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第三の障害 浮遊石を求め剛腕凄腕を奮う ハシャルバード共和国編

海賊と開戦に勝利した後、大陸唯一の王政廃止した貴族院主導による民主主義を目指すシャハルバート共和国に入国したクリスティア達。

その目的はこの国で国家の承認が必要でしか手に入らない宙に浮く石「浮遊石」を輸入する為だった。

浮遊石はその名の通り宙に浮く石でシャハルバードでしか手にはいらない鉱物。

少量なら取引が可能だった。

承認を担当しているデュアル=ルファンツッア伯爵と面会するクリスティア達を待っていたのは?

掘削現場の見学と事故、大統領との出会い。

無事に取引できるのでしょうか?

海賊との戦いの後、私達は負傷者の手当と船の修理とで休まる時がないほどバタバタとしてた。


何人かは入国後に病院に移送しなくてはならない者はいるものの、重症者さえおらず彼らの優秀さに頭があがらない。

船底深くに隠していた仕入れの品に被害はなかったので、あの戦の規模からは最小限の被害といえた。

やはりひとりでは何も出来ないわね。


そんな事を重いながら、甲板に出て広大な景色を見渡す。

陸が近く波も穏やかになって来た。


対岸の陸が見え始める。

初めての外国に遂に足を踏み入れる。

ほとんど宮殿で過し、定期的に離宮をいつくか訪問するくらいだった。

ちいさな世界で両親が話してくれた旅の話は最高に興奮したものだった。


では戦いだけは違っていた。

人を殺めるとは自分への代償も深く大きい。

それでもやめられない。

だってまだまだ仲間がいるから。



爽やかな風に髪がたなびく。

いいようのない高揚感が風になびくあの国で、さらなる出会いが私を違う世界へ運んでくれるだろうか?

新たな世界へ。





五人はまだ戦いの跡の残るデッキのベンチで交戦後の余韻にいた。


「俺は実践は初めてだった。

 クリスティア団長のあの発光体のおかげで命びろいしたよ。

 商品は使い道なんだな」


カミーユは固いけど認めてくれるところはちゃんと認めてくれるのね。


「役に立ってよかった。

 もう少し小さくして女性の護身用に売るのもいいわね」


私がなにげに言った一言にラインハルトが大笑いする。


「まったく。

 死ぬかもしれなかったのに。

 たいしたもんだ。」


「……。」


「でも私も初めて人を殺した。

 この罪は一生抱えて

 生きていく」


エレーヌが覚悟したようにぼそりと言った。


海賊といえど人だ。

悪人といえど人だと。


「殺さなきゃ。殺される。

 世の中はそういう時もある」


ジョルジュがさらりと言ってのけた。

男の狩人精神だろうか?


「初めて人を殺したあの感覚を忘れないようにしている。

 おそらくは軍人さえも好きで殺めているのではないだらう。

 誰もみなそれを抱えているだろう」


ラインハルトの言葉はその通りだろうと思うが、まだ私達には彼のような粋には達していない。


「私も罪悪感の中にいる。

 本当に……頭ではわかっていたのに。

 訓練と知識は違うのね。

 あんな人の……感覚…あんな他の人に…駄目よね……

 駄目……そう……

 今何故いけないのか?

 どうすればいいのか?

 こんな気持ちを味わずにいれるだろう」


そんなのはわからない。


私は罪悪感と戸惑いとで心の中は善悪の渦になって私を襲っていた。


後悔しているとはいわないけでど。

後味の悪い。 

大きな宿題を渡された様な。

何か心の奥にズシッと重いそれはうちなる奥に澱んだ。


黒く。深く。 


まだ答えは見つからない。


エレーヌが私の肩を抱く。

お互いを慰めるように。

労わる様に。

私の友、永遠の変わり事のない。



**********************

   


