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24 それはデート?(2)


ルーカスは、お邪魔虫2匹(王子と妹)の排除の仕方を考えていた。


エミリエンヌと待ち合わせをして、二人で小物店に入った。

が、すぐにアルナウトが入店。

しかも、その矢先にレベッカまでも来た。

折角のこの機会になんと迷惑な・・と思っていたが、すぐに二人はどこかに行ってしまった。


嵐のような二人が去り、残されたルーカスとエミリエンヌは呆気にとられたが、時間は有限だと気付いたルーカスが仕切り直す。


「じゃあ、殿下とレベッカもどこかに行ったことだし、私達はショッピングを楽しもう」


「そうですわね。レベッカ様のプレゼントを探さないといけませんものね」

ルーカスはプレゼント云々を忘れていた。

本来の目的は全く別にあるのだから、妹をだしに使い、申し訳なく思う。


よし、ここからエミリエンヌとの距離を縮めるぞと思った時だった。

再び邪魔が入った。


「あら、ルーカス様、エミリエンヌさん!! お待たせしましたぁー」


約束もしていないのに、ジュリアが現れて、いきなりルーカスの腕を掴む。


「お待たせって、君とは何の約束もして・・」

『君とは約束をしていない』と言い掛けたルーカスは、エミリエンヌとジュリアが買い物の約束をしていたのかと、勘違いし口を閉じた。


「一緒に、楽しくお買い物しましょうね」


ジュリアが二人の間に割って入りった。


「ほら、これってルーカス様の瞳と同じ色の小物入れよ。素敵だわ。あなたも買うの?」

ジュリアはルーカスの腕を掴んだまま、エミリエンヌに話しかける。

「今日の目的はレベッカ様のプレゼントです。それに、私がルーカス様の色の物を持っていては、ご迷惑になるかもしれませんし・・・」


「そんなことはな・・」

「そりゃ、そうですわ!! 他の方々に、恋人と勘違いされては、否定をして回るルーカス様のお手をどんなに煩わせるか」


恋人と言われては、ルーカスもそうだと言い辛い。

そうなりたいと願っているが、現時点では、片想いだ。


二人が、黙り込んだところでジュリアが更に引き離しにかかった。

「見て、エミリエンヌさん。これなんかレベッカ様にいいんじゃない」

ルーカスの腕を放し、今度はエミリエンヌを店の奥に引っ張って行く。


ルーカスと十分に距離を取ったところで、ジュリアの声音が変わった。

「ルーカス様はね、あなたが可哀想だから今日私との買い物に、あなたを誘って下さったのよ。そろそろ空気を読んで、帰って下さらない?」


「え?!・・・そんな・・ごめんなさい・・知らずにお二人のお邪魔をしていたなんて・・・でも、レベッカ様のプレゼントだけは、選ばせて下さい。買えたら、すぐに帰ります」


「じゃあ、それだけは待っててあげるわ。ルーカス様も優しいから、あなたが何も買わずに帰ったら心配するでしょうし」


ジュリアはわざとらしくルーカスの方をチラリと見る。


「あ、ありがとうございます」

エミリエンヌは、深く頭を下げた。


そこへ、何も知らないルーカスがやってくる。


「こんな奥にいたのか。何か良い品物は見つかったかい?」


優しく微笑むルーカスに、エミリエンヌの心がざわついた。

本来この笑顔を向ける相手は自分ではなく、ジュリアだったのだ


そう思うと、さっきまで勘違いしていたのが、恥ずかしくなる。

しかも、以前にジュリアの事をルーカスに相談していたのに、いつの間にこんなにも仲良くなっていたのか。

ルーカスは自分の味方だと信じていたのに・・・。

どんなに、自惚れていたのだろうと思うとルーカスの前にいることが出来ない。


エミリエンヌは、適当に棚にあった紫の巾着袋を手に取り、「これに決めました」と言って店の支払いカウンターに走って行く。


「これ下さい!!」

鬼気迫るエミリエンヌの形相に、店員がビクつきながら、お釣りを渡した。


そのままの勢いで、ルーカスとジュリアがいる方へ戻る。

「あの・・プレゼント買えました・・なので、ここで私は帰ります・・」


「え?え?・・ちょっと待ってよ。これから、ランチを予約している店に行こうと思っていたんだ。用事がないなら、一緒に行かないか?」


焦るルーカスを、エミリエンヌは振り切るように走って、店を後にした。

走って走って・・・足ががくがくになるまで全速力で駆けていた。


石畳はいつのまにか、土の道に変わっている。

「私ってバカみたいだわ。ジュリアさんと仲の良いルーカス様に、彼女の事を相談して・・・。しかも、今日はルーカス様が私の事を想って下さっているのではなんて・・・夢見ちゃって・・・。恥ずかしい・・・」


