第19話 解放される
毎日が過ぎるのが、早いと感じる人は多いだろう。俺自身は毎日ほとんど同じことの繰り返しなので、過去を振り返ってみると時間が経つのは早いなぁ~ってよく思う。時間が経つのが早く感じる、これをポジティブに考えると、毎日が充実していると考えることもできる。
これを聞いて「全然、充実してねえよ!」と思った方に一言言わせてもらう。
「ポジティブシンキング! ポジティブシンキング!」
笑ってくれたかな?
もし、笑ってくれたのなら君は幸せものだ。
まあそんな話は端に置いて、今日は初めて外に出る記念の日だ。
「ちゃんと礼儀正しくしてくるのよ!」
「分かってるって」
「それ言うの何回目?」
俺たちのことを心配して、注意してくれるのはありがたいことなんだけど、姉さんの息が熱い。
近すぎだって。
大体の荷物は全てあっちの家に送られているそうなので、ほぼ手ぶら状態で外に出ることになる。途中で手持ち無沙汰になるのは嫌だが、そこは考えて何とかしよう。
「そろそろ時間だよ」
「いよいよね」
「いざとなると緊張してきた」
「何でアユが緊張するのよ。胸張って出ていきなさいよ」
「そうだな! 胸張って行こう!」
ドンと胸を叩いて、気合いを入れる。
入学試験は明日なので、最悪明日に出ても間に合うが慌てて行くよりも、気持ちを落ち着けて試験に向かう方が良いのは分かっている話だ。
あと、筆記試験の『心身学』の復習もしておきたいしな。
「じゃあ、行くね・・・・・・」
バイバイの手を上げようとしたら、姉さんが膝を曲げて俺とルイをまとめてギュッと抱きしめた。
本当に過保護な姉さんだな。
まあ、強い姉さんが居るから安心して過ごせるんだけどさぁ。
「行ってらっしゃい」
優しく耳元で言われる。
息にビクッと身体が反応してしまう。
こそばいからやめて~。
しばらくして、姉さんが抱擁をやめて立ち上がる。
「私の姉弟ってこと、忘れたら承知しないわよ~」
「そんなこと分かってるよ」
「姉さん、時間時間」
「あっ、ごめん。さあ行って行って」
時間を見ると、予定出発時間から30分が経っていた。
さっきから心臓がドクドクしているので、深呼吸で心を整える。
ふぅ~、じゃあ。
『行ってきます!』
笑顔を咲かせて、俺たちは外の世界に足を踏み出した。
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