海上から見える隆起する山々は緑豊かで、所々美しい街並みが見える。

この共和国の繁栄は上陸しなくてもわかる。


その進路の先に大きな港が見える。

今は点にしか見えないが人の姿だろう。

蟻のようにせわしなく動いている。


巨大がハシャルバート共和国は資源豊かな国で、概ね貿易で栄えている国だ。


元は王国だったが、愚君が続き国政に失敗し、貴族達がクーデターを起こした。

現在は貴族達が主に国政を担う貴族達の議会貴族院と国民の選挙で選ばれた議員達の議会民主議院の二院制で統治するエルディア大陸唯一の共和国だ。


隣国も貿易相手国という事で、内政干渉をせず共和国は永世中立国という独特の体制にも異をとなえる事をしなかった。


上陸後、入国検査を待つ宿泊施設で待機している。

部屋で五人でいた時だった。


この国の入国は極めて厳しい、体制が他にない国の為に外国人には特に諜報員を警戒して念入りに調査されるから。


「なんだって?!浮遊石を買う??」


カミーユが眼光を大きく開けていつもの冷静さはどこにいったのかと思うほど大きな声で驚いた。


私はニンマリとした、いやらしい笑みを口元に湛えて凄い考えでしょと言わんばかりに腕組をして答えた。


「えぇ。

 勿論ハシャルバートが浮遊石の売買には慎重。

 かなりの信頼関係がないと金だけでは動かないの

 はわかっているわ。

 それに大量に入手出来ないのものね。

 輸入額に似合わないと思っているのね。

 そうねまず大量にはまず取引出来ないでしょう。

 まず売らないわ。

 取引業者が乗る気でも浮遊石の売買には政府の許

 可がいるから。

 よくわかっているわ」


「ならどうして?」


カミーユが更に詰める。


「カミーユ。

 渡はつけてる。

 団長は少量の浮遊石を購入して、少量を分けて私

 達が購入した商品に取り付け販売する予定だ。

 つまり移動車両に取り付けただけで、安易に移動

 できれば?

 例えば川や湖、船じゃなくてそのまま渡れた

 ら?

 野菜や果物の苗や種や水やりを自由に出来る装置

 があれば?」 


ジョルジュが援護してくれている。


「えっ?」


「カミーユ。

 浮遊石単体の取引はできないわ。

 何せ軍事にも代用が可能だから、共和国は売らな

 いのよ。

 少量でも浮遊石は追跡調査出来る様に政府に管理

 されるわ。

 ようは少量でも利用可能な小型移動車両やなんな

 ら人に装着出来るスーツでもいいわ。

 少量だから高さは確保できない。

 でも需要はあるはずよ。

 販売後も売却先には政府が監視する事になるでし

 ょうけど。」


「なるほど。

 ちなみに誰のアイデアですか?」


「勿論団長だ」


ラインハルトが参ったと言わんばかりにぼそりと告げた。


カミーユは諦めたのか、口を閉ざしたまま瞳を閉じて決心したように言った。


「なるほど。

 一理あるね。」


「ヤッタ!カミーユありがとう」


私は隣のカミーユを抱きしめた。

しどろもどろするカミーユが可愛い。


「じゃあ。

 ジョルジュ予定通り。

 デュルア=ルファンツッア伯爵家を訪問しましょ」




***********************


 


シャルル・シャルル・オーギュスト・デュルア=ルファンツッア伯爵邸


大貴族ではないが、王国創立以前からの貴族で、今の当主は大統領にも信頼が高い。

加えて実業家としても名高く、オルファン帝国の大公家も出資している会社を持つ。

今飛ぶ鳥を落とす勢いのある名家の一つだ。

私達の浮遊石の売買にこの伯爵のコネは是非ともほしい。

商談のための訪問だった。


「遠路はるばるシャハルバード共和国まで。

 ようこそお越しいただいた。

 当主のシャルル・オーギュスト・デュアル=ルファンツッアです」


静かな、しかしその瞳の奥に底しれぬ深い闇が垣間見える油断出来ない男という印象。


「初めまして。

 クリスティナ商団を統括しています。

 クリスティナ・ヴァルディーです。」


伯爵は口元で含み笑いを浮かべ上目使いに話し始めた。


「航海は大変だったと聞いています。

 暴風雨と海賊との死闘と。

 私はせっかちなたちで、話は早めにつけたいたち

 だ。

 時は金なりというからね。

 率直に申し上げよう。

 君達が浮遊石を手にいれる可能性は極めて薄い。

 困難だろう。

 今共和国はそれどころではなくてね。

 悪いが商団の調査をさせてもらった。

 まずまずな経営だが。」


下調べは完璧のよう。

なかなか切れ者な伯爵のようだ。


「じゃあどうして?」


私は困惑する。

私達商人の評価は経営が全てじゃないの?


「あなたは誰です?」


シャルルの射抜くような鋭い刃のような瞳が私を睨みつけた。

刃なら私は殺されていただろう。

伯爵はまるで私の正体を知っているような投げかける言葉に私の唾を飲む音が静かな部屋に聞こえた。


「私はヴァルディー家の息女です」


私の心臓が大きく鼓動し、緊張が身体を支配し始める。


私が逝去した皇女クリスティーネ・ルナティアと知られたら政治的に利用される。

それだけは避けないと。


皮肉めいた苦笑を含んだ笑いを浮かべて何か話そうとした時。


コンッ!コンッ! コンッ!


