返答を聞きつつ、私は遠くにそびえる山を見据えた。


「どうしました、リーダー?」


 タナラタ山を遠巻きに眺めていた私を気にしたのか、部下が様子を伺った。


「いや、現地はどんな状況になっているのかと思ってな」

「特級チームも大勢現地入りしてますし、先遣隊としてリーラさんも向かってるって聞きました。この包囲網から逃げられたら大したもんですよ」

「それはわかっている。ただ、メンツが異色すぎてな……どんな動きを取るのか読めん」


 うち二人はギルドに加入したばかりの超初心者。しかし、一人はスキルの充実度が非常に高く、もう一人はやたらと尖ったスキルを持っている。しかも、初めての依頼受注時にドラゴンと遭遇するという運も併せ持っている。

 もう一人は私たちの部隊を急襲したグループのリーダー。戦闘が不利になるや否や仲間ごと無傷で離脱。他の部下の能力は今ひとつだったものの、そのリーダーは飛び抜けたスキルを保有していた。

 成熟したチームなら、良くも悪くも動きを読みやすいが、急ごしらえの若輩チームであればあるほど、空中分解する可能性も高いが、化ける可能性も高い。このチームも例外なく前者だと思っているが、あの"ハル"という若者次第で後者に転ぶかもしれないと感じている。覇気は感じないし腕力も飛び抜けているわけではなさそうだが、どこか惹かれるものがあったのだ。


「万が一山を越えたら例の村ですよね?」


 部下が声を潜めて口にした。我々特級チームこそその存在を知っているが、名前と、その村で起きたことは口外厳禁だった。


「そうだな。恐らく」

「知られたらどうするんですかね?」

「二名は既にギルドからは除名されているし、三人共々指名手配の身だ。何ができるというわけではないだろう。あと、そうだ」


 先程村のギルド支部にて受けた情報のことを思い出した。


「もし山でとり逃してしまった場合、その後の追跡は最低限でいいらしい」

「へ、クルエスさんがそんな指令を?珍しく手を抜いてますね」


 部下が驚いた声を上げた。私がその話を聞いた時も少し驚いた。


「いや、その逆で、ご自身で手を下すそうだ。そのうち向こうから会いに来るだろうから、今は放置してよいと」

「やっぱ天才の考えることはわからねえっす。赤いドラゴンを捕まえたとて何をするつもりか分からないし……」

「それは我々が考えることじゃない。さあ、そろそろ行くぞ」

「了解っす」

「では、サヌールからカタニアへ帰還する」


そう、私たちは指示さえ守っていればよいのだ。誰が、何を思おうが、何をしようが事態は何も変わらないし、変えられもしない。関わるつもりもないーー


 私は荷物を担ぐと、部下とともに西への街道に足を向けた。

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