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26 自業自得の占い師(2)


救われた推し(レン)を見て、自分の役割はなくなったと改心し、心からの謝罪をしたジュリア。


同じ転生者で推しを愛する『推し仲間』を、レベッカが放置する訳がない。


しかも、とっても役に立つはず・・・。

きっと彼女は私の言いなりだわ。

だって、こっちには人質(レン)がいるもの・・・。

レベッカの怪しい微笑みに腹黒さが増す。


「そうね、罪滅ぼしはしてもらいます。でも、その前にレンにしてもらいたいことがあったら言って頂戴。レンが受け入れられる要求なら、叶えてあげるわ」


レベッカの申し出に、ジュリアがごくりと唾を飲んだ。


「何でも?」


「叶えてあげられることならね」


ジュリアが、チラリとレンを見た。そして、目を瞑って叫ぶ。


「一度だけでいいので、ハグしてください!!」


「え? そんなんでいいのぉ?  俺もっとすんごい事を期待しちゃったっすよ。ここからR18なのかと思ったのにな・・。」


レンが手を広げて、ジュリアに近寄る。ジュリアは言い出したのは自分なのに、腰を引きながらおずおずと少しずつ近付く。

そして、レンがジュリアを抱き締めると、ジュリアもレンの腰に手を回した。


「スーハースーハー・・レン様・・いい匂いがします・・・この匂いは一生忘れません」


ジュリアの顔が、とても穏やかな顔つきに変わる。


「これで、私の手足となって働いてくれる人間がまた一人出来たわ」

ほくそ笑むレベッカ。





数日後・・・。

「レベッカ様、この役私がしないといけないのですか?」

ジュリアは顔中、濃い目のファンデーションを塗りたくられていた。


「そうよ、あなたが仕出かした事を回収しにいくんだもの。ほら、額にもっと皺を書いて頂戴」

ジュリアは黒いペンで、額や目尻に線を容赦なく書かれる。


「ううう、レン様に見られたくない・・・」


レベッカの化粧術のお陰で?ジュリアは老婆に大変身。


その数時間後、レベッカはエミリエンヌを町中に連れ出していた。


エミリエンヌとルーカスは、あれ以来きちんと話せていない。

ルーカスがエミリエンヌに近寄ると、彼女が逃げる。

これを何度も繰り返していたのだ。


これではいかんと立ち上がったのが、レベッカだ。


「あら? こんな所に占いをやっているわぁ」

レベッカが、紫のビロードで覆われたテントの前で立ち止まる。


「こんな所にこんなものがあったかしら?」

エミリエンヌは普段から来ている町で、始めて見るテントに懐疑的だ。


「あー、これ、そう言えば私の侍女がよく当たると言っていたわ。ねえ、エミリエンヌさん。ここに入ってみましょうよ」


「えー・・でも・・」


二の足を踏んでいるエミリエンヌの背中を押して、強引に中に入るレベッカ。


「あらあら、美しいお嬢さん方。いらっしゃい」

低い声の老婆が、すぐに声をかけ、椅子にかけなさいと催促した。

あら、ジュリアったらノリノリじゃない。

笑いそうになったが、レベッカは顔を引き締めエミリエンヌに、「占ってもらいましょうよ」と勧める。


「ここまで来て、占ってもらわないのは失礼よ。さあさあ」


レベッカがエミリエンヌを座らせて、自分はさっさと外に出た。


「ちょっと、待ってください!! レベッカ様?」

慌てるエミリエンヌの手を掴み、老婆ジュリアがすぐに手相占い的なものを始める。


「ほほーう。あなたは今恋についての悩みがありますね」


「そ、そうなんです!! なぜ分かったのですか?」


あまりのチョロさにジュリアは心配になった。

この子、こんなに信じやすくて大丈夫?


