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前田さん2
「きみはボピくんを知っているのか?」
前田さんが海斗くんに尋ねました。
「はい。浜杉市のアパートで一年半一緒に
暮らしていました」
「そうだったのか。とにかく、ここでは寒
いから中に上がってゆっくり話そう」
前田さんは二人を家の中に入れると六畳間
のテーブルの前に二人を座らせました。
「わしは前田慶三というもんじゃ。昔、名
古屋の寺で住職をしていたが、今は引退し
てこの島で暮らしている」
「僕たちは二人とも浜杉市のガソリンスタ
ンドで働いています。僕は白浜海斗といい
ます」
「私は海斗くんの友人で木下明美です」
自己紹介が終わると前田さんは静かな口調
で尋ねました。
「それでボピくんは今どうしているんじゃ」
「はい。実は三日まえに家出してしまって
行方がわからないんです。それで、ボピく
んが以前お世話になっていたおじいさんの
家に来ているんじゃないかと思って、、」
「なるほど、そうじゃったのか。残念じゃ
がここには来ておらんよ」
「そうですか」
二人はがっかりして顔を見合わせました。
つづく




