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第四の障害 甘い果実と甘い罠 ⅩⅣ オルファン帝国編

無事にディアスを売る事に成功したクリスティア達。

いざ出国という時にオルファン帝国の皇室から謁見の要請が!

どうする?

皇女であるのがばれるのか?

緊張の一場面です。

スラム街の環境も住人の士気もあがり、ラディン卿から数名のアドバイザーが入ったので私達は出国する事にした。

その身支度をしていた時だった。


突然宿に帝室専用馬車の迎えがやってきて、ほぼ無理矢理全員が馬車に乗せられ今宮殿の謁見の間にいる。

謁見の間には配慮なのか最小限の宮廷人しかいない、

ほっと胸を撫で下ろす。


変装はなんとか瞳と髪の色を替える薬を飲めたのでギリギリセーフでも………。

オルファン帝国史上賢母と言われるお姉様。

いや皇后陛下に気づかれずに切り抜けられれるか!


オルファン式のお辞儀をするために頭を垂れスカートの裾を抓んだ時、ふいに上から声が聞こえてきて思わず頭を上げそうになった。


駄目駄目我慢よ!!


「お会いできて嬉しいよ」


優しく低い声が魅力的な皇帝陛下からの言葉はなんだか後ろめたくて胸を針で突かれたようにチクチクする。


「誠にこのオルファンに貢献してくださったその献身忘れはいたしませんわ」


初めてお会いするお姉様の皇后陛下の知的で澄んだ爽やかな風のような声は、懐かしさの中に私の中でわずかな痛みが生じた。


「まだ前皇帝の治世の影響が払拭出来ず、なかなか貧困層に手厚い政策が出来ていない。

 しかし君達の彼らが率先して環境改善に一役買っ

 てくれるなら、道筋が立てられそうだ。

 私達が加護しなくてはと思いすぎて、かえって悪化させてしまったようだ。

 彼らに雇用して彼らの手で新しい街創りをか。

 発想が素晴らしい。これからの改革に参考にさせてもらうよ」


皇帝陛下の声が弾んで満足されている。私も嬉しい。

彼らは自力で良い生活を送れるだろう。


光の中で、そしてあの街の噂が広がりいっせいに広がる波のように。

私はそれに期待している。


さあ今度は私の正念場だわ。

落ち着くのよ私!


口元を強く結んで息を吐きながら慎重に礼儀にのっとって答える。


「この度は恐れ多くもファレイデン帝国の一商人に

 謁見の機会を賜り誠に光栄に存じます。

 私クリスティア・ヴァレリー。

 このクリスティア商団の団長をいたしております。」


大丈夫そうよ。

クリスティーネ・ルナティアは死去して葬儀や墓もあるんだから!

宮殿について控えの間から謁見の間に通される青だ何度も言い聞かせる。

その部屋に着いてその時をむかえてもドキドキと胸の鼓動はおさまらない。


「クスッ。

 緊張しているかしら?

 クリスティアさん。

 私を訪ねて来た時はもっと勇敢で無鉄砲にみえましたよ」


その声は聞き覚えがあります。

そうフロレンティーヌ皇太子妃殿下。

クスクスと声が軽やかで楽しんでいるような声。


「君がクリスティアさんかい。

 フロレンティーヌからから聞いているよ。

 お会いできて嬉しい」


柔らかで穏やかな皇太子殿下の声は心地よい響きで緊張感の中で癒される。


「今日は皇后がどうしても一度会ってみたいと言ってね。

 本来は私達が気にかけて行わないといけないスラム街の環境改善に貢献してくれたことには本当に感謝

 しきれない。

 この恩を君達への褒美として贈るよ。

 君が団長であり続ける期間は君達のオルファン帝国内の利益には無税とする。


 又輸出入時には帝国民の命、健康を脅かさない場合を除き貿易手続きを免除とする。


 その他無条件の謁見願いを申し出る事が出来る権利を授ける」


これって本当?

今謁見中でなければ乱舞したいくらい嬉しいです。


「ありがたい限りでございます。

 ご温情に感謝申し上げます皇帝陛下。

 女神ディアのオルファン帝国の栄光と恩寵が続きますように

 皇帝陛下に御礼申し上げます」



「では正式な謁見は以上でだが。

 皇后と皇太子妃殿下が内々におしゃべりがしたいそうだ。

 ゆっくり皇后宮で過ごすといい。

 では私は失礼するよ」


「皇帝陛下に栄光あれ オルファン帝国に栄光あれ」


皆深く頭を下げて退席の見送りをする。


「ではクリスティアさん達。侍従に案内させますから後ほどね」

嬉しそうなお姉様が怖すぎます。


まじ???助けて!!




