第70話 お泊り会Ⅱ
食事を終えた2人はある場所に向かっていた。
「こんなに家が大きかったらお風呂も大きいんじゃない?」
「そんなにだと思うけど」
ルイの質問に楓が謙遜して答える。
そう、2人が向かっているのはお風呂場だ。
長い廊下を歩いて、右に曲がったところで楓の足が止まる。
「ここだよ」
「おー、何か良い趣味だね」
お風呂場の入り口は二つあり、その両方に『ゆ』と大きく書かれた暖簾がかかっている。初めてそれを見たルイは、思わず感嘆の声をもらしてしまう。
「別に変だと思ったら、変だって言ってもいいんだよ? これはお父さんの趣味だし」
「いや、本当に良い趣味だと思うよ」
「まあ、私は子供の頃からずっと見てるから新鮮味がないんだよね」
「それはあるかも」
「話は中でもできるし、取り敢えずお風呂に入ろう!」
「入ろう!」
掛け声をかけるようにして青と赤の暖簾の内、赤の暖簾をくぐる。
「ひ、広い・・・!」
「そ、そんなに・・・?」
暖簾をくぐって最初に見えたのは、広い脱衣所だった。
ルイの家の10倍はあるよ。
これほど広い脱衣所は、銭湯や温泉にでも行かないとなかなか見ることができない。
これが財力か・・・・。
何もかもが初めて見るもので、ルイはさっきから圧倒されっぱなしだ。
「今日は何か疲れたね」
「仕方がなかったとは言え、クラスメイトがタイムイーター化して亡くなったのは、悲しいことだね・・・」
服を脱いでカゴに入れながら酸楚な話をする。
広い脱衣所に2人の女。この状況と相俟って、この話の重さを強調しているかのように思う。また、閑散とした空間にかすかな衣擦れの音が申し訳なさそうに響く。
兄さんがしたことは仕方のなかったことだ、今はそう思うしかない。ルイは何度も自分に言い聞かせた。
「先入るよ!」
「あ、ちょっと待って!」
ルイは急いで髪を結い、胸を隠すようにタオルを押さえて楓の後を追いかけた。
楓が開けた引き戸をそのまま通り、顔を上げるとルイはまたもや息をのんだ。
「凄い・・・」
「そこまで言ってくれるなら、お父さんも喜ぶだろうな」
岩や石に乗った水が反射したり、岩の窪みに水が溜まり、ポタン、ポタン、と下に落ちて、その音が共鳴しているのに、とても趣を感じる。
岩肌からはきれいな女性を想像させるような、滑らかさを感じられる。
「琉衣、それは何?」
「それって何?」
「それ、タオル」
「これがどうしたの?」
今気づいたが、ルイはタオルを持っているが楓はそんなもの持っていない。つまり全裸状態だ。
ルイは楓から放たれる視線と、脳内で考えたことを組み合わせてすべてを理解した。
「タオルは・・・・不要物だーー!!」
「助けてー!! シビルさん!!」
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