第83話 刺客Ⅷ
男のオリジンは自分の姿を晦ますもので間違いないだろう。
ただ、その能力は完璧ではなかった。
なぜなら――
「見えてるぞ」
姿を晦ますことはできても『気』の流れを消すことはできていなかったからだ。
運が悪かったな。
「この場におよんでハッタリか? 今時のガキは頭も悪いのかよ」
第三者から見たら、誰もいない空間から突然声が聞こえたように感じたかもしれない。しかし、俺の視界にはハッキリと、男がどこにいるのかが視えていた。
それにしても男がなかなか攻撃をしかけてこない。言葉では「ハッタリか?」と言いながらも、本当だったらどうしようなどと不安がっているんだろう。
まあ、そんなことはどうでもいい話だ。
何より、こんなことに時間をかけている暇はない。はやく終わらせよう。
「そっちが動かないんだったら、俺から行かせてもらうぞ」
「見えてないくせに調子に乗りやがって。さっさと来いよ!」
「じゃあ、失礼して――」
男が目を見開くのと俺が男の肝臓に掌底打ちを放ったのは、ほぼ同時だった。
あまりのスピードに、男は目が追いついていなかった。現に、助走の動作一切なしで約10メートルの距離を一瞬の間に詰められたからだ。
臓器を圧迫され意識を失った正隆はその場にどさりと倒れる。
「脈は打ってるみたいだから大丈夫か。さて、楓の家に戻って報告しないとな。それに、ルイの夕食も待ってることだし」
全力疾走でここに来て、そしてハンター2人を相手に戦った。
さすがに疲れた。
ゆっくり歩くか。そう考えながら入ってきた入り口に足を運ぼうとした瞬間。
ドガァァァァァァァン!!!
「ハンター警察だ!! いますぐ両手を上に挙げて、抵抗の意がないことを示せ!!」
「――!?」
後ろの方でコンクリートの壁が派手に破壊された音が聞こえたと同時に、ハンター協会を名乗る威勢のいい女性の声が聞こえる。
何だ、真打登場か!?
取り敢えずヤバいと思った俺は、両手を上に挙げてゆっくりと後ろに振り返る。
『え・・・・・?』
声が重なる。
女性が出した声は驚愕の声だ。対して、俺が出した声は嬉しさを含む驚きの声だ。
その理由は――
「これ君がやったの!? ていうか・・・・歩夢!?」
「彩菜先輩!?」
お互い知り合いだったからだ。
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