「こほん。手相に出ているからです。そして、あなたの好きな人は、他に好きな人がいるのでは?と思っていますね?」


「そうです!! とても素敵な方なので、そういう人がいてもおかしくないのに・・。つい夢をみてしまって・・」

最後の方の声が小さくしぼんでしまう。


「でも、それはあなたの勘違いです。その彼の好きな人はあなたですよ」


「そんな都合のよい言葉・・信じられないです・・」

萎れたエミリエンヌの姿に、ジュリアは心の中でごめんなさいと詫びる。


「あなたが彼と出掛けた時、近寄って来た女と彼は全くの無関係です。その女はその男と約束もしていないのに、勝手に来ただけの女なの。そして、まるで意味ありげにあなたに言ったけれど、それは全て嘘なのよ!!」


老婆ジュリアは、一気に自分の悪巧みをさらけ出した。

息継ぎを忘れて話したせいで、はーはーと息切れをしている。


「それは本当なのでしょうか・・・?」

まるで見ていたかのようにピタリと当てる占い師に、驚くエミリエンヌ。


ここまで言って、まだ疑うの?

お願い信じてー・・でないと、何度も老婆役をさせられちゃうわ。

ジュリアは必死の説得を試みる。


「いいこと? よぉーく、お聞きなさい。ルーカス様はあんたの事を愛しているわ。だから、ちゃんと逃げてないで向き合いなさい!!」


「・・・あれ?私ルーカス様のお名前を言いましたっけ?」


「・・・・。」

うっかりだった。でも、ここで自分がジュリアだとばれる訳にはいかない。苦しい言い訳を脳みそのシナプスが焦げるくらいの速さでフル回転させた。


「私には、あなたの手相から全て読み取れるのです。恋する乙女には、掌に想い人の名前が現れるのよ」

老婆が、エミリエンヌの掌を指でなぞる。


「ほら、ここの皺を辿ると『ルー』『カ』『ス』と読めるでしょう?」


エミリエンヌがじっと自分の掌を見つめた。


「そう言えば、・・・読めます!!」


エミリエンヌがジュリアが適当になぞった跡を幸せそうに、なぞる。


「クー・・いい子・・こんなに素直で胸が苦しい」

老婆が悶えだしたのを、エミリエンヌが『大丈夫ですか』と駆け寄った。


「大丈夫よ。さあ、早く貴女の想い人の元に行きなさい。代金は要らないよ」


「はい、ありがとうございます」

眩しいほどの笑顔で、エミリエンヌがテントを出ていく。

入れ違いに、レベッカが入ってきた。


「ご苦労様、エミリエンヌはいい顔して、ルーカスのところに走っていったわ」

レベッカのOKサインを見たジュリアが、すぐに顔中に書かれた皺を、タオルで拭き落とそうとごしごし擦る。


「もう、こんなまどろっこしい事をしなくても、私が彼女に嘘をついていたって、言えば簡単だったのに・・・」

落ちない化粧にイライラしているジュリア。


「ダメよ!! これから、あのカロリーネ・クレーンプット侯爵令嬢が、再びエミリエンヌを陥れようと嫌がらせを始めるでしょ? きっとカロリーネは、エミリエンヌと仲が悪いあなたを手駒として

懐に要れようとするでしょう?」


「それまで、エミリエンヌさんと仲良くしちゃダメなのね?」


レベッカが無言で頷く。


「・・・でも、カロリーネって人を人と思っていない悪役じゃなかったかしら? 私、気に入られなかったら・・・殺されるかも?・・」

ジュリアが自分の危険性に気がつく。

途端に怖じ気づいた。


「ヤダヤダヤダ!! 怖いの痛いの恐ろしいのは嫌だーーー!!」


レベッカの目が細く光る。

悪い事を思い付いた顔だ。


「あなたの護衛にレンを付けるわ」

ジュリアが大人しくなる。

「レン様を私の護衛に?」


レベッカが頷く。


「四六時中、ずーと?」


レベッカが微笑む。


「やります!! 死ぬ気でやります!!」

ジュリアが立ち上がって、手をあげる。

レベッカの思惑がとんとん拍子に進む音がした。


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