********************************************




皇后宮は正宮とは違い比較落ち着いた内装の造りだ。

ただどこもかしこも空いたまんまで、風通しは抜群にいいが。

風が吹くと部屋中に新鮮な空気が入れ替わり、外にいるような解放感がある。

フェレイデンの豪華さだけが取り柄で使いずらさと閉鎖的な雰囲気とは全然違う。


こういう所だったら出ていこうとは思わなかったんじゃないか?とすら思う。


私達は年若い侍従に連れられて皇后宮の中でも奥のプライベートエリアに案内された。

内装は勿論質の良い調度品や装飾をされてはいたものの、最小限でとどめられている。そのかわり温かみのあるいかにも生活しやすそうな工夫がなされていた。


低いテーブルにふわふわクッション私達はそれぞれのクッションのうえに座るとしばらくして給仕が現れて菓子や果物、お茶の器をテーブルに置き始めた。


異国のお菓子と食べた事のない果物。

そしてカップに注がれた甘いベリー系のドライフルーツの香りにナッツの香ばしさが香は間違いなく最高級品のアフェルキア茶だ。

私ですらめったに飲めないでいた紅茶を何気に出してくるあたりさすが帝国の皇室だけはある。


しばらくして普段着の皇后陛下、皇太子妃殿下と、幼い皇女殿下と皇太子妃の姫君が揃ってやってきた。

美貌のお二人が揃うと後光が差したかのように美しくまるで夜に輝く月と星のように感じる。



私達は立って礼をして、軽装に身を包んだ皇后陛下に座る様にと手で促さて着席した。


「お会いできて嬉しいわ。

 フロレンティーヌから聞いて。

 是非お会いしたかったのよ。

 そしてゆっくりお話ししたかったのよ」


美しいお顔に笑顔を浮かべられると更に輝きが増しておられます。

少しお母様にも似ていますし、威厳の高さはお父様譲りかもしれません。


ゆっくりと疑われない様に注意を払いながら会話を始める。


「そう言っていただけて幸栄でございます。

 皇后陛下におかれてはご健勝であられるようで喜ばしい限りでございます。」


まるで演劇の台詞のように自分でもわざとらしく思う言葉がスラスラ出る。


そんな私とは対照的に声の方向から沸き立つような明るい声が聞こえる。

皇女殿下と皇太子の長女殿下の二人の幼児。

つまり私の姪達だ。


「きゃ~きゃあ~~かわい~~きゃ」


「ふぁっ…ふぁ」


赤児は触られる度反応するように可愛らしい声で答えた。


「ぷるぷる…。ふにゃふにゃ~~きゃ!きゃ!」


姫君は触るたびに感触を口にしてきゃらきやら笑っている。


侍女達に囲まれてベビーベットに寝かされているまだ幼い皇女殿下とその子を珍しそうに眺める愛らしい姫君は宝物のように大切にされているのがわかる。


皇女は生まれたばかりの姪の皇太子妃殿下の姫君の頬を撫でたり、指でつついたりして笑い声を放っている。


「ごめんなさいね。

 騒がしくて。

 あの子の下に小さな子がいなくて。

 赤ちゃんが珍しくて。

 困った皇女殿下ですわ」


お姉様全然困った感じには思えないお顔ですよ。

可愛らしい皇女達の日常です。

ほんわかします。

今この時は癒しです。


「無事に女神ディアの祝福の果実ディアスを高値で落札されたと聞いています。

 まずはめでたい。

 見事な駆け引きと聞いています。

 まだお若いのに本当に立派です。

 フェレイデンの誇りですわ」


「そう言っていただけるのは嬉しいですが、これもラディン卿と亡きシャルロッテ・ディア・クレメンツ修道院長様、そして仲間ののおかげです」


「えっ?」


お姉様の顔色が突然変わる。

面識はないはず。

六人目の皇后がその地位にいらした時はお姉様はフェレイデンだし。

オルファンに来た時に会っているとは思えなかった。


お姉様の表情が曇る。

それは懐かしさと後悔と痛みとが混ざり合った。なんとも言えない表情で静かに語り始める。


「大変思慮深く、思いやりにあふれ、我がことのように他者を労われる方でした。

 一度だけお会いして、助けていただきました。

 私のこのこの幸せはあの方なくしては実現しなか

 った。

 皇太子妃もあの感染症の時に助けてくれました。

 本当に大切な方を失いました。 

 今でも思い出しただけで涙が溢れてしまいます」  


その瞳に涙が浮かんでいるように見える。


「ラディン卿の栽培に懸ける思い、シャルロッテ様の神話の物語の製作、そして仲間の、スラム街の住人の誰をかけても成し遂げる事は出来なかったでしょう。

 全ての方に感謝して、その恩寵を受ける事が出来るようにしたい」

私の正直な気持ち。これは胸を張っていえる。


少しづつでも皇室を離れて皇族の役割がわかったかもしれない。


お姉様は柔らかな微笑みを私に向けて頬を撫でた。


「あなたの幸せを願っています永遠に。

 このオルファンで。


 そうそう。

 ラインハルト・ディア・オーヴェル卿は久しぶりね」


「えっ?卿?」

「えぇ?」

「え~~~卿?」


そこにいた私とカミーユ、マルグリットが驚きの声を上げてしまった。


皆ラインハルトの顔を固まったまま凝視見ている。


ラインハルトは何で言うのですか、と言わんばかりにばつの悪そうな表情で髪をかき上げる。


「皇后陛下…あぁ~」


「もしかして?

 言ってはいけませんでしたの?

