第26話 入学試験Ⅶ
「本当ですか?」
自分が優秀だと褒められて嬉しそうな表情を浮かべる。
念には念を、お世辞ではないことを確認する。
「ああ、本当だ。お前みたいな天才そうそう居ない」
「え? 私の兄が、次に戦うんですけど・・・・・・」
「兄?」
先生の思考回路が停止する。
「はい、私なんかより並はずれに強いです」
思考回路再稼働。
(はあ? さっきので十分天才の領域だって言うのに、それに並はずれだと言わせる程の実力者が本当にいるのか!?)
「先生、どうしたんですか? もうすぐ兄の試験が始まるので早く退きましょう」
「ああ、そうだな」
(まあ、自分の兄だから大きく見せたいってだけかもしれないし、まずは実力を見せてもらうか。次の相手は吉川だ。私でもたまに稽古で負ける、そう簡単には乗り越えられない壁だ)
やっと俺の番か。
グーッと背伸びをして観客席から会場に下りる。
階段が終わると、そこには俺のことを待ってくれているルイの姿があった。
「お疲れ様。しっかり観客席から見てたぞ」
「ありがとう。ルイはもう終わったけど、兄さんは今からだね」
俺の相手は吉川先生、名前から予測して性別は男だろう。
不安なのは、吉川と言う名前をどこかで聞いたことがあるっていうことだ。知っている壁なのに、視ることができない壁。不安の種が新しく生まれそうだ。
「戦いの姿を見たことのない、初対面の人と戦闘ってけっこう緊張するな」
「緊張することないよ。兄さんはルイより何十倍も強いんだから」
「それは誇張だよ。・・・・・それで、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
「さっきの試合の――」
「先生の準備ができましたので、受験番号211の受験者は会場中心に」
おい!
さっきの試合中に、先生と何を話してたかを聞こうと思ったのに!
まあ、試合が終わってからでも聞けるからいいか。
「行ってくる」
「楽しく見とくね」
「そんなに楽しめないと思うぞ」
手を振ってルイと別れて、足早に会場の中心に向かう。
「お、来た来た。お前がさっきの子の兄か、存分に楽しませてもらうぜ」
「よろしくお願いします」
何か俺の苦手なキャラの先生来たー。
お辞儀からなおり、ふと頭を上げて先生の顔を見る。
!?
――吉川って聞いたことがあると思ってたけど、今やっと理解した。
吉川先生って、今年のハンター序列6位の人じゃね!?
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