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突然の大統領からのプロポーズⅡ シャハルバード共和国

シャハルバート共和国の大統領だったオーギュストに突然のプロポーズを受けるクリスティア。

しかもそれが浮遊石の販売許可条件だという。

どうする?

衝撃的なプロポーズの後、私と大統領を残して皆は各自警護兵を伴い、用意された部屋にそれぞれ散っていった。


大統領は私に満面の笑顔を向けて私の座る椅子の隣に腰をかけた。


その顔つきは極めて紳士的で穏やかだ。

この年齢で大統領に当選するほどの柔軟性とおそらくはあの計画を行うほどの行動力があり、指導者としては優秀だろう。


しかし結婚相手となると話は別。


そもそも結婚なんて絶対につまらない人生だと、フェレイデンをとびだしたんだし!


でも……浮遊石は欲しいし………。


どうしたらいいんだろう?

どうしよ〜ん!

誰か?誰か教えて!


「今浮遊石は欲しいけど。

 結婚はちょっとと思ってる?」


ほおづえをついて、顔を近づけていやらしいまでの皮肉っぽい笑顔を浮かべ、まじまじと私の顔を見ている。


え??そんなに透視出来るんですか?


どうやら私の言葉に出してはいないけど、顔がそう言ってるようだったみたい。


ドギマギしている私の顔を見て大統領は噴き出している。


「えっ!!

 ごめんね。あんまり可愛らしくて。意地悪したくなってね。

 実はね。今私の敵対勢力が違法に詐取して、浮遊石を闇取引ににしていてね。

 あの爆破事件で敵の動きを捕らえて密輸の証拠を揚げたんだが。

 一つ問題が出てね。

 その敵対勢力の最大元老の孫娘と強制結婚されそうなんだ。

 実は前王国体勢から悪しき慣習があってね。

 婚姻関係にある血縁者は逮捕出来ないというとんでもないものでね。

 これを法律で撤廃させようとしているんだが。

 抵抗が激しくてね。

 早急に私のフィアンセが必要になってね。


 ただ国内の場合は本当にしないといけないから。

 君が最適だと思うんだ。

 勿論本当に結婚してほしいというわけではない。

 フィアンセになってくれればいい。

 あともう少しで逮捕が出来るから。

 その間フィアンセ役をお願いしたい。

 逮捕出来ればちゃんと浮遊石の売買許可をだそ

 う。

 大統領として経営者として約束しよう」

 

「本当ですか?

 私の身の安全は?

 大丈夫ですか?」


「ん~~たぶんね。

 でも君かなり出来るでしょう武術。

 ちゃんと精鋭部隊を護衛にする」


「ぁ~~これ断れないやつⅡ」



「じゃあ!

 決まりだね。

 さっそく今夜披露パーティーだ。

 用意は万端だ」


「え!!」


パチン


指を鳴らすと、隣の部屋からメイドが六人無表情でぞろぞろと入ってきた。


「皆、後は頼んだよ」


激震が身体中駆け巡る。


いきなりってなに?


しかも同意しなかったらどうするつもりだったの?

嘘でしょ!!


待って!


***********************************************



黄昏時大統領府の官邸。

丁度死角になっていた静かな裏庭で二つの人影が見え隠れする。


炎の様に赤黄色い太陽の日差しがその人物を照らす。

ジョルジュだ。

真剣な表情から事の重要性がわかる。


まるで信じられないと言わんばかりの驚きと当時に嬉しさと悲しみでその人を見ている。


言葉はなかなか出てこない。


そのかわりに何とか離すまいとその腕を強く掴んで離さない。


その女性は完全に顔を合わせまいと頭を斜め下に向けてジョルジュを見ない。


「ちょ……。なんなの?」


ジョルジュの手を払いのけようとするが激しく抵抗され腕は一ミリも動かない。


ジョルジュは自分を見ようとしない女性の顔をじっと見つめて動かない。


「何故だ?

 何故あの時に…」


ジョルジュの顔が雷に撃たれたような衝撃を受けたのか。


おもわず掴んだ手の力が抜けた。

つかさず女性が手を払いのけ、その反動でジョルジュの頬を平手打ちする。


パチッ!!

