第25話 入学試験Ⅵ
「そろそろ試験に戻りませんか?」
「そ、そうだな」
(本気で戦っていいのか? 相手は先輩の妹さんなのに)
「では、始め!」
受験者側が合図を出すって、そんなことあっていいのか?
ルイは近距離戦にするために、先生の方に向かって脚を走らせる。
「・・・・・先生の動きが鈍くなってる?」
(先輩、私どうしたら、どうしたら・・・・)
絶賛佐々奈先生はパニックになっていた。
これでは本気で戦えないと思ってルイは、
「先生、真面目にお願いします。ここで合格できなかったら、姉さんに顔見せられなくなります」
こう言い放った。
先生に「真面目にお願いします」なんて言えるのって、ルイくらいの肝が据わった子じゃないと言えないぞ。
いつの間に精神面も強くなったんだ。まあいい、妹の成長は普通に嬉しい。
「分かった。ちゃんと相手をしてやろう」
(先輩の顔を潰さないためには、ちゃんと戦っていいってことだよね。先輩の妹さんの為だ、ここはちゃんと相手をしないと)
「行きます!」
細かい砂煙を上げて、ダッシュで正面から攻撃を仕掛けに行く。
様子を見るに、先生は攻めではなく完全に受けに回ったな。
(は、速い・・・・!)
先生はルイの攻撃を受けきれずに厳しい顔をする。
ルイが押してるな。先生は本気で戦ってないから、まあ当然か。
(さすがは先輩の妹さん・・・・・! 攻撃が速い・・・・・!)
今先生は、自分の実力の60パーセントでルイの相手をしている。しかし、ルイの攻撃が見切れていない。つまり、ルイは天才・鬼才に分類されるレベルの子だということを、佐々奈先生は直感的に悟った。
観客席も大分沸いてきたな。「あの子、絶対に主席決定だな」「かわいくて強い、結婚して欲しいわ」「佐々奈先生相手にあの動きはヤバすぎだろ!」など、ルイが人気者になっている。約1名聞き逃せない奴が居たのでとりあえず眼で殺っておく。
妹をやるわけないだろ!
「5分が経ちましたので、戦闘を中止してください」
試験終了のブザーと同時にアナウンスが入る。
え、もう終わり? という顔でルイがスピーカーの方に眼をやる。
5分は短かったな。
「坂口琉衣と言ったか。間違いなくお前は合格だ」
(あのまま続けていたら、絶対に私は痛い1撃を喰らっていた。こんな天才な子と会ったのは、これが初めてだ)
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