15.刹那の繋がり
イブルが銀弾に連絡を入れてから、一時間ほどが経った。その間、イブルとセツナは互いに情報を共有していた。
「なあセツナ。本当に、俺でよかったのか? 俺なんかが、守護者なんて大そうな役職で……勿論、頼まれたからには頑張るけど、俺にはあんな化け物共を相手できる実力なんて無いぜ」
イブルが言う化け物とは、セツナが天界で出会った最強たちのことだ。確かにイブルの言う通り、単純な力量だけで言えばイブルと彼らの間には、とても大きな壁がある。そして、それはたった数日で乗り越えられるようなものでは無く、生まれ持った才能や環境の差で作られているのだ。
だが、セツナもその事は重々承知である。それでもセツナにはイブルを選んだちゃんとした理由があるのだ。
「イブル、俺はこの試練を勝ち抜くには皆がただの力比べで強いだけじゃダメだと思うんだよ。それこそ、さっき言ったみたいに役割が必要なんだ。俺が近距離で戦い、まだ決まったわけじゃ無いけど銀弾が遠距離での狙撃、そしてイブルが戦況をコントロールする。具体的じゃないけど、こんな感じで勝ちを積み重ねるのが俺の思い描く理想だ」
「セツナ……」
「だから、お前には情報って言うかそう、知力で戦って貰うんだ。俺たちの戦闘を何倍にも有利にするような、そんな仕事をお前に任せてやりたい。てことで、頼むぜイブル」
セツナは右手の拳を前に突き出した。その先にはイブルがいる。イブルはセツナの目を見て、その拳を見る。
イブルも自分の拳を握り、比べてみるとセツナの手よりも弱々しい。それでも、任されたのだ。セツナという、この地球の最強から選ばれた守護者として、この拳にかける思いは誰にも負けられない。
「セツナ、お前はやっぱり最高だよ」
イブルも拳を伸ばして、セツナの拳に合わせた。そして二人は笑い合った。
それから、暫くするとイブルのスマホに電話が来た。その送り主は勿論、銀弾だ。イブルは何の躊躇いも無く、通話を開始する。
「もしもし、着いたか?」
『ええ、言われた場所に着いたわ。こんな山奥のおんぼろの小屋の前に呼び出して、何するわけ?』
銀弾は恐らく、セツナ達がいる空間の真上にいて、連絡をしているのだ。それか、何処か近くの身を隠せる様な場所で、こちらを伺っているかだ。
「よし、それじゃあ今からそっちにセツナが向かう。後は、言わなくても分かるよな?」
『私に彼と戦えっていうの? そんな、まさか』
「そのまさかだよ。それじゃあ今から向かわせる。そっちに行くのに少しは時間があるから、そのうちに準備は整えてくれよ。じゃあな」
そう言い切ってイブルは、電話を切った。相変わらず無茶苦茶な事を言うなあ、とセツナは思った。
「よし、それじゃあセツナ。彼女の実力を測って来てみなよ」
「全くお前は……後でちゃんと謝れよ」