【声劇台本】すれ違う2人
しきり:さぎりちゃん! おはよう! 今日も、前髪、キマってるね。
さぎり:おはよう! しきりちゃん! それは、電柱よ! そして、私の前髪は大失敗よ。
しきり:ごめんごめん。今日、コンタクト入れてくるの忘れちゃって。
さぎり:そうだったの。ちなみに、それは、お散歩中のポメラニアンよ。
しきり:あら、さぎりちゃんたら、ダイエットし過ぎたのかと思っちゃった。
さぎり:ダイエットで、背が縮むかぁ? ちなみに、それは、自動販売機よって、いうより早く、つり銭チェックしてるわね。
しきり:さぁ、学校に行きましょう!
さぎり:って、偶然通りかかった、見知らぬオッサンと手をつないでるわよ! オッサンも、にやけてるんじゃねぇ!
しきり:まぁ、私ったら、おじさん、ごめんなさい。
さぎり:いや、それは、私。あなた、今日、初めて、私に話しかけたわね。
しきり:おじさんはどこ?
さぎり:もうとっくに、行っちゃったわよ。
しきり:そうなんだ。じゃあ、行きましょう。さぎりちゃん。
さぎり:いや、それは、バス停の表示の奴って、よくそんなもの、片手で動かせたわね。
しきり:あら、ごめんなさい。
さぎり:もう、いいから、行きましょう。
しきり:そうね。
さぎり:だから、あなたは、どうして、よそのお宅のドアに突進して行くの?
しきり:あ、方向、間違えちゃった。
さぎり:しっかりしてよね。
しきり:さぁ、レッツ、ゴー!
さぎり:私を、車の前に押し出すなぁ!
しきり:ご~め~ん~。
さぎり:目がマジじゃない?
しきり:近眼だから目つきが悪く見えるだけ。
さぎり:そう?
しきり:さぁ、行こう。
さぎり:見ず知らずの幼女の手を引いて、どこに連れて行くの?
しきり:あ、ごめんね~。
さぎり:それは、野良猫よ。
しきり:うっかり、うっかり。
さぎり:あなた、色は見えてるんじゃないの?
しきり:ああっ! 色をヒントにすればいいんだーっ! さぎりちゃん、頭いい! てんさーい!
さぎり:なんなんだろーね? この子は?
しきり:じゃあ、行こう! さぎりちゃん!
さぎり:待て! それは、パトカーだ。なにか? あんたは、私のことを、パンダか何かだと思っているのかな?
しきり:いや、さぎりちゃんは、色白でぇ。うちの制服は、黒だからぁ。
さぎり:ほほぅ?
しきり:ごめんなさい。
さぎり:分かればよろしい。
しきり:マジで遅刻しちゃうね。
さぎり:私が、あんたの手を引くから。
しきり:ありがとう! さぎりちゃん!
さぎり:じゃあ、行くわよ。
しきり:ところで、さぎりちゃん。
さぎり:なぁに?
しきり:あなたが、右手で握っているのは何?
さぎり:しきりちゃんの左手。
しきり:ブッブー。私の右手でした。
さぎり:はぁっ? あっ! い、いつの間に? てか、あんた、めっちゃ歩きづらそうやんか! 何してんの?
しきり:いや、なんとなく。
さぎり:バカなことしてないで行くよ!
しきり:はぁい。
さぎり:まったく、も~。
しきり:ところで、さぎりちゃん。
さぎり:なぁに?
しきり:あなたが、右手で握っているのは何?
さぎり:もう、またぁ? 今度こそ、しきりちゃんの左手。
しきり:ブッブー。さっき拾った犬の死骸でした~。
さぎり:いーやぁー! なに? なんなん? これ? まだ、あったかい。
しきり:や~ね~、もう。
さぎり:嫌なんは、しきりちゃんよ! なんの嫌がらせ?
しきり:軽いアメリカンジョークじゃない。
さぎり:そんなん聞いたら、アメリカの人、怒るわ! 全米が怒るわ!
しきり:さぎりちゃん、おもしろ~い。
さぎり:おもんないわ。なんかもう、パニックですわ!
しきり:まぁまぁ、落ち着いて。
さぎり:あんたが、言うな!
しきり:まぁまぁ、上がって、ぶぶ漬けでも。
さぎり:今度は、京都の人が怒るわ! はんなりしはった京の人でも、怒るわ!
しきり:さぎりちゃんは、忙しいなぁ。
さぎり:主に、あなたのせいですぅ! 反省してください!
しきり:それは、そうと、もう、完全に、遅刻確定だよ?
さぎり:誰のせいなの?
しきり:私のせいですね。
さぎり:今日のしきり、おかしいよ。
しきり:いつから、私をしきりだと錯覚していた?
さぎり:え?
しきり:あなたの「しきり」は、こんなことをする子だろうか?
さぎり:ま、待って! あなた、誰なの?
しきり:ふふっ!
さぎり:「しきり」をどこにやったの?
しきり:ふふふふふふ。
さぎり:こ、こいつっ! しきりを返しなさいっ!
しきり:ちょっ、ちょっと、待って、さぎり! 暴力反対!
さぎり:へっ?
しきり:こんなに、そっくりな他人がいるわけないでしょ? 私は、本物のしきりよ。
さぎり:そうなの?
しきり:そうよ。
さぎり:じゃあ、今日のあんたは、なんなのよ!
しきり:ちょっと疲れちゃったのよ。自分とさぎりの中の「しきり」に。
さぎり:あ。
しきり:自分に嘘をついていたつもりもないし、さぎりと一緒にいるのは楽しい、それは嘘じゃない。だけど、なんだか、疲れちゃったの。
さぎり:今日は、パーッと、遊ぼうか?
しきり:いいの?
さぎり:しきりのおごりで。
しきり:へっ?
さぎり:しきりのおごりで。
しきり:2回言いましたね?
さぎり:大切なことなので、2回言いました。
しきり:よ~しっ! 行こうっ!
さぎり:しきり、それ、郵便ポストだよ。