第27話 入学試験Ⅷ
少し前のことだ。
「吉川君っていう若い子が、今年のハンター序列6位になったのよねー」ということを、姉さんが言っていた記憶がぼやっと残っている。
外見は筋骨隆々で、胴体は逆三角形をしているとも言っていたな。
・・・・・まさに今、俺の眼の前に居る人じゃないか。
「5カウントで始めます。5・4――」
カウントの音がいつもより大きく聞こえる。
俺としたことが、かなり緊張してるな。もしかして、満面の笑みでこっちを見てくる吉川先生が目の前にいるからかな?
いや、それを気にする俺が悪いんだ。無心のままで見たら問題ない。
「――3・2・1試験開始!」
先生と俺との距離は、目測約5メートル。
この距離だったら跳べる!
攻めるのは受験者側からという雰囲気があるので、俺もそれに従って攻める。
「初手は絶対に入れる!」
一気に跳んで、そのまま拳を突き出す。
くっ・・・・! やはり受け止められるか。
先生は両手をクロスして完全に受け止めていた。しかし、ダメージは流せても勢いは流せてはいなかった。
地面の土を靴の踵の方に盛り上げながら、約3メートルを勢いで押される。
(重い・・・・! あの見た目でパワー型かよ)
俺の身体は他人から見たら細く見えるらしい。
そう見えるだけで、ちゃんと鍛えてるからね。
(吉川が押されている!?)
教員席で傍観していた佐々奈先生が驚愕の表情を見せる。
確かに傍から見たら、体格のいい筋肉がこんにゃくの攻撃を受けて後退したように見えるからな。
オーディエンスの受験者も佐々奈先生と同様に眼を見開いている。
「周りの視線が気になるところだけど、今がチャンスだ」
ここが良いタイミングだと判断して『真眼』を発動する。
自分が『真眼』持ちだと言うことが分かってから、ひたすら磨き続けた。約1年の期間があったので、使いたい所で使えるようにはなった。しかし、体力の消費が激しくなるので、そこはまだ特訓中だ。
――先生の気の流れを見て、力の入り方を確認。
う~ん、このままじゃ何も変わらなさそうだし、取り敢えず突っ込んでみるか。そこで気の流れを見ながら立ち回ろう。
『真眼』が切れた後に、みんなの前で醜態を晒すのは嫌だから、まずは。
「突っ込む!」
眼を大きく見開いて、先生の気の流れを確認しながら、近距離に間合いを詰めに走る。
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