 オーヴェル卿?」


「あっ…いえ。

 ご無沙汰いたしております。

 エリザベート皇女殿下であられた頃からお変わりなく。

 いえ一層威厳がおありで、皇后陛下にお仕えいたした事は誉でございました。」


「まぁ~まだ幼い私の侍従候補でしたものね。

 あの頃が懐かしいわ。

 遊んではいたずらしてお母様に叱られてばかりで、ラインハルトはいつもお母様のお小言を聞いていましたね。」


「どういう関係?

 ていうかラインハルト?

 貴族だったの?」


「あぁ~~えっと…。

 私はオーヴェル侯爵家の長男で……。

 皇室に幼い頃、宮殿に侍従候補として上がっており皇后陛下のお傍におりました。」


「え~~~~!」


「私はラトゥワール伯爵家の執事の息子とばかり!!

 エレーヌ?」


「ごめん。

 私実は知ってた。

 本来成人していないと宮殿へは出仕出来ないけど。

 うちは伯爵家の中でも古い家系で、しかも女性は私しかいなかったので成人前に宮殿を訪れる事も多か

 ったの。

 そんな中で時折見かける冷めた目の貴族の男性がいて、それがラインハルトだったのね。

 執事から紹介を受けた時は驚いたわ。

 だって執事の息子って?

 侯爵家の令息でしょ?

 まぁ知らないふりしたほうがいいと思ったから黙

 っていたの。

 ごめんね~~ クリスティア」


「ひっど~~~~!」


ここがオルファン帝国の宮廷であるのをすっかり忘れていました。


「ラインハルト!!

 後で話があるわ!!」


皇后陛下の戸惑いの顔の中に少しの疑問と推測が頭の中を駆け巡っている事など私はこの時知らなかった。


この後航海で出会った海賊の話、シャハルバード共和国の取引の話、人々との出会いといままでも物語を語り、皇后陛下と皇太子妃殿下は興味深く、熱心な様子で何度も頭を頷かせながらお聞きになられていた。


あっという間に時間は過ぎるふっと気付いた時には夕暮れ時になっていた。


「そろそろお引止めしても申し訳ないですわね。

 次にオルファンを訪ねる時にはこちらに寄ってくださいな。

 餞に明日宮殿から贈物を届けさせましょう。

 ありがとうクリスティア商団。

 これからの活躍をここオルファンで願っています」


「ありがとうございました皇后陛下」


深々お辞儀をして敬意を現わして部屋を出ようとした時。


「あぁ……」


皇后陛下が何かを言おうとしたのを途中で止める。


私はお姉様の顔をまじまじと見ると何かを確信したいような疑問が見え隠れ複雑な表情をしているのがわかる。

一瞬私の顔は氷ついた。もしかしたらそんな言葉がよぎる。


お姉様は言うか言わないでおくか悩んだ様子をすぐに消え去り、息を深く吐いて言った。


「お元気で。皆様の幸せを本当に願っております。」


そう言って太陽の様な輝く笑みを皇太子妃殿下ともに贈ってくれた。



私達は皇后宮の中庭の馬車に乗り込む。

初めてお会いするお姉様は肖像画で見た姿以上に美しく又聡明で私の手本にしたかったとよくお母様がおっしゃっていたのを思い出していた。


宮殿の大きな窓の傍でお姉様と姪の皇太子妃殿下が私達の出立を見送っているとも知らずに。



「皇后様

 何か思う所がございましたか?

 随分心にお止めになっておられるように感じましたが」


「あぁ…。あなたには隠せないわね。

 なんだか幼い頃にお母様から送ってきた末の妹の

 雰囲気がとてもクリスティアさんが似ていた気がするの。

 可笑しいわね。

 あの子は一年前に事故で亡くなっているのに。

 お母様はね。皇太子が生まれた時に妃にクリスティーネ・ルナティアをと考えて肖像画を贈ってきたの

 だけど。

 私は絶対アレキサンドラの娘のあなたを皇太子妃として嫁いでほしかったから。

 お母様にどうしてもといって貴方を皇太子妃としてと使命したのよ。

 あの女将軍の行動力と統率力が必ず遺伝しているはずとね。

 何だか変な感覚だったわ。

 まるであの肖像画の妹が成長してそこにいるような」


「そうですか。

 堂々としてしっかりされておられるのはお祖母様に繋がる所はございますが。」


「フロレンティーナはあった事はない?

 クリスティーネ・ルナティアと」


「幼い頃たまに遊んだようですが。

 就学した後は交流はありませんでしたので。

 正直覚えておりません」


「そう」


まだふに落ちない表情を崩していない。

ハラハラドキドキでなんとかオルファン帝国を出国する事が出来そうです。


次回はエメラディーヌ商団が被った損害とエメラディーヌ・ディア・リュージェとリュドヴィック・ディア・オーヴェルとインハルト・ディア・オーヴェル、ファイサル・ディア・アルテナの関係が明らかに。


今回は残忍皇帝は十人目の皇后に敵国の皇女を娶る

の作品のキャラ炸裂です。

どうぞそちらもご愛読くださいませ。

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