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一夜で世界が終わるとしたら  作者: 烏猫秋
第2章〜外の世界を知る〜
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第28話 入学試験Ⅸ


「さあ来い!」

(兄妹そろってバケモノ並みに強いってどういうことだよ。ちゃんと時間をとって戦いたいくらいだ)


 しばらくの間、近距離戦で激しい攻防を繰り返す。


「まったく見えない・・・・」

「同じ受験生のレベルじゃない・・・・!」

「何だよあれ・・・・」


 いよいよ先生の方も攻撃をしてきたな。

 防御だけに専念(せんねん)されていたら、俺の『真眼』はほとんど意味を成さない。しかし、相手が攻撃をしてくるなら隙が絶対に生じるので、そこにタイミングを合わせて攻撃を入れることができたら、かなり優位に立てる。

 先生の攻撃を防御して、手に暇ができたら攻撃を入れる。一歩も(ゆず)らないのはどちらも同じことだ。

 そろそろ隙ができるとこだけど―― 

 

「ここ!」

「ッ!?」


 両腕の気の流れが少し遅れたように視えたので、心窩に膝蹴りを打ち込む。   

 蹴りで(ひる)んだ所に、さらに追い打ちをすると見せかけて、一瞬で先生の後ろをとる。

 そっと首に手刀をおく。


「・・・・! 負けだ――」

「吉川先生のギブアップが出たので、試験終了です・・・・」


 試験終了のブザーが静かな会場に響いた後、アナウンスがおどおどした声で入る。

 俺は『真眼』をすぐに解除して、力の入った肩を下ろす。

 こんな実践的に『真眼』使ったのは初めてだったので、とても良い経験になった。反省点もいくつかあるし、帰ったらすぐに特訓かな。


「ちょっと待て」

 

 次の受験者の邪魔にならないように、観客席に足を運ぼうとすると吉川先生から待てがかかった。

 俺はすぐに足を止める。


「何ですか?」

「お前は一体、何者だ?」


 突然引き留められたと思ったら「何者だ?」って聞かれる立場になってみてよ。

 めっちゃ困るから。


「普通の受験者ですけど」

「まあそうだが・・・・。一つ聞いていいか?」

「はい」

「何でお前はあそこで攻撃を入れようと思った?」


 それ聞く? 聞いちゃうの?

 自分の立場は教員、気になったことはすぐに知りたくなるのは分かるけど、答えられないんだよね。


「それは、言えないです」

「何故だ?」

「姉さんに口外するなって言われてるからです」 

「姉さん? 妹が居るのに姉も居るのか?」


 あ、これって言っちゃいけなかったけ?

 姉さんからは『真眼』のことを口外するなって言われているだけで、別に姉さんのことは言っていいよね。うん、この際言った方が早いな。


「多分先生は知ってると思いますよ」

「誰だ?」

「坂口由紀。俺の自慢の姉さんです」

「・・・・坂口先輩の弟!?」


 姉さんの名前を言うと、先生は(あご)が地面に付きそうなくらいに、口を開けてこっちを見てきた。

 姉さんの存在強すぎる。

 俺は観客席に移動して、ルイと試験の続きを少しだけ傍観することにした。

 

 

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