第28話 入学試験Ⅸ
「さあ来い!」
(兄妹そろってバケモノ並みに強いってどういうことだよ。ちゃんと時間をとって戦いたいくらいだ)
しばらくの間、近距離戦で激しい攻防を繰り返す。
「まったく見えない・・・・」
「同じ受験生のレベルじゃない・・・・!」
「何だよあれ・・・・」
いよいよ先生の方も攻撃をしてきたな。
防御だけに専念されていたら、俺の『真眼』はほとんど意味を成さない。しかし、相手が攻撃をしてくるなら隙が絶対に生じるので、そこにタイミングを合わせて攻撃を入れることができたら、かなり優位に立てる。
先生の攻撃を防御して、手に暇ができたら攻撃を入れる。一歩も譲らないのはどちらも同じことだ。
そろそろ隙ができるとこだけど――
「ここ!」
「ッ!?」
両腕の気の流れが少し遅れたように視えたので、心窩に膝蹴りを打ち込む。
蹴りで怯んだ所に、さらに追い打ちをすると見せかけて、一瞬で先生の後ろをとる。
そっと首に手刀をおく。
「・・・・! 負けだ――」
「吉川先生のギブアップが出たので、試験終了です・・・・」
試験終了のブザーが静かな会場に響いた後、アナウンスがおどおどした声で入る。
俺は『真眼』をすぐに解除して、力の入った肩を下ろす。
こんな実践的に『真眼』使ったのは初めてだったので、とても良い経験になった。反省点もいくつかあるし、帰ったらすぐに特訓かな。
「ちょっと待て」
次の受験者の邪魔にならないように、観客席に足を運ぼうとすると吉川先生から待てがかかった。
俺はすぐに足を止める。
「何ですか?」
「お前は一体、何者だ?」
突然引き留められたと思ったら「何者だ?」って聞かれる立場になってみてよ。
めっちゃ困るから。
「普通の受験者ですけど」
「まあそうだが・・・・。一つ聞いていいか?」
「はい」
「何でお前はあそこで攻撃を入れようと思った?」
それ聞く? 聞いちゃうの?
自分の立場は教員、気になったことはすぐに知りたくなるのは分かるけど、答えられないんだよね。
「それは、言えないです」
「何故だ?」
「姉さんに口外するなって言われてるからです」
「姉さん? 妹が居るのに姉も居るのか?」
あ、これって言っちゃいけなかったけ?
姉さんからは『真眼』のことを口外するなって言われているだけで、別に姉さんのことは言っていいよね。うん、この際言った方が早いな。
「多分先生は知ってると思いますよ」
「誰だ?」
「坂口由紀。俺の自慢の姉さんです」
「・・・・坂口先輩の弟!?」
姉さんの名前を言うと、先生は顎が地面に付きそうなくらいに、口を開けてこっちを見てきた。
姉さんの存在強すぎる。
俺は観客席に移動して、ルイと試験の続きを少しだけ傍観することにした。
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