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18 諜報機関?いいえ、見守り隊です(3)


ルーカスは、諜報機関のあった部屋を出て、レンと公爵家の玄関で、待ち合わせをする。


同じ家から出るのに、彼らには彼らの専用通路があるらしい。


「レンさん、お待たせしました」

ルーカスはあの部屋から出てすぐに玄関にきたのに、既にレンは待っていた。


「いえいえ、こっちは飛んで出るから早いんすよ」


飛んで出るって何かな?と思ったが、ルーカスは敢えてスルー。

「それにしても、長年我が家が六階建てだったなんて知らなかったよ」


話題を変えたのがいけなかった。


「六階じゃないっす。七階っすね」

「・・え? な・なかい?」

ルーカスが屋敷を振り返って、凝視する。

先ほどいた六階部分は、屋根裏の辺りに相当するはず・・・でも七階とは?

・・・・!!

屋敷の屋根の上部分を目を凝らして見ると、空に透けて建物が見えている。


「いやいやいや・・。もう詳しくは考えないようにしよう」


ルーカスは『考える』能力を一時的に放棄した。

人間は容量オーバーになると、無意識に見なかった事がうまくなる。


「では、本日からレンさんは、私の侍従ということで一緒に学校に行ってもらいます」


「はーい、俺も学校は初めてなんで、楽しみっすよ。勿論ジュリア嬢にもしっかりと探りを入れるっす」


レンは細い腕に似合わないしっかりとした力こぶを作って、ルーカスに見せた。


レンが侍従として生徒に溶け込み、オリバーとマシューは影として見張る。


今も二人はどこかにいるのだが、ルーカスにはさっぱり分からない。

ルーカスにはここで、疑問に思うことがあり思いきって尋ねた。

「三人とも、あの諜報機関で働いていたってことは、私を観察していたんだよね?」


レンは何を当たり前な事を聞いているのか?くらいにうんうんと頷いた。


「私の前に出て、私に協力することはレベッカはどう思うのだろう?」

妹が自分を大切に思うあまり、このような巨大な諜報隊を作っているのに、それを自分が使って良いのだろうかと思ったのだ。


「・・・やっぱり、ルーカス様はいい人っす。レベッカ様はこの機関をルーカス様のためにつくったんだから、それをルーカス様に使って頂けるのは喜ぶべき事って考えてるんじゃねえすか」


「そうか・・。君達も協力をありがとう。危険な事は頼まないけど、くれぐれも君達も気をつけてね」


諜報員は危険な仕事だ。大丈夫なのだろうかと、ルーカスは心配になる。

レンは目を見開き、きちんと説明をする。


「レベッカ様は俺達の働く場所を作る為にあそこを作って、訓練も受けさせた。でも、危険そうな任務はほぼレベッカ様が行くんす。もし俺達が潜入捜査に行くときは、万全の防御魔法をつけてくれるから、今まで怪我人は出たことないんすよ。」


