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ねこみみとクラスメイト

翌日。

昨日はゲームを終わったあとすぐに寝てしまい、いまスマートフォンにメールが届いていたことに気づいた。

そこには昨日の連絡先を交換した"ミラ"から。


『改めましてミラです。

私も現実世界の連絡先を添付したから。いつでも連絡してきていいからね』


と、短めの文書の後にミラの現実世界の連絡先があった。

そこには……


「…………あれ………??」


なにか、見に覚えのある現実世界でのミラの名前があった。


…………………………


「ゆぅぅぅぅぅうううぅぅぅぅきぃぃぃぃぃッ!!!!」

「……やっぱり……」


学校に登校し教室に入るとそこには昨日の見たミラが、同じクラスメイトの"本城 海來(みらい)"だった。

海來はクラスの中でもトップカーストであり、人当たりもよく、勉強も出来て、スポーツも得意、容姿も整っているというクラスどころか学校でも一番ではないかという位の女の子。


結城とは真反対で、結城は一人でのんびりと、他の人と群れずに、自分ペースを崩さずに、小柄な容姿はなかなか人も目に止まらない。

それが嫌ではなかった。自分にはネコがある。

なので無理して友達とか作らなかった結城だったが昨日初めて友達が出来た。


そしてその友達がまさかのクラスメイトで、学校一番の女の子だったなんて……


「やっぱり可愛いいいぃ!!どうして今まで隠れていたのッ!!?」

「……特には……ネコ……いればいいから……」


「もう!もう!!もう!!!

堪らなく可愛い!絶対離さないからッ!!!!」


「……それは、困る……」


離してくれないと授業が受けられない。

もちろん海來がそんな事を言ったわけではないが割りと結城は本気で悩んだ。


そしてクラス中の女の子はそれを見て驚いていた。

だってあの海來が、あの結城に抱きついている。それも海來から、もうアピールしているのだ!!


驚きを隠せない中、いつも海來の隣にいるクールな女の子"鹿島 咲"が


「ほら、離れる。桝田さんが困ってるでしょう?」

「いいの!だって私と結城は友達なんだからッ!!」


「な、わけないでしょう。ごめんなさいね桝田さん。

海來が変な妄想で困らせて」


なんか知らないけど謝られた。

よく分からないので首を横に傾けると海來が胸を抑えて崩れる。


「…か、可愛いぃ……」

「はいはい。あんたの病気に桝田さんを巻き込むな」


なんか知らないけど、どうやら海來と友達でもないのに関わるな。と言われていると分かった。そんなことはない。と言いたいけどここは教室。他にも人がいて、それを意識したら言葉が出てこない。

どうしようかと悩んでいると予鈴が鳴った。


「ごめんなさいね桝田さん。海來にはちゃんと指導しておくから」

「まだ結城成分がッ!!」


「はいはい。そんな成分はごさいません」


あっという間に海來を引っ張っていき、距離を置かれた結城。

授業も始まるのでこれ以上なにも出来なかったが


「………………」


なにか、なにか出来たんじゃないかと……考える結城だった。


…………………………


お昼休み。

すぐに結城に飛び付こうとしたした海來を咲が止めたためにいつも通り一人でご飯を食べている結城。


でも今日はちょっと違う。

食べながらもどうしようかと悩んでいた結城は意を決し海來達のいるグループに向かった。


「……………あの…………」

「結城ッ!!会いに来てくれたのッ!!」


「だから止めなさい。どうしたの桝田さん?」


また飛び付こうとした海來を止めて冷静に声をかける咲。

それだけじゃなく他の人もこっちを見ている。

それがとても怖く、体の震えが止まらない。

でも、決めたからとゆっくりと持っていた物を差し出す。


「……………読んで………」

「わ、私に?」


「……………分かるから………」


ここまでが限界。すぐに自分の席についた結城。

持っていたものを咲に渡した。多分これで分かってくれると思った。


…………………………


「な、何なの、これ?」

「へぇ。結城が咲ねぇ。いいな~」


突然渡されたノート。

何枚もあるそれをどうして私にと思っていたところ海來が何か知っているようなことを言ってきた。


「どういうこと?」

「うん。まずはそれを見てあげて。それから答えるから」


答える気がない。そうなったらとことん言わないと知っている咲はため息をつきながらそのノートを捲ってみると


『私とミラの出会い』


タイトルがあり、そしてそこには漫画のように描かれた絵が。

それもプロじゃないかと思うぐらい凄く、一体何が描いてあるのかと興味を持った咲はさらにページを捲る。


そこには昨日の出来事が絵になっていた。

結城がどうしてゲームをすることになったのか、ミラとの出会い、そして友達になった出来事など。分かりやすく絵に描かれていた。そして特にネコの絵だけは抜群に上手かった。


「海來が言ってたの…本当だったのね」

「でしょう。あんな可愛い生き物、見逃せないわ」


「良かったわね。通報されないで」

「私を変態だと思ってるの?」


「もちろんよ。

その変態要素さえなければ完璧なのに……神様って意地悪よね」


「遠回しにディスってるわねよ……」


気のせいよ。と付け足し改めてノートを読み直す。

本当に絵が上手い。この女子高でも美術はあるけど他人のものをあまり見たことがない。上手いと言っても漫画とかのタッチに近いためそれであまり注目されなかったのかもしれない。


それでもあの"孤島"と呼ばれる子が……


「昨日結城と話したけど、口下手で人とコミュニケーションを取るのが苦手みたい。私が友達第1号なくらいにね。もっと表に出せばいいけど本人は"ネコ"があればいいって……もったいないよね~」


「……そうね……」


「"孤島"。自ら孤立して誰とも接したくない。私達から見たらそうだったみたいだけど全然違っていた。きっかけがなかっただけなのよ。脱出する船はあったけどその勇気がなっただけなのよ」


「上手いこといったつもりだけど、分かりづらいわ」


「あれ?」と手応えのなさに困惑する海來。

でも海來が言った通り、ずっと寂しかったのだろう。

だからネコだけが友達だと思って……

そう考えるともう無意識に体が反応したのかいつの間にか結城の前に立っていた。

後ろから「どうしたの咲??」と驚いている声が聞こえるが自分でもビックリしている。


何を言いたいのか?何がしたいのか?

まったく決めずにここに立っているのだから。

そしてそれは結城も同じようで何かと思い首を横に傾けた。


(うっ!……確かに可愛い……)


その仕草に思わずやられそうになるのを持ちこたえ


「これ、ありがとう」


渡されたノートを結城へ返そうとしたのだが


「………あげる……」

「でも、」


「………分かって、欲しかったから……あげる……」


その言葉にキュンと胸が締め付けられる。

これは確かに、確かに、可愛い生き物だ!

でも、そんな振る舞いをすると海來にとった態度が、威厳が……


「それじゃ、ありがたく……」

「………あと……これ……」


すると結城が小さな紙切れを咲に渡した。

中を確認するとそこにはメールアドレスや電話番号、SMSまで乗った個人情報が


「………喋るの…苦手だから……」

「あ、ありがとう…」


「……いい……友達……なら……」

「ッ!!?」


その言葉に胸を撃たれた咲は思わず結城を抱き締めてしまった。

すぐに自分のやったことに気づいて離れたが


「ご、ごめんなさいッ!!」

「………大丈夫………」


「ほら!!結城には抱き締めたくなる魅力あるのよ!!!!」

「………だとしても、海來が自慢することじゃないわ……」


まさか海來と同じようにやるなんてと、ちょっとショックを受けつつも抱き締めたときとても幸せな気分なったのはどうしてだろうと感じたのだった。

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