空に鈍い破裂音。


ジョルジュは赤く腫れた頬を手で覆う。


「ひつこいわ!」


そう大統領の補佐官のゾフィー・ディア・アシュランだった。


「あの時に二人で邸を身分を、全てを捨てて逃げようと約束した.。

 何故あの時あの時…」


そう二人は恋人同士だった。

幼馴染でよく戯れて遊んだ。


幼い頃は兄妹の様に思っていた。

しかし年頃になり、ジョルジュが寄宿舎の貴族学校に入ってからは会う事もなくなった。

そんな時に帰省していたジョルジュとたまたま首都で出会った。


鮮麗された物腰と知的な男性に成長したジョルジュと一方清楚で優しく嫋やかなゾフィーが恋仲になるのに時間はかからなかった。


将来を約束するようになると、その関係が侯爵の耳に入り二人の仲を引き裂いたのだ。


ゾフィーは無言で顔を背けたっきり、悪びれもせずに、氷の様な冷たい視線を敢えてジョルジュに向けず呆れたように息を吐いた。


「二十歳の小娘にどうできたというの?

 あなたの父親は金に物をいわせて父の事業を妨害して、実家は傾きまだ幼い妹や弟を育てるには私

 があなたと別れるしかなかったわ。

 でないと妹や弟は路頭に迷うしかなかった。

 没落貴族の成れの果ては決まっている。

 よくて召使、悪くて娼婦よ。

 妹にそんな目を合わせれると思う?

 出来なかったわ。

 出来る訳ないわ。

 それでなくても私の家は下級貴族で辛うじて商売で生計をギリギリ立てていた。

 帝国の侯爵様の手にかかれば造作もないわ。

 どうしたらよかったの?

 あの時。

 侯爵家からの手切れ金を貰い、地方で慎ましく暮らす以外に。

 どうしたらよかったの?

 何をすればよかったの?」


悲痛な叫び声は涙にまみれ、当時の屈辱と惨めさを思い出させる。

嫌いでわかれた訳じゃない。

愛していた。

家族を巻き込まれたらどうしようもなかった。


もはや誰に聞かれても構わないくらいの全身で訴えかけた。


まだ若い頃なら綺麗ごとで黙っていたかもしれない。

でも無情にも時は経過して自分もいろんな泥に埋もれてしまった。

もう過去の事が一気に思いの全てを言葉でジョルジュに投げたのだった。


「す………まない 」


ジョルジュの情けなく、瞳は濁り力なく身体はだらりと投げ出さんばかりに項垂れている。


「もう過去の話………。

 もう…今はどうする事も出来ないわ。………

 だからほっといて。

 揺さぶらないっで!!」


静かに言ったその言葉には後悔も、悔しさも、失望、あらゆる負の感情はそこには何もなかった。

ただ事実だけをを並べたにすぎないと思った。

ほっといてほしかつまた。


「……知らなかった……すまなかった。…

 愚かだったんだ。

 でも…相談はしてほしかった」


掠れる様な、絞り出すような声が低くその空間に響く。



「もう……もういいわ。…もういいの」


ジョルジュはそう否定するゾフィーの手を再び荒く取り、今度は両手でゾフィーの頬を包み込んで真剣な眼差しで見つめた。


悲壮感ただようその表情に思わず、瞳を唇をその顔をじっと見つめてしまった。


最後の日からきちんと見たのはこれが始めただった。


ジョルジュの手は震えている。


そして少しだけ口が空気を吸う。


「あの子はどうしている?」


ゾフィーはハッとしてジョルジュの瞳に映る自分が明らかに瞳が左右に揺れて動揺しているのがわかる。


「何故?あの子の………」


ジョルジュは再び大きく息を吸い吐きだす様に言った。


「レオポルドは僕の子供だね。

 もう調べた。

 僕は元々侯爵家の非嫡出子だった。

 父は確かに僕に爵位を継がせたかったが、君がいなくなっても僕は爵位後継を拒み続けたんだ。

 仕方なく非嫡出子の異母弟に亡くなる少し前に譲った。

 父は逝去する時全てを僕に告げて懺悔した。

 君に詫びてくれと言っていた。

 結局どちらでもお前には継がせられなかったと。

 好きな者同士一緒にすればよかったとね。

 本当に勝手だな。


 僕がクリスティア商団に入ったのは君を探すためだ。

 伯爵家の執事の息子と偽って君を探すのにうってつけの仕事だと思ったからだ」


ゾフィーは信じられないと目を大きく見開き、口元は小刻みに震えていた。


「私の子………。私の子が…レオポルドが!

