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一夜で世界が終わるとしたら  作者: 烏猫秋
第3章〜緊急事態!!〜
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第83話 刺客Ⅷ


 男のオリジンは自分の姿を(くら)ますもので間違いないだろう。

 ただ、その能力は完璧ではなかった。

 なぜなら――


「見えてるぞ」


 姿を晦ますことはできても『気』の流れを消すことはできていなかったからだ。

 運が悪かったな。


「この場におよんでハッタリか? 今時のガキは頭も悪いのかよ」


 第三者から見たら、誰もいない空間から突然声が聞こえたように感じたかもしれない。しかし、俺の視界にはハッキリと、男がどこにいるのかが視えていた。

 それにしても男がなかなか攻撃をしかけてこない。言葉では「ハッタリか?」と言いながらも、本当だったらどうしようなどと不安がっているんだろう。

 まあ、そんなことはどうでもいい話だ。

 何より、こんなことに時間をかけている暇はない。はやく終わらせよう。


「そっちが動かないんだったら、俺から行かせてもらうぞ」

「見えてないくせに調子に乗りやがって。さっさと来いよ!」

「じゃあ、失礼して――」


 男が目を見開くのと俺が男の肝臓に掌底(しょうてい)打ちを放ったのは、ほぼ同時だった。

 あまりのスピードに、男は目が追いついていなかった。現に、助走の動作一切なしで約10メートルの距離を一瞬の間に詰められたからだ。

 臓器を圧迫され意識を失った正隆はその場にどさりと倒れる。

 

「脈は打ってるみたいだから大丈夫か。さて、楓の家に戻って報告しないとな。それに、ルイの夕食も待ってることだし」


 全力疾走でここに来て、そしてハンター2人を相手に戦った。

 さすがに疲れた。

 ゆっくり歩くか。そう考えながら入ってきた入り口に足を運ぼうとした瞬間。

 ドガァァァァァァァン!!!


「ハンター警察だ!! いますぐ両手を上に挙げて、抵抗の意がないことを示せ!!」

「――!?」


 後ろの方でコンクリートの壁が派手に破壊された音が聞こえたと同時に、ハンター協会を名乗る威勢のいい女性の声が聞こえる。

 何だ、真打登場か!?

 取り敢えずヤバいと思った俺は、両手を上に挙げてゆっくりと後ろに振り返る。


『え・・・・・?』


 声が重なる。

 女性が出した声は驚愕の声だ。対して、俺が出した声は嬉しさを含む驚きの声だ。

 その理由は――


「これ君がやったの!? ていうか・・・・歩夢!?」

彩菜(あやな)先輩!?」


 お互い知り合いだったからだ。


 


 



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