合格
秋丘はメガネをかけ直して言いました。
「そりゃ、あきまへん。あんさんのよう
な金の卵にジャーマネなんてやらせとっ
たら(秋丘プロの社長は見る目がない)
と業界の笑いものになってしまいまんが
な。アイドルか女優でやってくれまへん
やろか」
すると、明美さんはグッと身を乗り出
して言いました。
「いいえ、私、裏方仕事の方が向いてい
るんです。この白浜海斗くんをスターに
するのはもちろんのことですが、先ほど
お話のあった売れなくて伸び悩んでいる
アイドルの人たちも私の力でスターにし
てやりたいんです」
熱心に夢を語る明美さんを見て秋丘は
思いました。(まあ最初はマネージャー
にして会社に置いとけば、そのうちに気
が変わってタレントの道に行ってくれる
やろ)
秋丘は頭をかきながら言いました。
「わかりました。ほな、海斗さんはタレ
ント、明美さんはマネージャーというこ
とで採用しましょう」
「ありがとうございます」
海斗くんと明美さんは声を合わせてお礼
を言いました。
「契約条件など細かいことは、後で資料
を送りますんで、今日のところは一度お
帰りくれまっか」
「はい、わかりました」
「ハハハ。お二人は声がそろって仲がよ
ろしいでんなあ」
海斗くんと明美さんはお互い顔を見合わ
せ、照れ笑いしました。
事務所を出ると階段を降りながら海斗
くんが言いました。
「とりあえず合格してよかったね」
「うん、そうね」
そう答えて、明美さんは気づきました。
(そうだ、あの社長さん、大村崑ていう
俳優に似てるんだわ。うふふ)
ーつづくー