なるほど、レベッカらしいとルーカスは思った。

レベッカは人に興味のない顔をして、実は人が大好きで過保護なまでに心配性なのだ。


一先ず、レベッカの防御魔法があるなら、大丈夫だと安心しレンと一緒に夕方の学校に向かった。


生徒会室に入ると、待ち合わせをしていたアルナウト王太子が先に待っていた。

慌てるルーカス。

「殿下、お待たせして申し訳ございません」


「ああ、気にするな。で、その者は?」

レンを不思議そうに見る。

「これは、今回の件を調べるために、レベッカの人員から手伝いを頼んだものです」


「ああ、レベッカの・・・どうりで防御魔法の付帯している数が、すごいわけだ」


アルナウトが特殊な瞳を持っていると気が付いていたが、付帯されている魔法まで見えるとは、驚きだった。


もしかして、自分にもレベッカが何かしらの防御魔法を掛けているのかも知れないと、ルーカスは気軽にアルナウトに聞いた。


「アルナルト殿下にお尋ねしたいのですが、私にも何か防御魔法が掛かっているのでしょうか?」


「お前に掛かっている防御魔法?・・・この国の有りと有らゆる攻撃魔法や物理攻撃にも対抗できるものが幾重にも掛けられている・・・見ているだけでゾッとする代物だ」


ルーカスが自分にそれだけのものが掛けられているとは知らずに、呑気に聞いてしまったことを後悔した。

「ルーカスにはそれだけ丁寧に幾重にも掛けている防御を、私には一つも掛けてくれない」

と、いじけるアルナウトが、面倒くさい。


「ルーカスはレベッカに愛されているが、私には全く見向きもしない・・・。どうすれば彼女の気をこちらに向く事が出きるのだろうな?」


いいな、ルーカスは・・と繰り返される言葉に、再びうんざりする。

レベッカに頼んで、殿下にも防御魔法を掛けてくれと頼もうかとも考えたが・・・、止めた。


アルナウトに興味のないレベッカなら、不織布並みのうっすーい防御魔法を掛けそうだったからだ。


そうなれば、アルナウトの機嫌がますます悪くなるだろう。


「アルナウト殿下、ジュリア・ボスマン男爵令嬢が、ゾエ・テーニセン侯爵令嬢の教科書紛失事件の犯人をレベッカに仕立てあげようとしています」


ルーカスは、アルナウトの機嫌が悪くならないうちに、レベッカの相談に持ち込んだ。


「うーむ・・・ジュリア嬢か。その令嬢はやたらと私の回りを付きまとってくるので、落ち着かないのだ。何を考えているのか分からない令嬢で困っていたのだが・・・」

アルナウトは何かを思いだし、ブルッと体をブルッと震わせた。

「君達が得た情報を共有したい。そのかわり、学校を動き回れる用に、私に出せる範囲の許可を取ろう」


アルナウト殿下の許可がおりたことで、これまで全く遠慮もなく学校内を動き回っていたレベッカの諜報員が、これで益々好き勝手に自分を尾行するのではと思うと、憂鬱になった。

だが、ルーカスはジュリアがエミリエンヌを傷付けるのではと想像するだけで、心臓が痛む。


もっと多くのジュリアの情報が欲しいルーカスは、アルナウトの提案に乗ることになった。


ここで、ルーカスはエミリエンヌのために、自分のプライバシーを捨てたのだが、何故そこまでしたのか気が付いていない。







「なんですって?!! レン!!それは本当なのね」

レベッカは、ルーカスが自分の個人情報をレベッカに売ってまで、エミリエンヌを守ろうとしたことを聞いて興奮中。

激しくレンの襟首をつかんで激しく揺さぶっている。


「レレレレベッカ様!! 落ち着いてくだしゃいーうっ舌噛んだ」


レベッカから逃げ出した、レンが涙目で鏡で舌の傷を確かめた。


「レベッカ様、私が見た様子では、ルーカス様はまだご自身の気持ちに気付いていらっしゃらないようですが、エミリエンヌ様に少しずつ惹かれているようです」

舌の痛みが取れないレンの代わりに、オリバーが返事をした。


「恋するルーカス・・・。はぁぁぁぁぁ~・・・見たいわ。イチャイチャする二人を見たいわ。とっても見たいわ。見てみたいわー」


前世のゲーム内では、どんなに頑張っても、ルーカスの好感度も上がらなかった。

頑張り方が斜め上過ぎて、ゲームのルーカスにはあきれ顔しかさせておらず、はにかんだ表情や笑顔は皆無だった。


その点、流石はヒロイン。がっつかなくても、ルーカスの心を掴んでいく。

いい傾向だと安心するレベッカだが、更なる二人の発展のために立ち上がった。


ここは二人の距離をもっと親密になるイベントに積極的に参加して頂きましょう。


一人でにまにまと、二人のデートを想像し顔が崩れるレベッカを、レンとオリバーが、残念な気持ちで見ていたが、それに気が付かないレベッカだった。


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