第7話 空谷の跫音みたいな?Ⅱ
スキップ気分のまま内開きの扉を押し開ける。
「おう! 歩夢じゃねえか!」
「お久しぶりです。いつの間に帰ってきてたんですか?」
何だと!? 先客がいただと!?
その先客は、1か月程前にタイムイーターの狩りを頼まれて外に出ていた男の先輩だ。
肩幅は俺の1.5倍くらいあり、身長は約2メートルのゴリゴリマッチョだ。年齢は俺より一回り多くて、頼れるお兄さんって感じだ。
ていうか、外ってどんな感じなんだろうな?
実を言うと俺は記憶のある限り、外に出たことがない。なので、このコンクリートの部屋の外に広がる世界というものに、とても興味がある。
「さっき戻ってきたばっかりだ。外で食うまずい飯より、ここの飯が食いたいからな」
「ここの食事で俺たちの体はできてますもんね」
「違いないな」
他愛もないこんな会話が俺は好きだ。
ここに住んでいるハンターは、昼食と夕食をこの食堂でとる。朝食は、無駄な脂肪がつかないように無しになっている。なので、ここに住んでいるハンターからすれば1日2食が基本だ。
「カランカラン、カランカラン。昼食の時間だよ~!」
食堂のおばさんがベルを鳴らし、昼食開始の合図を出す。
おばさんは、この食堂に20年間務めているベテランだ。実際に見たら分かるが、何かしらのオーラを放っているかのように見える。
さすがはおばさん、貫禄がすごい。
「歩夢、早く食べようぜ。早くしないと荒波に飲まれちまうぞ」
「分かってますよ」
足早に先輩の後に続き、おばさんから昼食を受け取る。食事はトレイに乗っており、きれいに並べられている。
今日の献立はさんまの塩焼き、具だくさん味噌汁、白米大盛りの3種だ。当然のことだが、毎食バランスが考えられており、健康に配慮されている。
俺たちは、食堂の入り口に最も近い部屋の端に陣取った。これは戦争のようなものなのだ。自分のお気に入りの席に座りたいならば、12時ピッタリに食堂に入る。でないと、他の人に席を取られていることが大半だ。今日は運よく人が少なかったのが救いだ。
俺は短い稽古だけだけど、先輩方はもっと苦しい特訓してるんだろうな・・・・・・・。
遠い目になりそうなのを抑えて、現実に戻る。
「最近、何か悩み事とかはないのか?」
さんまを口に入れながら、先輩が唐突の質問をしてくる。
あぶねっ! 唐突すぎて味噌汁吹きそうだったわ。
「そうですね。悩みって訳じゃないんですけど、たまに外ってどうなってるのかなって気になったりはします」
口元に垂れた味噌汁を服の袖で拭きながら、質問に答える。
先輩からのアドバイスっていうか、真面目な話を聞きたい。
「外か~。そういえば、歩夢は一度も外に出たことがないんだよな」
「はい」
「う~ん。俺からはちょっと言えないな。聞くならお姉さんに聞いてくれ」
悩んだ結果それかい!
何か先輩が話せない理由があるんだろうな。ここは、俺が下がったほうがいいな。
「分かりました」
「すまんな。俺から言い出したのに、答えれないって」
「いや、全然いいですよ。話せない理由があるのに、無理させるのも気が悪いですし」
「相変わらずいい奴だな」
「ありがとうございます」
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