 わぁぁ~~~~」



両手をこめかみに当てて明らかに困惑して身体は土に項垂れてワナワナと泣き崩れた。


「ゾフィー。全てを話すんだ。

 きっと君の役にたつから。

 最後に一度だけ僕を信じてほしい。

 本当に愛しているから」


その言葉に嘘や誇張は感じられずにゾフィーはその膝に顔を埋めて号泣し始めた。


その哀れな姿にジョルジュは自分の不甲斐なさに自問自答した。


どちらにしても僕は二人を不幸にしただろう。

今からでも償いは間に合うだろうか。

いや間に合わせると、固く心に誓った。



***********************


メイド達に拉致された私。


無常にも力なく私は回収され、浴室で隅から隅まで丹念に磨かれメイドのされるままに。


化粧をほどこされ、コルセットで上半身を絞めつけられた後はまるで着せ替え人形になった気分だ。


宴会場の二段高くなった螺旋階段の二階部分の入り口に引きずられるように連れてこられた。


まるで罪人になって気分だ。

強引で有無を言わせないメイド達普段だと大抵抗だが、何せ浮遊石がらみです。

人生初めての我慢を体験した。


「はあぁ~」


そうため息をついた時、後方から大きな人影が立つ。


「しばらくの我慢ですよ。

 お姫様」


大統領だ。


さすがに正装して端正な顔立ちは思わずはっとしてしまう。


薄いシルバーグレーの正装は品が良くまさに一国の主に相応しい。

その上にこのルックスだ。

それはそれは注目の人になってしまうだろう。


面倒だが。我慢だ。


「ええ。我慢します。

 だから大統領お願いしますね。

 ()()()



「了解です。さあ行きますよ。

 笑顔で」


大統領にエスコートされながら二階のエントランスへの階段を降りていく。


流石に共和国の貴族達や議員達がごったがいしている。


急な呼び出しではなかった。つまり全ては計画されていただろうというレベルの宴会だ。


完全にやられた。

舞台に上がるつもりはないのに。

事前に演出されたただ舞台に乗せられたのだ。

やられた!


しかし仮にも私は帝国の皇女です。

こういう社交の場のレクチャーは受けてます。

みっちり朝飯前。


足元に気をつけながら、優雅に階段を降りる。決してつまずいてはいけない。

つまずかなくても優雅に歩かないといけない。

これは頭でするものではなく、皇女であるなら日常的な所作。


「お姫様。本物のお姫様だな」


いちいちいう台詞が意味深でドギマギしてしまう。


バレたのではないか?

知っているのか?私の正体?


この私の動揺を知ってか知らずか?大統領は優雅な微笑みを湛え皆に会釈している。

小声で招待客の会話がうっすら聞こえる。


「まぁ見事な所作なんでしょう」


「あの紺色のベロアに金銀の刺繍にレースの素晴ら

 しさ。お若いようだけど。

 落ち着いた方ね。」


「装飾品も真珠。しかもかなり上質ですわね。

 初々しさがよい印象では?」


「立ち居振る舞いが美しい」


「外国の方ね。

 噂では旅先で大統領と出逢って運命の恋に落ちたとか。

 あの冷静で緻密な思慮深い方が。

 なんて素敵なんでしょ」


皆様の会話聞こえてますよ。

気恥ずかしい。

よくまあ。そんなでっちあげ話を作ったものだ。

ちらりと彼に目線を移すと、爽やかな汚れのない微笑が返ってくる。


本当恥ずかしいから止めてほしい。

思わず真っ赤になった顔を見られたくなくて、そっぽを向いて招待客に笑顔を振りまいた。



ホールの一番奥に立ち、給仕が私達の手に葡萄酒の入ったグラスを渡す。



皆グラスを掲げ、大統領の言葉を待つ。


「今日は私の個人的な祝いに来てくれてありがとう。

 今夜を楽しんでください。

 乾杯~

 シャハルバート共和国永遠に」


「大統領おめでとうござます。

 シャハルバート共和国に栄光あれ」


「大統領おめでとうござます。

 シャハルバート共和国に栄光あれ」


「大統領おめでとうござます。

 シャハルバート共和国に栄光あれ」


「大統領おめでとうござます。

 シャハルバート共和国に栄光あれ」


口々に祝いの言葉が響き渡る。


音楽隊が舞踏用の音楽を奏で始めた。



「ではお姫様。

 一曲お相手を」

大統領がにっこりと微笑んで、私の手をとってホールの中央に誘う。

すべての視線が私達二人に注がれる。




 


大統領との婚約、ジョルジュとゾフィーの恋

しかしクリスティアの旅はまだまだ続きます。


応援していただければ励みになります。

いいねやBM、感想、誤字報告などいただければ嬉しいです。


これからも宜しくお願いいたします。

次回陸路キャラバンでオルファンを目指しライバル登場です。

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