第4話 姉さんとの稽古Ⅱ
「ストレッチはできたわね。―――じゃあ、始め!」
初めての人は、唐突に稽古が始まったように聞こえるが、これがいつもの感じだ。
理由は単純だ。いずれ戦うことになる「タイムイーター」とやらは、戦いが始まるのを待ってくれないからだ。
俺は床を蹴り、姉さんとの距離を詰める。姉さんは、それが分かっていたかのように、同様に距離を詰めてくる。
互いの足が轟音を鳴らしながら、激しくぶつかる。
普通の人だったら、痛みのあまりに声を上げてしまうかもしれないが、俺たちはそんな柔じゃない。
高密度の、硬い合金を蹴っても痛くないように、脛は鍛えられている。
「少しは強くなってるじゃないの」
「そりゃどうも!」
足を弾いて、バック転で距離をとる。
正直ちょっと骨に振動が来たけど、問題はなさそうだな。
「こっちから行く!」
ダッシュで近距離戦に持ち込む。
この稽古では、ナイフの使用は許可されている。
俺はナイフの扱いが得意な方だ。比べて姉さんは、ナイフは苦手だと言っていた。
今まで勝ったことないけど、弱点を突いたら勝機はある!
「ハンターを舐めるなよ!」
姉さんも、ナイフで戦ってくれる様子だ。
よしっ! 行ける!
ダガーを持つときの形で、ナイフを持つ。
そのままダッシュの勢いを利用して、ナイフを振る。
カンッ、という金属同士の乾いた音が響く。
もちろん、ナイフはゴム製ではない。これは、実践を考えた真剣な稽古なのだ。
「まだまだ軽いな」
「くっ・・・・!」
さすがは国家公認のハンターであり、ハンター序列3位の実力者だ。
重ねてきた鍛錬の差が、はっきりと表される。
ん~、どうしよう。
真正面から向かっても、敵いっこなさそうだし、あとは不意打ちくらいしかないか。
不意打ちにナイフを1本使ったとしても、まだあと1本服の袖に隠してある。
最悪の場合になっても、ギリギリ間に合うはずだ。
近距離からの、離れて不意打ち。
これで行こう!
「ハァァ!」
「同じことをするのか?」
姉さんは余裕の表情で、俺の攻撃を受ける。
まだだ。もっと意識を近距離に持って行かないと。
残像が残る程の速さで、ナイフを振るう。
「動体視力で、私に勝てると思ってるのか!」
スピード重視の猛攻も、完全に防がれてしまう。
しかし、俺の作戦通りだ。姉さんは、近距離戦に夢中になっている。
もうすぐ、もうすぐ・・・・・・・・・今だ!!
「ここだ!!」
バック転で距離を離して、初勝利を掴むために、手に持っているナイフを力いっぱいに投げた。
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