秘密
道彦と連絡を絶って、普段通りの生活を送っていた美里。
そこに1通のメールが届く。
そして、黒い約束が交わされる。
最終回。
第4話
その後2度ほど会ったが、道彦の容体は改善しているようには見えなかった。
やがて「これ以上連絡取り合うのはやめよう」と言われ、連絡は途絶えた。
ただお互いにブログやFacebookをしているので、近況は確認できた。
やがて道彦の更新が途絶え、再会して二年後の夏、それも美里の誕生日の1日前に亡くなった事を知った。
58歳だった。
美里は手を合わせて祈った。「約束は守るから」といいながら。
あれから13年。㓛一の余命は3ヶ月と宣告された。末期の膵臓がんだ。
70歳になった今亡くなるのは、少し早い気もするが、人はいずれ死を迎える。
それがいつなのか誰にもわからない。ただ、余命宣告をされた以上、㓛一の残りの看病と葬儀まで、
美里は準備をする必要がある。
2年前に道彦が亡くなる1年前、再会して1年後に突然メールが送られてきた。
電話で話したいということだった。
道彦は、私の事をやっぱり忘れられない。なんであの時に別れてしまったのか、と考えたと言っていた。
私も道彦を忘れることができない。
あれほど好きだった二人は、不完全燃焼のまま別れてしまっていたのだ。
でも今は何にもできない。
そこでせめて自分達が死んでから一緒にいられる方法を考えた。
何度も話し合って、「隣同士の墓に入る」ことを決めた。
お互いに子供がおらず、一人っ子同士なので兄弟姉妹もいない。
お互いの弁護士に依頼しておけば、㓛一は実の母親が眠る墓に入るものだと思っているし、
そうするつもりだ。
道彦は亡くなる前に、購入した墓に入っているが、道彦の妻が亡くなったあとは、
道彦が弁護士に依頼していて、妻の実家の墓に埋葬されることになっている。
道彦の妻は、遺言などを残す人ではないから、弁護士に全ては任せているという道彦の言葉を
そのまま信じている。
本当は同じ墓に入りたかったが、道彦の妻が存命中は難しい。
そのため、道彦の霊園に美里名義で隣同士の場所を確保してもらっている。
もちろん、功一は一切知らない。互いの伴侶には、隣同士の墓であることも、それぞれの伴侶は同じ墓に入らない、と言うお願いをしていることも秘密だ。
お互いの夫や妻は、一緒の墓に入るものだと思っている。
まさか自分たちの伴侶がそんな事を企てて、弁護士に頼んでいるなんて、想像もしていない。
㓛一を見送り、実家の墓に埋葬をすれば、約束が確実に果たせることになる。
「もう少し待っててね」
美里は秋の夕日に向かって、そうつぶやいた。
終
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