【3-1.魔法薬草の輸入手続き】
本エピソードから第三章がはじまります!
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さて、アシュトン・デュール氏の呪い騒動からしばらくたった頃、ポルスキーさんは魔法薬草の輸入の件で、改めて魔法協会を訪ねることにした。
あの呪い騒動の日はバタバタしていたら受付時間を過ぎてしまい、輸入許可の申請書を出せなかったのだ。
あの件では、アシュトン・デュール氏の呪いでクロウリーさんの同僚が倒れたところに居合わせたり、自身も呪いをかけられていたり、魔法協会で変な水晶玉を使ったりとささやかながら色々あったため、あの日以降もあちこちから調書をいっぱい取られて忙しくしていたポルスキーさんである。
ようやく魔法協会の役人さんから解放されたので、そろそろ魔法薬草の輸入申請の件を再開したいところだった。
ポルスキーさんは家から慎重にテレポートして、魔法協会の威圧的な建物の前に着いた。
「よし、今日は成功」
ポルスキーさんはテレポートでも失敗することがあるポンコツ魔女。今日は成功したということで幸先のよさを感じた。
よーし、と朗らかな気分でエントランスに入ろうとしたとき、正面から誰かがどんっとぶつかってきた。
「あっ」
ポルスキーさんは思わずよろけて尻餅をついた。
するとぶつかってきた人も転んだようで向かいで膝をついている。
「なにこれ、こんなぶつかるってことある? さてはテレポートが成功したから神様が嫉妬してんのかしら(※普通成功する)」
ポルスキーさんがそんなアホなことを思っていると、ぶつかってきた人が申し訳なさそうな様子で顔を上げた。
その女性は、肩下くらいあるダークブラウンの縮れ毛を太い黒ゴムで一つにくくり、化粧っ気があまりなかった。きりっとした眉、すっきりした頬、薄い唇、と男っぽさを感じさせる風貌。しかし、その顔立ちはたいそう整っていた。うん、美人だ!
「ごめんね」
女性は素早く立ち上がった。その背はすらりとして高かった。足が長くてスタイルもいい!
女性がさっと手を差し出し、ポルスキーさんが立ち上がるのを手伝う。力強い腕で、その仕草もとても男前だ。
平均身長くらいしかないポルスキーさんはその女性を見上げた。
その女性は柔らかそうなシャツを第二ボタンまで開け、実用的そうな素材の黒いローブを羽織っていた。装飾品は身につけない性格っぽいが、細い金のネックレスだけは身に着けていた。
なんてかっこいい魔女なの! ポルスキーさんは見惚れてしまった。
「大丈夫?」
「はいっ! 大丈夫ですっ!! 魔女の真っ黒ローブのおかげで、こういうときは擦りむかずに済みますよねえ」
ポルスキーさんの声が思わず上擦り、何だか訳の分からないセリフが飛び出てくる。
しかしその魔女は心配そうな顔をしたままだ。
「ごめん、私はジェニファー・スリッジ。考え事してたから前見てなかった。あとでどこか痛いところとか出てきたら言って。私、ここにはよく出入りするから」
「分かりました。あなたの方こそ大丈夫ですか?」
「私は特別頑丈なのよ。昔からスポーツでも何でも怪我さすのは私の方なの。じゃね」
ジェニファーと名乗った魔女は片手を挙げて颯爽と去っていった。
「はあ~、あんなにかっこいい人がいたなんてね、気付かなかったわ。ラッキー」
ポルスキーさんはジェニファーが去っていった方をぼんやりと眺めながらうっとりと呟いた。
さて、テレポートは成功するし、正面衝突したとはいえかっこいい美女には会うしで、ポルスキーさんはいい気分だった。
意気揚々とポルスキーさんが魔法薬草の輸入について窓口へ申請書を提出しに行くと、窓口の女性がポルスキーさんの申請書の名前を見て「あ」と呟いた。
窓口の女性は何やらごそごそと引き出しをあさり、周知文書みたいなものを引っ張り出した。
「何ですか」
ポルスキーさんが怪訝そうに聞くと、その女性は、
「えーっと、こちらの魔法薬草は輸入に当たって輸入者の簡易面接をすることになりました」
と言う。
ポルスキーさんは面倒くさそうな顔になる。
「えー。これまではそんな面接なかったですけど」
「厳格化されたみたいです。こちらの魔法薬草、燻したときの煙を吸い込んでも人死にが出るほどの毒性を持っていますから」
ポルスキーさんは首をひねった。
「変ですね。毒を理由に? 別に魔法薬草じゃなくても、そこらへんに生えてるキョウチクトウでもトリカブトでも強い毒を持ってるじゃないですか。キョウチクトウだって燻した煙吸ったら倒れますよ」
すると窓口の女性はイヤそうな顔をした。
「そんなこと私に言われても知りませんよ。専門官に言ってください」
「はあ」
ポルスキーさんは、確かに窓口で粘っても仕方がないと思った。
「じゃあ、面接を受けるための手続きはどうしたらいいですか?」
「えーっと、簡易的なものみたいですから、こちらの紙に名前とお住まいを書いていただくだけですって。上司に面接日を確認してまいります」
「はあ」
ポルスキーさんが待っていると、窓口の女性が戻ってきた。
「30分後くらいに輸入許可の責任者が面接可能だそうですよ。お時間は大丈夫ですか」
「え、さっそく今日?」
なんとなく違和感を感じたポルスキーさんだったが、まあ手続きが早いに越したことはない。
「では今日で」
「かしこまりました。ではこちらへどうぞ」
窓口の女性はポルスキーさんを別室へ連れて行った。
ポルスキーさんは、てっきり殺風景な取調室みたいな部屋で面接を受けるのかと思っていたら、いきなりふかふかなソファの置かれた豪華な応接室に連れて行かれたので目を丸くした。
「え、魔法薬草の輸入の確認ですよね? こんな部屋で?」
なんだか嫌な予感がする。
そしてその予感は見事に当たったのだった。
部屋に入ってきたのは偉そうな魔法使いだったから。
魔法協会の偉い人なんか顔も名前も知らないポルスキーさんだったが、さすがに入ってきた魔法使いが長い金髪をきっちりとセットし、そして上等なローブに宝石付きのブローチ、そしてつやつやに手入れされた重厚な革靴を身に着けていたので、こりゃー大物だぞと思わないわけにはいかなかった。
しかし、なぜ?
魔法薬草の輸入の確認ごときでこんな大物が出てくるわけがない。何か別の理由があるはずだ。ポルスキーさんは固い表情で身構えた。





