表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/91

剛腕凄腕女商団長 クリスティアの誕生

フェレイデン帝国の末っ子皇女クリスティーネ・ルナティア。

最新商船の進水式で何者かに襲われ爆死した。


その後のここはとある海の上の物語が今始まる。




「んん〜………」


重だるい身体………意識の中で……それは上下に揺れてふわふわする何かの上で浮いているような。

背中に柔らかな感触を感じる。


微睡(まどろ)んだ先に瞼がゆっくりと開くと、ようやくと開いた瞳に霞がかったようなダークブラウンに所々グリーンの色やワインレッドやコバルトブルー、ブラックの模様がスポットライとのように光っている。


段々はっきりする意識。


横になっていた身体を仰向けにして、天井には天体の模型を金彩で描かれているのが見えた。

息を思いっきり吐く。


「ふっ~~」


どのくらい眠りについていたのか?


ふわふわのベットが寝心地の良さを実感している。

柔らかい絹のベットシーツは少し乱れ、寝台の周りは薄いベールのカーテンで覆いつくしている。


身体を起こしベットの上で膝をつく。


「ふわわ~~~~ん」


大きく背伸びをしてみる。


寝台のベールの中からでもわかる丸い小さないくつもの窓から、太陽の日差しが差し込む開放的な朝はいつもと違う。


「あぁ〜ずいぶん寝ていたのね」


さっきから可笑しい違和感それは不規則に上下に部屋が揺れているからだ。 


その時にはっ!!と瞳に力が宿る。


そうよ!そうよここは!


そう!ここは!!


寝間着のまま寝台を飛び起きて、椅子に掛けていたショールをすばやく羽織り部屋を出る。

身体を斜めにしないと通れない細い細い長い廊下を駆け出す。


タッタ………タッタッ……タッタ………タッタッ……。


逸る気持ちと同じくらい軽快な足音が跳ねる細い廊下に響く。

  

そしてその先目の前に木製の扉のドアノブを手前に強く引く。


期待と時めきと興奮とで急ぐ気持ちがざわつく瞬間に、肌をまとわりつくような湿気の中に感じる潮風が私に迫ってくる。


心臓が爆発しそうな興奮が。

これからの期待が………希望が………。

間違いなくそこにあった!


私に太陽が降り注ぎ祝福を与えられたその瞬間がやっと訪れる。


「クリスティア団長 寝坊助が過ぎる」


甲板に出てきた私に浴びた一言を放った人物。


長身で浅黒い筋肉質な身体に、ダークブラウンの長い髪を後ろで束ねている。

挑発的な黒曜石の瞳は高潔な魂を忍ばせているようにみえる。


「ラインハルトわるいわね。

 ついつい。

 気持ちよくって寝ちゃて。

 航海は順調?」


挿絵(By みてみん)

ラインハルトは右手を船の進行方向にある地平線を指さした。


sの指先の先の空は真っ青で雲一つない。


海はコバルトとアイビーの色の染料を流した様に鮮やかに上下に動きながら広がっている。


海か空かわからないほどの境界線が私の瞳を釘付けにする。

こんな風景は生まれてこのかた一度も見た事がない。


「美しいわ~~私のあんなに夢見た。

 焦がれた景色よ。

 さいこ~~う!!」


弾む心とこれからの期待感が自分を包みこんで至福の瞬間だった。


「この通りさ。

 もう外洋に出てだいぶ経つからな。

 あと三日で目的地に着くよ。

 ところでうまく偽装出来たみたいだな」


嫌味っぽい口調の中に僅かだが、同情したような表情で告げる。


私は顎を上げ得意げに腰に手を当てて、胸をはってラインハルトの問に答えた。


「当然でしょ。

 たっ~~かいお金払って調達した発光体物質よ。

 まだ世界に出ていない代物よ!

 爆発せずにピンポイントで撹乱させる発光体。

 見た目には爆破物がほおりこまれたように見えるからね。

 それと以前から全フェレイデン中で私と似た死期

 の近い人物の捜索とその女性の死亡と決行日の時期。

 ドンピシャだったわ」


得意になって言葉が踊る!


ラインハルトは肩で息して呆れ返た顔を隠さない。


「両陛下に同情するよ。

 死体にすり替えて自分は脱走するなんて。

 親不孝にも程がある」


いちいち心を抉る(えぐる)言い方をする!


「わかってるわよ。

 そんな事。

 そのうちに便りを送るわよ。

 だって姉様達みたいにあと数年で好きでもない相手と結婚させられちゃうわ。

 まっぴらごめん。

 私の人生は私が決めるの」


私クリスティーネ・ルナティアの兄姉は多かった。

私には下に弟が一人いるだけで、私は末娘だからお父様に溺愛されて育った。


一番上のお姉様は生まれる前にお嫁入りしてしまっていたし。

他の姉様方も年頃になるとそれなりの結婚先に嫁いでいった。


私は幼い時からお母様とお父様が戦ったお話や童話の冒険話を聞くのが超大好きだった。


何も知らないまま、したい事をしないまま。

王家にお嫁に行くなんて論外よ。


結婚なんて狭い世界は絶対に性に合わないから冒険がしたい!

