おまんじゅうとお茶
「あのー、職員さん。その前に何か食べる
物を買わせてくだちゃい。ぼく、昨日の午
後から何も食べていないんでちゅ」
「おや、それは大変だ。おーい、田辺くん。
戸棚におまんじゅうがあっただろう」
めがねの男性職員は部屋の奥にいる女性職
員に声をかけました。
「はい。今、持っていきまーす」
女性職員はお盆におまんじゅうとお茶を乗
せて持ってきてくれました。
「あのー、ぼく、八百円ちか持ってないん
でちゅ」
ボピくんが困ったように言うと、男性職員
はニコリと笑って言いました。
「ははは、お金は払わなくていいから、遠
慮せずに食べなさい」
「ありがとうございまちゅ。いただきま
ちゅ」
ボピくんは夢中で食べ始めました。すると
なぜだか急に涙がポロポロとこぼれてきま
した。それを見て男性職員が尋ねました。
「君は今までどういう暮らしをしてきたん
だい」
「はい、海斗君という人間と一年半一緒に
暮らしていまちた。でも、性格の不一致で
このたび別々に生きて行くことになったん
でちゅ」
「そうかい。最近、そういうケースが増え
ているんだよ」
職員が心配そうに言ったときです。入口の
ドアが開いて髪の毛の薄い太った中年の男
性が入ってきました。
「こんにちわ。佐和山さん。うちの求人、
応募はありましたか?」
「いやあ、鬼沼さん。ちょうどいいところ
に来てくださいましたね。この子がちょう
どお世話になりたいと言ってるんですよ」
男性職員はその太った男に手招きをしまし
た。ーつづくー




