ねこみみと登下校
学校が終わり帰り道。
今日はいつものと違う。
普段の帰り道のはずだけどいつもより楽しい。
「はぁ~癒されるわ~」
「離れなさいよ海來。結城ちゃんが可哀想でしょ」
「そんなことないもん!!」
「……私も……いい……」
「結城ちゃんがそういうなら……」
海來がニコニコ笑顔で結城と手を繋ぎ帰っている。
しかしただ手を繋ぐだけならいいがニギニギしたり、たまに抱っこしたりなどしている。ちなみに咲に注意されたときは抱っこしているときだ。
しかし身長差でまるで姉妹のようにしか見えない。
そしてその姉的な海來はもうとてもとても幸せそうな表情をしている。
「あのね海來。お願いだから…あまりそのだらしない表情を表に出さないでよ。まだクラス内はいいとして」
「どうしてよ?」
「あんたね……海來を目標として高校を受ける子もいるのよ。
そして憧れて一生懸命勉強して同じ学校に入学してきた子もいるの。憧れはイコール目標なのよ。それなりの振る舞いをしないと」
「えっ。いや」
「あ、あんたね……」
そんなことよりも今は結城が上なのだろう。
だから憧れたか目標とかされても自分には関係ない。
ある意味、結城に似ているのかもしれない。
すると、横を歩いていた結城が繋がっている海來の手を引っ張り
「………やって…ほしい……」
「結城?」
「………かっこ……良かった……よ……」
「………グハッ!!」
吐血したかようなリアクションをする海來。
これには本気で結城は心配して駆け寄るが咲から
「大丈夫、大丈夫。持病だから」
「………でも……」
「大丈夫よ。ねぇ、海來」
「……えぇ、大丈夫よ……」
すると新たに決意したような表情で
「部活を作りましょう。親交会でもいいわ。
そこで結城を愛でる場所を……」
「ゲームとクラスと登下校だけにしなさい」
速攻否定された海來の案。
結城の中では一体何をするんだろう?とよく分からなかった。
それでも咲は海來の考えていることを分かっているようでそれを止めようとしている。
自分には関係だろうと二人より先に歩きながら目の前に昨日のあのゲームを貰ったゲームショップが見えてきた。
ちょっと駆け足で向かってみると店内を片付けていたおじさんがいた。
「結城ちゃん!後ろにいるの友達かい?」
「………」(ブイ)
「おぉ!!それは良かったね!
もしかしてゲームからかい?」
「………」(コクリ)
本当に良かったね~!と喜んでくれるおじさん。
そうだ。と思い出して鞄から財布を取り出してお金をおじさんに差し出す。
「………新作…お金……」
「やっぱりバレるよね。いや、でもお金はいいよ」
「………どうして?…あれ高い……よね……」
「昨日も言ったけど漫画喫茶にするからね。
利益はそっちから出せばいいから。それに定期的にお店に来てくれたらいいよ」
「………来る。…友達連れて……」
そうかい。と喜んでくれるおじさん。
すると海來と咲も追い付いてきておじさんに挨拶をする。
「こんにちは。結城のお友達の海來です!」
「咲です」
「はい、こんにちは。
結城ちゃんの友達だね。これからもこの子をヨロシクね」
「もちろんです!結城は絶対に離しません!」
「誰が物理的に離れるなと言ったのよ」
意気込みを言った海來はギュゥと結城を抱き締め咲は海來の頭を叩く。
一連の流れを見たおじさんは本当に仲のいい友達だなーと安心した。
「……昨日…ネコに……なれたの……」
「ネコ?」
「もう~可愛かったわ~!」
昨日の出来事をおじさんに話すと驚いた様子で
「前から運はいいとおもっていたけどまさかオリジナルスキルを手に入れたのか~」
「そういえばオリジナルスキルってレアスキルと違うの?」
「知らないわよ。私、ゲームしてないし」
「………知らない……」
すると「ちょっと待ってろ」とおじさんがお店の奥に入っていき何かを持って戻ってきた。
「はい。これ」
「………なに、これ……」
それは透明な輪っか。中には細かい電子機器が使われている。
「experience。"体験"って意味でこれを首にはめて日常生活をしていると、その人の"個性"や"経験"などの"体験"したことをゲームの世界でスキルとして使えることが出来るものなんだ。
そしてそのスキルを手に入れるためにはまず"オリジナルスキル"を持っていないと意味がない。
つまりはオリジナルスキルは"スキル"や"レアスキル"とはまた違ったスキルってことなんだ」
「つまり結城はそれに該当して、さらにゲームしなくても日常的にスキルを貰える可能性があることですか?」
「そういうことだね。
もしかしたらと思って発注しておいてよかったよ」
そういって結城に渡そうとするが首を横に何度も降ってそれを断る。
「………お金……いくら?」
「これはお金かからないから大丈夫だよ。
オリジナルスキルはゲーム内に10個しかなくてね、運営はその手にした人に無料で配布してるんだ。だからこれはお金はかからないよ」
……なら……と結城はそれを手にして首にはめてみた。
するとまるで首輪がなかったかのように結城の首の色となり馴染み、着けているのさえ分からないぐらいに同化した。
「experienceは隠しておかないとね。
現実で悪い人にバレたら危ないから」
「………危ない……なんで??」
「大丈夫よ。結城は私が守る!」
「何を根拠に……でも、バレないほうがいいのは確かね」
すると結城のスマートフォンから音が鳴った。
ポケットから取り出し確認してみるとparadiseのスマートフォンアプリからの通知だった。
このアプリは昨日結城と海來が連絡交換する際に使用したアプリ。
他にもゲームしなくても進行状況を確認したり任意でリアルで仲間と会えるための手助けなどのサービスをしている。
そして今回そのアプリからの通知は
サイドスキル『純粋』
・清らかな心の持ち主に現れるスキル。運がプラス50%アップする。
いきなり手にしたスキル皆に見てもらおうとスマートフォン画面を三人に向けてながら
「………手に…入ったよ……」
「これは…結城しか取れないスキルね……」
「うん。結城ちゃんしか取れないわコレ……」
「いきなりスキル発現か~流石結城ちゃん」
やったぁ~とピョンピョンと弾む結城の姿に心から和む三人。
するとまたスマートフォンから通知が鳴り
サイドスキル『ウサギのジャンプ』
・可愛らしいジャンプを続けると手にはいるスキル。スピード値に応じてジャンプ力が大幅上がる。
またしても手にしたスキルにさらにぐるぐる回りながら跳び跳ねる結城に
『可愛いから問題ないよね~』
と、すでに現実逃避を始めた三人だった。
そして同時にとんでもないプレイヤーになるだろうなーとも感じていた。