その望みだけで少女の頃に人材をスカウトして貿易の商団に投資してきた。


ラインハルトは商団を実質運営をしている有能な人材、頼れるうちの副団長だ。


そんなウキウキした私に諦めにも似た半笑いの顔をして言った。


「あんたみたいな娘を持たなくて幸いだな。

 両陛下がおかわいそうでたまらないよ」


「はい。はい。

 どうとでも言ってください」


そうあの死亡事件か。事故か。


皇室がどう調査結果を出したかは即出国したので知る由もない。

偽装工作は私の仕業。


前もってフェレイデン中の問題を抱えている家族を持ち、死期の近い私に似た人を捜索させた。


家族と交渉当然デリケートな内容なので、そこはまずは信頼関係を構築してから進めた。

そうこうしているうちに準備が全て整い、あとは決行日だけだった。


私が興味あるイベントを公開される行事は?


丁度我が国最大の貿易業者の所有する最大帆船の水進式が開催する。

そこには皇族の出席が予定されていた。

当初は皇后陛下つまりお母様だった。


これだと思ったの。


だって私の帆船で出国する予定だったから港だというのも利点だった。

当日皆が注目するスピーチ直前に発光体を発射させ遺体を置いて去った後は大惨事になったってわけ。


「クリスティア団長〜」


後ろで私を呼ぶ声がする。


声の主に心当たりがあった。

振り返りその声の主に手を大きく振りながら答えた。


「エレーヌ!」


同じ年の私の親友、私の慰め、そして参謀が猛ダッシュで近づいてくる。


ふっくらとした健康的な身体つきに今日の明るい空の様な色の瞳と、柔らかなライトブラウンの長い髪をアップに結いあげている。

たれ目の目元は可愛らしい。

ぱっと見た印象は冷たいが、よく見るとコロコロ変わる表情は愛嬌がある。

その後ろ髪がぴょんぴょん跳ねている。

嬉しいのが全身でわかる。


超可愛いと思ったら身体から体当たりして、私を力いっぱい抱きしめた。


エレーヌの熱い物が伝染する。

海の上の再会は各別だった。


「もう~~。

 死んだんじゃないかと思うくらい。

 寝てるから!!

 ねえ進水式の私の計画と準備、決行完璧だったでしょう!!」


「うん!

 完璧だったよ」


エレーヌを抱きしめる。


「でしょう!

 射程距離も狙いもピンポイントで当たったわ。

 あれ本人にも周りにもダメージなしだから。

 光の中で遺体と替わったタイミングも完璧」


エレーヌとラインハルトは私が内緒で皇女の皇室専用経費からプールしておいたお金で、小さな貿易商を始めた時からの片腕だ。


頭が切れて、回転が速くて公私共にささえてくれる親友。

エレーヌは本名がセレンエレーヌ・ディア・ラトゥワールといって実は伯爵令嬢だ。


ただ妾の娘で伯爵が本妻に娘がいないので、将来良縁の正妻となるように本妻の養女として本宅に引き取った過去がある。


いろいろ家族問題を抱えていたわけ。


丁度そんな時に同じ年の中で学友に選ばれたエレーヌと、すぐに仲良くなってこの計画を始めるにあたって最初に誘った人物でした。


「はぁ〜。

 これから花嫁修業を強要されなくなりと思うだけ

 でほっとする。

 お父様の説教は陰湿だったし。

 お義母様は私には

「貴族としての教養を。伯爵家の恥にならないよう」

 しか言わない以外は私には無関心。

 そうよね。義理のしかも妾の子なんだから。

 お義兄様はいつも私を軽蔑した眼差しで見るだけ。

 あたしだって好きで生まれて。

 本宅に来たくて来た訳じゃないわ。

 もう沢山」


エレーヌの見たことないくらいの太陽のような眩しい笑顔が、今回の計画の成功を実感する。


子供の頃から遊んでいてもどことなく、心ここにあらずと思う事も、しばしばでエレーヌも心からの笑顔を見た記憶が少ない。


そりゃそうだ本宅で肩身の狭い生活を強いられたのだから。


エレーヌのせいじゃない。

勝手な伯爵の判断だし。

幼い頃からの精神的ネグレクトとバラバラの家族の中で、ひっそりと切なくて殻に閉じこもり成人になるのをひたすな願って過ごしていたのだから。 


あ~~決行してよかったと心の底から思う。


なんだかいい事したみたい。


「お嬢様方は。

 お気楽だな」


ラインハルトが吐き捨てるように言い私達をしかめっ面で睨んでいる。


「クリスティア団長!

 報告あるから会議室に集まって!!」


そんな時私を呼ぶ男性の声が船内から聞こえた。








クリスティア団長と商団の幹部達との初会議が始まる。

個性豊かな団員達と航海ならではの試練がこの後襲う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