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【2-1.テレポート失敗】

第二章です!

ここから新規エピソードとなります。

どうぞよろしくお願いいたします


★第2章イラスト★

【ウバクロネ様】から本作へ素晴らしいイラストを賜っております!<https://37616.mitemin.net/i971735/>

【ウバクロネ様のマイページはこちら】<https://mypage.syosetu.com/1733287/>

【ウバクロネ様のみてみんページはこちら】<https://37616.mitemin.net/>


 ポルスキーさんは困り果てていた。テレポートに失敗して見知らぬ土地に来てしまったからだ。

「おかしい……! 家から魔法協会に行くだけのはずだったのに……。方向音痴すぎてここがどこか全く分からない!」


 なんだか連なった背の高い山々が360度、永遠と眺められる場所である。足元は背の低い黄緑の草本がうっすらと生え木もまばらなので、どうやら標高が高そうだ。どこかの山岳地帯に来てしまったと思われる。

 風の音だけ聞こえてくる。こんなところに、人はいるのだろうか。

 でもまあ、足元には人に踏まれたような跡があるので、ポルスキーさんは一先(ひとま)ず道っぽい道を辿(たど)って斜面を下ってみた。

 そして、雪解け水を集めたささやかな小川を横切ったところで、10戸ほどの集落が見えた。


「あっ! 家だ。助かった」

 ポルスキーさんはだいぶほっとして人家(じんか)の方へ足を向けた。


「あのーすみませーん」

 人家の戸を叩きながらポルスキーさんが問いかけると、家の中から出てきた人は少し驚いた顔をした。

「どちら様ですか」

「あの、しがない魔女ですけど、ポンコツでして、テレポートに失敗して迷ってしまいました。ここはどこですか?」

 ポルスキーさんは悪びれず、慣れた口調で聞いた。


 すると、その男性は可笑(おか)しそうにぷっと笑った。

「テレポートなんて失敗しますか?」


 ポルスキーさんは嫌そうな顔をした。

「はあ。ずいぶんとまあ上から口調ですね。けっこう失敗しますよ、悪かったわね」

 ポルスキーさんがムッとして答えると、男性は余計に可笑(おか)しそうな顔をした。


 そのとき、ポルスキーさんは男性の人差し指に見慣れたタトゥーを見つけた。

「あら、あなたも魔法使い?」

 この世界の魔法使いの中には、発する魔法の威力を上げるために、指にそれ用の魔法のマークをタトゥーとして入れる者が一定数いた。その男性はローブを着ておらず、ごく普通の農夫の恰好をしていたが、このタトゥーを入れているということは魔法を使える者ということである。


 しかも、このタトゥーはそもそも魔法の腕が良くない者が入れるとダサい(※「タトゥーを入れてその程度かよ」とバカにされる)と思われている。つまり、この男性がタトゥーを入れているということは魔法の腕前はそこそこあるということになる。


 よくよくその男性を眺めれば、背が高くて見事な金髪巻き毛を耳まで垂らした、まあ見るべき風貌の持ち主ではある。

 ポルスキーさんは有能な同業者の前で少し決まりが悪くなった。


 そんなポルスキーさんの表情を見て、その男性は微笑んだ。

「ええ、魔法使えます。まさかこんな山間の(ひな)びた土地で同業者に出会うとは思いませんでしたよ」


 ポルスキーさんはその男性の口調に人を揶揄(からか)っているときのニュアンスを感じ、ムッとして、

「ひどい(おっしゃ)りようね。もう失礼します。ここがどこかはお隣の家の方に教えてもらうので結構よ」

(みずか)ら戸をバタンと閉めてやった。


 そのままの勢いで隣家を訪ねると、隣人はとても素直そうな一般人で、ポルスキーさんの失敗を笑うことなく、むしろ「テレポートなんてすごいですね」などと感心してくれて、そして、ここが国内最高峰のグレートモス山脈の裾野に位置する村の一つだと教えてくれた。


 グレートモス山脈! 一応国内じゃん、よかった!


 そこでポルスキーさんは魔法協会との位置関係をイメージしやすいように地図を見せてもらえないかと頼んでみた。

 しかし、その一般人夫婦は「そんな高尚な物、お隣さんくらいしか持ってないんじゃないか」という。


 お隣さん……さっきの魔法使いか……。ポルスキーさんはまたもやイヤな顔をした。

 地図無しでダメ元で再テレポートしてみようかと思った。グレートモス山脈って情報だけで何とかならないかしら。


 しかし、正直、ポルスキーさんには北も南も分からない。家と魔法協会の間だけでも失敗するポルスキーさんには無謀すぎる試みと思えた。


 ポルスキーさんは、魔法協会に用事があったことを思い出した。正直なところ、テレポートに再度失敗して無駄な時間を費やすのはあほらしい。そこでポルスキーさんは、(しゃく)に思いながらも隣人の魔法使いをもう一度訪ねることにした。


 再度の訪問を受けた魔法使いの男性は面白そうに笑っている。

「あ、また来た」

「笑ってるんじゃないわよ」

 ポルスキーさんの方は苦虫をかみつぶしたような顔だ。


 その魔法使いは思いのほか優しそうな目をポルスキーさんに向けた。

「地図が見たいの? もちろんいいけど。ところで、どこへ行きたいの」

「魔法協会ですよ。あなたも魔法使いなら、その名前くらいはご存じと思いますけどね」

「ああ、そりゃよく知ってる。何ならもう送ってあげるよ」

 その魔法使いは楽しそうに笑って、いきなり無遠慮にポルスキーさんの腕を(つか)んだ。


「え?」とポルスキーさんが思った瞬間、周囲の景色が変わった。

 その魔法使いはポルスキーさんを連れてテレポートしたようだった。



『魔法使いの窓辺』

出会った魔法使い、アシュトン・デュール氏

挿絵(By みてみん)

<イラスト:ウバクロネ様>

お読みくださってありがとうございます!

とっても嬉しいです!!!


この魔法使いが当て馬キャラです~♡


もし少しでも面白いと思ってくださったら、

ブックマークやご評価★★★★★、感想などいただけますと、

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よろしくお願いいたします!

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【短編】 「婚約者が浮気していたので流れで仕返ししたら、なんだか新恋人ができました」 (作品は こちら

幌あきら様
イラスト: 砂臥 環
【イラスト誕生秘話はこちら by 砂臥環様】
― 新着の感想 ―
>「タトゥーを入れてその程度かよ」とバカにされる ものすごい説得力……! コミカルで笑ってしまうのと、それから、そういうのってあるよね、としみじみ。 劣っていたり頼りなかったり、不安をサポートするの…
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