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一夜で世界が終わるとしたら  作者: 烏猫秋
第2章〜外の世界を知る〜
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第62話 妹の励みⅣ


 視覚のハンデはもらっている。

 先生がルイの行動を予測するために使っているのは、おそらく聴覚(ちょうかく)が中心だろう。

 ルイは奇襲を狙うために、一度止まり先生と話をして気をそらせようとする。 


「先生の能力、一度見てみたいです」

「見てどうするんだ?」

「勉強です」

「勉強か・・・・いずれ見せることになるのだから、別に今見せても価値が下がるものではないな。特別に一つだけ見せてやろう」


 来る!

 ハンター寮で鍛えられた直感で、先生から(あふ)れる緊張感を感じ取る。


「見えたか?」

「――!?」


 先生の口角が上がったと脳が認識した時には、もう先生の姿は残像を残してすっかり消えていた。

 逆に奇襲!?

 胸の辺りに視線を落とすと、自分のものではない剣が首元にそえられていた。

 これが・・・・実力の違い・・・・。


「降参です・・・・」


 眼下の剣が下がる。

 あのスピード、まったく見えなかった。

 さらに真正面から攻撃するのではなく、後ろに回って確実を狙ってきた。

 普通に大人げない。


「勉強になったか?」

「まあ、はい」

「何だその反応は?」

「先生の動きがまったく見えなかったのが悔しくて・・・・」

「そんなのは当たり前のことじゃないか。お前が特訓してきた時間と、先生の特訓してきた時間は倍以上の差があるからな」

「能力の差ではないんですか?」


 たとえ、同じところに分類される能力であっても、能力一つ一つ性能は差があるものだ。例えば、視覚強化と真眼では同じ分類にはなるものの、能力自体の性能が天と地の差がある。

 なので、ルイはこの質問をした。

 先生は「当たり前のことを聞くなよ」という顔で答える。


「当然だ。さっき先生が使った能力はお前と同じ『ベータトロン』だからな」


 あれが同じ能力!?

 ルイには戦っている時には、到底そうは思えなかった。


「本当ですか?」

「本当だ。身体を鍛えれば身体が強くなっていくと同じように、能力も鍛えれば鍛えるほど性能を上げることができる。強くなりたいんだったら、もっと磨け」

「ありがとうございます!」

(由紀先輩に言ってもらったことそのまま言っちゃったけど、私が言ってもよかったのかな? 由紀先輩、妹さんは優秀ですよ!)

「お前たち、呆然としていないで授業に戻るぞ! 次は筋力トレーニングだ!」

『はい!』


  


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