第8話 空谷の跫音みたいな?Ⅲ
先輩と楽しく話しながら昼食を摂っていたその時、
「ダダダダダダダダダ!!!」
ヌーの群れが真横を猛スピードで通り過ぎて行った時のように、突風が巻き起こった。
来た! いつ見てもすごい光景だなぁ。
「おばさん! 今日何?」「おばさん! 早く俺にちょうだい!」「私にもください!」
うわぁ~、男女関係ないなこれ。毎日がお祭り騒ぎだ。
静寂な雰囲気を醸し出していた食堂が、突然な荒波が起きている。それも局地的な荒波だ。
そこに、
「ちゃんと並びなさい!!」
おばさんが一喝。
・・・・・・・・・・・今度はいきなり静かになったなぁ。
食堂でのおばさんの権力は、絶大な強さを持っていることが証明されている。
「あ、頂きます・・・・・・・・」「頂きます・・・・・・」「いつもありがとうございます・・・・・・」
「従順でよろしい!」と言わんばかりの笑みを浮かべながら、いつも通り昼食を渡しているおばさんの顔は、俺たちからしたら「これ以上逆らったら、殺される・・・・・・・!」と思わせるかのように、怖かった。
おばさんマジで強ぇ。
そんなことを考えながらも、食事の箸は止まっていなかった俺と先輩であった。
だってさあ、いつものことなんだから、いちいちリアクションしてたら疲れるよ。これは、慣れだな。慣れたもん勝ちだ。
「歩夢は午後から何があるんだ?」
「俺は特殊訓練があるって聞いてます。名前を聞いただけでも、嫌な予感がします」
「あー、確かに特殊訓練はかなりハードかもしれないな。体力重視のメニューがたくさん詰まってるからな」
体力重視・・・・・・・・・・。
聞いただけでやる気を失わせる魔法の言葉だ。何て素晴らしい言葉なんだ。ああ、素晴らしい、俺は幸せだ。
「おいおい大丈夫か?」
「はっ! あれ? 俺どうなってました?」
「気が抜けたゾンビみたいな顔してたぞ。頑張れ、立派なハンターになるには必要な訓練だ」
魔法の言葉で意識を飛ばされていた! 何たる不覚!
やるしかないのか、まあしょうがないか!
俺はついに割り切ることにした。
割り切らないとやってられないよ、こんな訓練。姉さんも超えてきた壁だ。俺はその後に続かないと。
「分かりました! 頑張ります!」
「おう! 頑張れ!」
食事を食べ終わった先輩が席を立つ。そして、俺の方に歩いてきて、
「アレには気を付けろよ」
俺の肩に手を置いてこの一言を言って、去ってしまった。
えぇぇーーー! 何なの『アレ』って!?
意味深な去り方されたんだけど。しかも、めっちゃいい笑顔で言われたんだが。
結局俺は『アレ』が何なのかも分からずに、午後の特殊訓練に向かった。
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