第9話 先輩の鬼畜稽古Ⅰ
ここは、まだ俺が入ったことのない部屋だ。
特殊訓練室、それがこの部屋の名前だ。食堂からそのまま来たから訓練中にリバースしないように頑張ろう。
緊張感を抱きながら部屋の扉を押して開く。
「・・・・・・・・・・・これが部屋!?」
俺の眼前に広がる風景は、見る者の舌を巻くものだった。
緑が生い茂り、空気が澄んでいる。
そう、俺が入った部屋には森を連想させるようなたくさんの木々が所狭しと並んでいた。
今までコンクリートに部屋しか見たことがなかったから、唖然として言葉が出ない。
「歩夢くん、こっちこっち!」
漠然とした風景にボーっとしていると、俺を呼ぶ女性の声が聞こえた。
先輩かな? ていうか、ここには先輩しか居ないか。
女性の先輩も男性の先輩もたくさん居るので、さすがに声だけでは判断できない。
取り敢えず、声のもとに走る。
「香川先輩! こんにちは!」
「こんにちは、今日はよろしくね」
声の主は香川先輩だった。
長い髪をポニーテールにして、動きやすくしている。緑の髪に緑の両眼、10人に11人が振り返る美人さんだ。
髪の毛が緑色だったからどこに居るのか分からなかったよ。―――あ、嘘です。ごめんなさい、めっちゃ分かりやすかったです。
先輩は大きく手を振って、分かりやすく場所を教えてくれた。先輩方の中でも、普段は特に優しい先輩だ。
「今回の教官は先輩なんですか?」
「そうよ、ビシビシいくから頑張ってね」
出たぁ~、香川先輩のスパルタ教育。
さっきも言った通り、普段はとても優しいのだ。しかし、訓練となると鬼教官に変貌してしまうのだ。
そんなことしたら美人株が下がってしまうと思っているが、本人に言えるはずもなく悲しいことになっている。
「この部屋ではどんなことするんですか?」
「そうね・・・・・・・・・・・説明するよりやってみた方がいいんじゃない」
マジか~、まだ何にも分かってないんだけど。
不安しかないわ。
「あの、体力重視のメニューがたくさんあるって聞いたんですけど」
「確かに体力重視ね。けど、メニューっていうのはちょっと間違ってるかな」
「どういうことですか?」
「正しくは、たくさんのメニューが詰まったレースかな」
レース? ということは誰かと競争するってこと?
―――まさか!
「この訓練では、私と歩夢くんで競争します」
はい! 知ってた~。
この瞬間、現役ハンターと現役子供のレースが始まることが決まった。
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