第90話 不運Ⅱ
前方の視界をすべて覆いつくすほどの巨体。
どうやってこんなデカ物がここまで来たんだ? いやいや、それよりまずは応援を呼ばないと。
「兄さん無茶だよ!」
そこに4階から下りてきたルイが歩夢と止めようと促す。
ちょうど良かった、ルイに頼もう。
「ルイ! ここは俺が何とか守って見せるから、ルイと楓はシンベル学園に行って応援を呼んできてくれ!」
ルイの横に立ち、心配そうな表情を浮かべる楓に付いて行くように言う。
運よくこのショッピングモールは、シンベル学園に近い位置に立地しているので、学園の教員を呼んで駆け付けるまでに10分はかからないだろう。
「でも!」
「事態は一刻を争う!! 行け!!」
「でも・・・・・・」
「琉衣! 私は行くよ!」
楓がルイの手を引っ張る。
「ちょっと・・・・・・もう! 楓! ちゃんと掴まってね!」
「え? どういう――」
「ベータトロン!!」
その後、両足に雷光を纏ったルイに捕まった楓が悲鳴を上げて遠くの彼方に消えたことは言うまでもないだろう。
「よし、これで俺は・・・・・・ぐはぁぁッ!」
完全な不意打ちだった。
いや、この場合歩夢が注意しなさ過ぎてたのが問題なので、不意打ちとは言い難いが。
歩夢は猛スピードで壁に突っ込む。
痛ってぇ。手を振り払っただけでこのパワーは反則だぞ。
「グアァァァァァァァッッ!!」
タイムイーターは歩夢を敵と判断したのか、雄たけびを上げた後、全体重をかけて追い打ちのプレスをかました。
「ごはあぁッ!」
「歩夢兄さんッ!!」
コンクリートの壁に叩きつけられて気を失っていた歩夢は、もろにプレスの攻撃を喰らう。
内臓が破裂したような爆発音と、骨のバキバキと折れていく音が鮮明に響く。
誰もが彼は死んだ。そう思ったときだった。
「おかげで目が覚めたわ。骨折は慣れてるけど、今回のが一番痛いな・・・・・っと、いてて」
コンクリートの残骸の中から、服がボロボロになった歩夢が姿を現したのだ。
その外見はもう動けないほどの痛々しいものだったが、当の本人は体を後ろに反らせて腰の骨をポキポキと鳴らしていた。
「歩夢兄さん! さすがは私の歩夢兄さんです・・・・」
「俺の治療はあとだ! まずは一般人の治療を優先してくれ!」
「はい!」
再び優里は治療をしに戻る。
先生たちが来るまでの10分、この10分を守り切ったらあとは先生が対処してくれる。
それまでは、それまでは絶対に俺がここを守る。
だって――
「俺は人間じゃないから」
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