第94話 陽光Ⅲ
ショッピングモール。そこにはおしゃれな服装をした人、先のとんがった靴を履いた人、やけに鍔が広い帽子を被った人、様々な人がいる。
まあ、そんなのんきな話をしている暇もなく、現在進行形でその人たちは目の前に現れたタイムイーターというバケモノに恐れおののいていた。
バケモノがいる一階にはシンベル学園の制服を着た少年が戦っているが、苦戦している様子だ。このままではここにいるみんながあのバケモノに殺されてしまう。そんな絶望感を感じていた。
そんな危機感を醸し出す危険な空間に、この場に似つかわしくない軍服を纏った女性が二人、脚に不思議な光を絡ませながら猛スピードでショッピングモールの屋上に到着した。
「はい、私の勝ちー」
「ちょっとズルいですよ! 移動途中、空中で邪魔してきましたよね!?」
屋上に飛んできたのは由紀とその同僚だ。相も変わらずどうでもいい討論が繰り広げられている。
「あれぇ? ハンターなら空中戦の訓練もしてると思うんだけどぉ。もしかしてやったことないのかなぁ」
「馬鹿にしないでください! 私だって訓練したことありますよ!」
由紀の同僚は激情して顔が赤くなっている。が、さすがはハンター。何のためにこの場所に来たのかは忘れていない。
「‥‥‥はあ、そんなことよりタイムイーターは‥‥‥」
「ああ、それなら一階で学生が戦ってるよ」
「にゃ!?」
同僚は素っ頓狂な声を上げてしまう。
そう、二人が屋上から見下ろした先にはステージⅢのタイムイーターを相手に学生が戦闘していた。
「由紀、何やってるんですか! 早くあの少年を助けに行かないと!」
「う~ん、もうちょっと見てたいかな」
歩夢もここまで成長したのか、感心感心。
由紀には分かっていた。下で戦っているのは弟の歩夢だということを。目で見てハッキリと分かったが、それ以前に空気で分かっていた。
「はぁ!?」
「そうか、憶えてないか」
「何が!?」
冷静な由紀と激昂する同僚。
「一階にいる学生は歩夢だよ」
「‥‥‥歩夢君って、由紀の弟の」
「そうだよ」
少し落ち着いたようだ。
大分昔の話だが、由紀が歩夢のことを拾ってきてから四年ほど経ったころ今の同僚に、新しく弟ができたと見せたことがあった。
「でも、でも歩夢君だったとしてもステージⅢのタイムイーターは‥‥‥」
「さあ、どうかな。それを確認するには見た方が早いかな」
由紀の顔には『自信』の言葉が貼り付いていた。なんせ自身が育て上げた弟だ。負けるような柔な育て方はしていない。
「あぶないッ!」
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