第32話 ある家では
夜が屋根を覆って、街の明かりが目立ち始めたその頃。
一人の小柄な少女が、暗い顔をしながらドアをノックした。
「お父さん居る?」
「楓か、入っていいぞ」
部屋の中から野太い声が聞こえる。
少女は不安を高めながらドアを開いて部屋の中に入る。
怒られても仕方ないよね、私が主席をとれなかった訳だし。
中には肩幅の大きいスーツ姿のナイスガイが、立派な椅子に腰を掛けていた。
「試験の結果のことで・・・・」
「ああ、そのことか。主席をとれなかったのだろ」
「何でそのこと!?」
自分の話そうとしていたことを、先に言われて目を見開く。
「さっき歩夢くんから合格の電話が来てね」
「歩夢?」
「ああ、お父さんが話したことあるだろ。国内ハンター序列3位の坂口由紀に弟と妹がいるって」
「お父さんは、私が主席になれなかったのに怒らないの?」
「怒るわけないないだろ。相手は坂口兄妹だ、そうそう勝てる奴はいない」
「そんなに強いの?」
「模擬戦闘の試験見てなかったのか?」
「見てない」
私の受験番号が500だったから、300番くらいからしか見てない。自分の試験が終わったらすぐ家に帰ったし、そんな強かった人を見た記憶がない。
「なら教えてやろう。吉川弘毅は知っているな?」
「国内ハンター序列6位の人だよね?」
「ああ、歩夢くんはその吉川と模擬戦闘をした訳だが、何で100点満点をとれたと思う?」
そんなの分からないよ。ただ単に強かっただけじゃないの? 私は普通に先生と戦っただけで85点をもらえたし。
えっ? ちょっと待って。
普通に戦って85点、じゃあ100点満点ってことは・・・・・!
この瞬間、少女は完全に悟った。
「倒したの!?」
普段は上げない大きな声を無意識に上げてしまう。
まあそれも仕方のないことだ。入学の試験で、受験者が教員を倒すなんて前例は、まったく聞いたことがない。
「そうだ。しかも、遠距離戦ではなくて近距離戦の戦いを、実力で勝って見せたんだからな。あれにはお父さんも驚いた」
「そんなの・・・・!」
あり得ない!
「何だ、信じられないか?」
「レベルが違う」
「そこまで自信を喪失することないぞ。まあ、これから同じ学園に通うんだ。しっかり見て学んで来い」
「はい」
話が終わって少女が部屋を出て数分経ったそのとき、少女の父の部屋で電話が鳴る。
この番号は、ああ彼女か。仕事頼んだ覚えはないが、取り敢えず出るか。
「元田だ」
「こんばんは、貫太郎さん」
面白いと思った方は、是非ブクマ登録と評価よろしくお願いします!
モチベーションアップになります!




