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一夜で世界が終わるとしたら  作者: 烏猫秋
第2章〜外の世界を知る〜
32/95

第32話 ある家では


 夜が屋根を覆って、街の明かりが目立ち始めたその頃。

 一人の小柄な少女が、暗い顔をしながらドアをノックした。


「お父さん居る?」

「楓か、入っていいぞ」

 

 部屋の中から野太い声が聞こえる。

 少女は不安を高めながらドアを開いて部屋の中に入る。

 怒られても仕方ないよね、私が主席をとれなかった訳だし。

 中には肩幅の大きいスーツ姿のナイスガイが、立派な椅子に腰を掛けていた。

 

「試験の結果のことで・・・・」

「ああ、そのことか。主席をとれなかったのだろ」

「何でそのこと!?」


 自分の話そうとしていたことを、先に言われて目を見開く。


「さっき歩夢くんから合格の電話が来てね」

「歩夢?」

「ああ、お父さんが話したことあるだろ。国内ハンター序列3位の坂口由紀に弟と妹がいるって」

「お父さんは、私が主席になれなかったのに怒らないの?」

「怒るわけないないだろ。相手は坂口兄妹だ、そうそう勝てる奴はいない」

「そんなに強いの?」

「模擬戦闘の試験見てなかったのか?」

「見てない」


 私の受験番号が500だったから、300番くらいからしか見てない。自分の試験が終わったらすぐ家に帰ったし、そんな強かった人を見た記憶がない。


「なら教えてやろう。吉川弘毅(こうき)は知っているな?」

「国内ハンター序列6位の人だよね?」

「ああ、歩夢くんはその吉川と模擬戦闘をした訳だが、何で100点満点をとれたと思う?」


 そんなの分からないよ。ただ単に強かっただけじゃないの? 私は普通に先生と戦っただけで85点をもらえたし。

 えっ? ちょっと待って。

 普通に戦って85点、じゃあ100点満点ってことは・・・・・!

 この瞬間、少女は完全に(さと)った。


「倒したの!?」


 普段は上げない大きな声を無意識に上げてしまう。

 まあそれも仕方のないことだ。入学の試験で、受験者が教員を倒すなんて前例は、まったく聞いたことがない。


「そうだ。しかも、遠距離戦ではなくて近距離戦の戦いを、実力で勝って見せたんだからな。あれにはお父さんも驚いた」

「そんなの・・・・!」


 あり得ない!


「何だ、信じられないか?」

「レベルが違う」

「そこまで自信を喪失(そうしつ)することないぞ。まあ、これから同じ学園に通うんだ。しっかり見て学んで来い」

「はい」


 話が終わって少女が部屋を出て数分経ったそのとき、少女の父の部屋で電話が鳴る。

 この番号は、ああ彼女か。仕事頼んだ覚えはないが、取り敢えず出るか。 

 

「元田だ」

「こんばんは、貫太郎さん」

  

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