ここで、エミリエンヌは握りしめていた紙袋を開けた。

その中には掌サイズの紫の巾着袋が一つ。


「公爵家のお嬢様に、こんな小さな巾着・・渡せるわけないわ。しかも、自分の瞳と同じ色のって、気味悪がられてしまうわね・・」


今朝、出掛ける時は、背中に羽が生えているのではと感じる程、心も体も軽かったのに、今は足に重りがあるように全身が重く感じた。

エミリエンヌとすれ違う人が、振り返る。

それは、彼女がぽろぽろと涙を流していたからなのだが、それに気が付かないくらいに、エミリエンヌの頭の中は悲しみの感情で一杯だった。





一方レベッカは、推し達がそんな事になっているとは露程も思わず、町歩きデートをしていた。


まあ、レベッカにデートという概念はなかったのだが、アルナウトはデートを満喫していた。

なぜなら、レベッカの手がアルナウトの腕に巻き付いているのだから。


ふらふら歩くレベッカが迷子になるからと言う理由で、無理に巻き付けたアルナウトの思惑は、案外レベッカに受け入れられている。


二人が町の広場までやって来ると、二人の男女が押し問答をしていた。


「どうして、君とランチに行かなくてはならないのだ?!!」

不機嫌極まりないルーカスに、必死で食い下がるジュリア。

「お願い、シナリオが進まないと大変なの。協力して私とランチに行ってぇぇぇ!!」


その二人とは、ルーカスとジュリアだ。

「ゲ!! なんで、ルーカスと偽ヒロインがイベントしてるのよ!!」


レベッカはあまりの事に、隣にアルナウトがいることを忘れ、声に出してしまった。


もちろんこの声を聞き漏らすアルナウトではない。


やはり、レベッカもあの手帳に書いていたイベントやらを知っていたのだ。

しかも、ヒロインと言う単語も何度も出てくるが、レベッカの中ではヒロインはジュリアではないようだ。

アルナウトの見た手帳では、ヒロインはジュリアだと書いていた。


ヒロインね・・・。

アルナウトは懐疑的な目で見る。そのジュリアは、人目も憚らずルーカスに纏わり付いている。


レベッカが触れている、アルナウトの腕が熱くなった。

それは、アルナウトのせいばかりではなく、本当にレベッカの腕が燃えていたのだ。


横のレベッカを見ると。目だけで人を射殺さんばかりに燃えている。


アルナウトの腕を持ったまま、レベッカがカツカツとヒールを鳴らし、ルーカスとジュリアの傍に歩み寄る。


「お兄様、今日はエミリエンヌ様と二人でお買い物のはずでしたわよね?!!!」


「そ、そうなんだが、急に彼女が帰ってしまったんだよ」


レベッカはジュリアが二人を引き離したと察した。

なのに、横に立つアルナウトも、のほほんと「では、用事でもあったのかな?」などとボンクラな言葉を吐く。


「チッ」

全く男共は、状況判断が出来なさすぎる!!

イライラが頂点に達したレベッカが、アルナウトから手を放し、掌を上向ける。


するとその上に黒い煙と共に、2冊の本が現れた。


その本を1冊ずつルーカスとアルナウトに押し付け、それぞれの顔に、失望とバカにした表情を向ける。


「二人とも、乙女心ってものをこれを読んで私にレポートを提出しなさい!! 期限は三日後!! よろしくて?!!」


二人は胸に押し付けられた本をもって頷くしかない。


コクコクコク。


レベッカは踵を返し、次はルーカスの服の裾を未だに握りしめているジュリアの前に仁王立ちになる。


「服を放しなさいッッ」

地獄からの声とはこのように腹に響くのでは?と思わせる低い重低音にジュリアもサッと手を引っ込めた。


手放したのを見るや否や、ジュリアの腕を掴み、男二人を放置してジュリアを馬車に乗せてその場を後にする。

残された男二人は、ハードカバーの重たい本を握りしめ、間抜けな表情でその馬車を見送ったのだった。



一方馬車では、蛇に睨まれた蛙のように脂汗をたらたら流すジュリアと、今にもジュリアを頭から食わんとする魔王レベッカ。


「何をしたのか、洗いざらい吐いてもらうわ。話せるでしょ?ねえ、ジュリアさん?」


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