第15話 歩夢の初耳Ⅱ
姉さんの部屋は俺の部屋の隣の隣だ。
なので、自室に戻るついでに寄ることもできる。
姉さんの部屋が隣の隣なら、隣の部屋は誰なんだと思う人に一応紹介しておきたいと思う。
俺の隣の部屋は『妹』の部屋だ。
妹の名前は、坂口琉衣。俺と姉さんはルイって呼んでいる。
歳は俺の1つ下なので、俺からしたらかわいい妹だ。たまに会ったときは甘えてくるので、できるだけ甘くしている。
いや、訂正だ。
甘くしてしまうのだ。兄として全力でサポートしてあげたいと思っているからこそ、ルイが普段頑張ってるなと思うと甘くしてしまうんだよ。こればかりは仕方がない。
末っ子にはつい甘くしてしまうという体験をしたことがある人は、俺の言っていることを理解してくれるだろう。頼みます、理解してください。
妹の部屋の前を通り過ぎて、姉さんの部屋の前に着く。
「姉さん、歩夢だよ」
「入って」
声を掛けるとすぐに声が返ってきた。
扉を開けて部屋に入ると、姉さんが軍服の制服を着て椅子に座り、片手でコーヒーを飲んでいた。
いつ呼ばれてもいいように制服で1日を過ごす。ハンターの鑑だ。
大人の女性感が溢れ出ているなぁ。
「そこに座って」
「うん」
椅子の正面にあるベッドに腰を下ろす。
「ふぅ~、脚が重い」
いつも以上に身体に疲労感を感じる。
特に脚だ。特殊訓練のすべてのメニューで激しく使ったから、明日は筋肉痛がすごそうだ。
「今日は特殊訓練で真凛ちゃんに扱かれたんでしょ」
「何であんなに普段と性格が変わっちゃうのかな、先輩は」
「そこがチャームポイントなんじゃない?」
「どこが魅力なの!? 魅力だとしても悪い魅力だからね!」
「おっ、そんなこと言っていいの? 明日真凛ちゃんに言っちゃおっかな~」
「やめてやめて! ごめんなさい、全力で謝罪します!」
「それでよし。・・・・・じゃあ、そろそろ本題に入ろっか」
声のトーンが変わり、まったく違う雰囲気をつくりだす。
ここからは真剣な話だ。真面目に聞くのが礼儀だ。
「もうすぐで15歳になるでしょ」
「うん」
「そこで、アユには外の世界を知ってもらいたいと思ってるの」
「外の世界・・・・・・・」
無意識に小さな声で呟く。
気付いたら目線が少し下がっていた。急いですぐに顔を上げて、姉さんの話を聞く。
「学校は分かる?」
「自分と同じような人と、互いに能力を高めあう施設みたいな?」
「そうそう。まあ、アユの場合は特殊で物心ついた時からここに居るでしょ?」
「そうだね」
「普通の子は、小さい頃から学校に通って社会に出るって感じなんだけど。アユはその逆って言ったらおかしいか、とにかく来年から外の世界に出てみないかって話。そのことに、アユはどう思う?」
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