唐突に応接室の扉からノックする音が聞こえた。


「失礼いたします。

 入って宜しいでしょうか?」


女性の声だ。

伯爵が答えた。


「ああ。」


伯爵が誰かわかったのか声の雰囲気が柔らかい。


扉が開いた。


美しい女性が入ってきた。


えっ?

フェレ人?

ひと目見てフェレ皇国の人民の特徴がわかる。

ふっくらとしたお腹が妊婦だとわかる。

衣装の質のよさと立ち居振る舞いから伯爵夫人であろうと思われた。


「だんな様 お客様の訪問中ごめんなさい。

 大統領閣下から至急のお手紙が」


さっきまでの高圧的な伯爵の態度が一転する。

優しく瞳の奥が柔らかな眼差しで夫人をみている。


白色小さな手から手渡された封書を手で破り中の手紙を開く。


顔色が瞬く間に蒼白になっている。


「急用が出来た。

 今日は帰ってくれ」


伯爵がぞんざい態度で言ったすぐ後、夫人の目が大きく驚いて見開いた。


「だんな様 そんな事をおっしゃらないでお客様ではありませんか。

 是非こちらに滞在くださいな。

 ねっ。

 だんな様 よろしいでしょ。

 ねぇ~」


やや下目使いに目を細めて懇願する姿は、私より年上だけど十分可愛らしい声と仕草だ。

優しい人柄であるのがわかる。


さきほどの毅然とした態度の伯爵はどこやら。

妻の猫が甘えているような態度にタジタジで汗すらかいている。


嫁には弱そうだ。


「私はこれから大統領邸にいかないと。

 客人に聞いてみなさい。

 皆さん申し訳ないが失礼するよ。

 また後日」


夫人のお腹を愛おしそうにさすった後、額にキスを落としてあたふたと部屋を出ていったかと思うと。


突然バタッ!


扉が再び開いた。

しかしただ扉が開いただけで私達の目線には誰もいないように見えた。

唐突に幼子の声がした。


「おかあしゃま。

 おとうしゃまがまたいにやい。

 よるにごほんをよんでくれりゅとおっしゃったの 

 に」


「おかあしゃま。

 おかあしゃまがよんで」


その声は小さな男女の子供の物。


やや目線を落とすと、三歳くらいの幼児が可愛く並んで立っていた。


どうやら双子らしい。

二人とも可愛らしく抱きしめたい衝動にかられるのを必死で留める。


「二人とも。いけませんよ。

 お客様のいるお部屋に勝手に入っては。

 ごあいさつは?」


夫人は膝をついて二人に諭すように優しく。

しかし毅然と大人と接するように愉した。


「こきけんよう…るであーぬ・であ・でるあ=るふあつあです」


「こきげんよう…あるばーと・であ・でるあ=るふあつあです」


女の子の雰囲気は夫人に似ていたが容姿は伯爵異似ている。

膝を折りながらワンピースの裾を抓んでお辞儀をする様子が可愛らしい。


男の子はその逆で容姿は夫人に雰囲気は伯爵に似ていた。

恥ずかしいのか夫人のスカートに隠れて顔を半分こちらに向けている。


二人ともとても可愛らしい。


「ごきげんよう。

 クリスティアしょうだんのクリスよ。

 よろしくね」


「二人ともお客様にいていただきたいわよね」


「おきゃくしゃま?

 はじめて…きゃっ…おきゃくしゃま」


「いて……」

「あそびましゅ」


これ断れないやつじゃん。


夫人は私の双子愛らしさに魅了された私に確信しながら言った。


「だんな様は悪い人ではないのです。

 口が悪くはっきり言ってしまうたちで。

 お気を悪くしないで。

 滞在していただけますか?

 心地よく過ごして頂けるようにお世話させていた

 だきます」


夫人はにっこりっと微笑んではいるけど、私達にも去るという行動の選択権は持たしてくれないのかわかった。


「お世話になります。

 でもあまり気をつかわないで」


私はスカートの裾を抓んでゆっくりと膝をついた。


「ありがとう」


夫人と双子の笑顔に満たされた。


私達は市内のホテルをキャンセルし伯爵邸のプレイベートハウスに滞在する事になった。


その時は滞在が長くなるとは思いもせずに。


ジョルジュの読みが外れた。

どこでどうなったのか?

でも絶対に契約してやる!

ひつこいんだから私!


この後浮遊石を求めて奮闘するクリスティア達。

しかしその過程で事件に巻き込まれて!!


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