ハートマーク弁当
さて、お話は少し進んで、今ここは海斗
くんの働くガソリンスタンドの休憩室です。
時刻はお昼で、海斗くんは先輩の一郎君と
事務員の明美さんとお弁当を食べています。
一郎くんは海斗くんより五歳年上の27歳
です。海斗くんが柔和な感じのイケメンな
のに対して、一郎くんはガッシリとした体
格でヒゲも濃く、男性的な青年です。顔と
声はタレントのデガワさんに似ています。
「おい、海斗。おまえ、またハートマーク
の弁当かよ」と、一郎くんが高い声で言い
ました。見ると、海斗くんのお弁当のご飯
の上には卵焼きが乗せてあり、その卵焼き
にはケチャップでハートが描かれていたの
です。そうです。これは今朝、ボピくんが
早起きして作ったお弁当なのです。
(もー、ボピくんたらハート描くのやめ
てって言ったのに、しょうがないなあ)
海斗くんが困ったような顔をしていると、
一郎くんが続けて言いました。
「おまえ、独身だって言ってるけど、本当
は奥さんいるんじゃないのか」
「いませんよ。これは自分で描いたんです」
「怪しいなあ。あっ、もしかして明美ちゃ
んに作ってもらったのか」
すると明美さんが顔を赤くして言いました。
「やめてください。一郎先輩。そんなこと
あるはずないでしょ」
事務員の明美さんは海斗君と同い年の22
歳でショートヘアのよく似合うとても可愛
らしい女性です。
ー下に挿絵がありますー