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一夜で世界が終わるとしたら  作者: 烏猫秋
第3章〜緊急事態!!〜
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第80話 刺客Ⅴ


 俺とシズが屋根の上を全力疾走していたその頃、楓は男からかけられた催眠(さいみん)能力が解けて目を覚ましていた。


「ここは・・・・・・?」


 楓は見知らぬ部屋の景色に、7割恐怖、3割好奇心で言葉を発した。

 男が催眠能力を行使したのは、楓が男たちの存在に気付く前だったので、楓自身は(いま)だ何が起こっているのか理解が追いついていない。

 楓は座っている椅子から本能的に立ち上がろうとする。しかし、手首に何かが引っ掛かり椅子から立ち上がれない。


「何なのよ、これ!?」


 乱暴ではあるが、力で引っ張りその何かを離そうとするが、全く微動(びどう)だにしない。

 ――手錠までかけられて私、誘拐されたの!? 

 ここでやっと楓の理解が追いつく。

 すると、楓のいる部屋の隣から男たちの声が聞こえてくる。


「会長の娘を誘拐して、何するんですか?」

「そんなこと決まっているだろう。会長の座を退(しりぞ)いてもらうのさ」


 先に喋ったのが楓に睡眠能力を行使した男だ。その声は低音で、聞いているだけでも無意識に威圧感を感じる。

 そして、後に喋ったのは何者かは分からないが、声の高い男だ。口調と態度から見て、上司的立場なのは推測できる。


「どうやってそんなことを・・・・?」

「会長にとってあの娘は、たった一人の愛娘(まなむすめ)だ。つまり、あの娘のためなら何でもするということさ」

「さすがはバザール先輩です」

「そう褒めるな、正隆(まさたか)。本当なら金を要求したいところだが、今ここで金をもらっても仕方がない。なぜなら、僕が会長になればその後いくらでも金が入ってくるからさ」


 楓は会話の内容を聞いている内に、だんだん恐怖を(つの)らせていた。

 カシャリ。

 ――!?

 楓は不安と恐怖から体が(ふる)えて思わず手を動かしてしまい、手錠の音を鳴らしてしまった。


「起きたようですね」

「せっかくだ。会長を(おど)す前に、ちょっと可愛がってやるか」

「いいですね」


 下卑た声が聞こえる。

 男たちが立ち上がり、楓のいる部屋に足を進め始める。

 ドクドクドクドク―――。

 足音が大きくなるにつれて、楓の心拍数があからさまに上昇し、今すぐここから出たい! という強い願望が心の底から()いてくる。

 しかし、男たちがこの部屋に来るのは時間の問題だった。

 バザールが顔を見せる。


「おはよう」


 


 

 


 


 

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