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第一章⑬

 宿屋の硬いベッドにて目覚めた後、出発の時間まで時間を持て余していたので、手荷物を確認しようと手持ちの道具を床へ並べてみた。

 重さを厳選しつつも、旅立ちの時と比べかなりの種類を揃えることができている。昨日、宿を確保してから街を散策して、道具を買い揃えたのだ。

 アリシア曰く、『暫くはカタニアの街に留まるので、まずは日帰りの冒険用具』があれば良いとのことだった。そこで、一般的だと言われている回復用のポーションや魔導水、非常食を中心に買い揃えたのだ。荷物が増えれば、当然ながら万が一の戦闘で俊敏性を失うことになるから、必要な分を揃えつつも極力最小限の量にしている。とはいえ、今回は初めての依頼受注になるので、多少は多めに持ち歩こうと考えている。

 余分な量も含め、荷物を全て鞄に収めると、言語変換の魔導石を首から下げた。そして、昨日アリシアから分けてもらったお金をポケットに入れる。お金の残金はきっかり金貨一枚。シスターの太っ腹にも感謝をしつつ、宿の部屋を後にした。


ーーーーーーーーー


「おはようございます」


 宿の前には、すでにアリシアが待っていた。身なりは昨日と同様だが、鞄だけは違っていて、僕と同じ小さなサイズのものに変わっていた。持っていた大量の荷物は部屋に置いてきたらしい。


「遅くなってごめん。じゃあ出発、しようか」


 僕が促すと、アリシアは意気揚々、昨日のギルドへ向かって歩き出した。そして、道中に口を開いた。


「今日の依頼について相談があります。お金は大事ですが、初めて依頼を受けるわけですし、余力が残りそうな依頼を受注しましょう。今日の目的は、依頼に慣れることと、連携を磨くことだと考えています」

「連携?」

「はい。強敵と対峙する際、組んでいるパーティの連携が重要になります。スキルは生涯変わりませんので、個人の技量や連携を向上させておかなければ、どこかで壁に当たってしまいます。ただ、技量は一朝一夕とはいきませんので、まずは連携ということに。幸運にも、私が前衛、ハルさんは後衛に向いた技能ですので」


 確かに、人によって一生スキルレベルが変わらないのであれば、個人での能力伸長は長年の積み重ねに限られるが、連携した戦い方は磨いておいて損はないということになる。シスターが無理に二人旅をさせた理由の一つにも感じられた。


「連携か……頑張るよ。後は実戦でも相談させてほしい」


 もう少し話を続けたかったところだが、ギルドに到着したので会話を中断した。早朝にも関わらず人の出入りが見られ、活気な様子が感じられる。もちろん、室内も昨日ほどではないものの相応に人で溢れていた。


「右手に行くと依頼があります。今日は比較的安全な『採取』にしましょう。ここから三つ目の部屋ですね」


 アリシアの後を追い、『採取』と書かれている扉へ入室した。地味な依頼と思いつつも、案外、室内には人が多くて驚いた。


「安全で稼ぎも見込むことができる依頼はそうありません。大抵はハイリスク・ハイリターンか、ローリスク・ローリターンかのどちらかです。採取は後者の最たるものですね。報酬は少ないですが依頼の数が豊富なので、ついでに受注する冒険者が多いのです。私たちは複数受注して数をこなしましょうか」

「なるほど、じゃあどれを受注しようか」


 掲示板に貼り付けられている依頼書を一枚一枚見ながら吟味する。手前のほうに人だかりができており、手軽な依頼が中心のようだった。一方で奥に行くほど報酬が高くなるようで、熟練の冒険者がよく受注するようだ。


「私も初めての依頼です。初心者は"安値を受ける"ことが相場らしいですね。依頼の報酬はギルド算定済みですので、安ければ安いほど難易度も低いということです」

「報酬が安いからといって、ぼったくられることはないってことか――じゃあ、これとこれはどうだろ?」


 僕が指し示したのは、報酬が一番下と二番目の二枚だった。少し余裕を持たせすぎているのかもしれないけど、アリシアも初めての依頼なのだ。初日から無理する必要はない。


「私もそれでよいと思います。ですが、お互い初めてですので、油断は禁物です」


 アリシアは二枚の依頼書をはがすと、ギルド登録証と共に受付へ渡した。それを見た僕も登録証を差し出す。受付をしている男は、僕の登録証を無言で受け取ると、魔導石らしきものと依頼書と共に重ねた。すると、魔導石が仄かに光り、それが収まると登録証を返却された。


「それで受注完了です。では、さっそく初依頼をこなしましょうか。まずは街の外へ出ましょう」


 魔法は、便利でとてもすごいのだと、改めて感心してしまった。そして、これから初めて依頼をこなすのだ。僕は気を引き締めて、ギルドの外へ向かった。

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