第14話 歩夢の初耳Ⅰ
「みんな聞いて聞いて! 歩夢くんがまさかの真眼持ちだったの!」
「えっ!? マジか!?」
「詳しく聞かせてくれ!」
「俺にも俺にも!」
時刻は7時ごろ、夕食をとるために多くの先輩方が食堂に集まっている。
そこで、ひと際大きな声で喋りだしたのが、香川先輩だ。
何だか自分の秘密が暴露されてるみたいでムズムズする。食事がまともに喉を通らない。
「アユ、聞いたよ。真眼の話」
ここで現れた奇跡の救世主。
この声は!
「姉さん! 今日はもう仕事ないの?」
「ないよ」
「だったら、聞きたいことがあるんだけど」
「その前に! 私からも聞きたいことがあるんだけど」
「あっ、ごめん。姉さんからどうぞどうぞ」
「ありがとう。さっきも言ったけど、アユの真眼の話なんだけど」
「うん」
姉さんが真剣な顔に変わる。
周りの声は相変わらずうるさいが、俺と姉さんの空間だけが隔離されたかのように静寂な雰囲気を醸し出していた。
「まず、真眼持ちだってことはあまり口外しない方が良いわ」
「それは先輩にも?」
「いや、もう明日の朝には真凛ちゃんが、みんなに言ってるだろうからそれは仕方ないわね」
香川先輩の本名は香川真凛。
見た目通りの可愛い名前だ。キラキラって感じだな。
「じゃあ、口外するって誰にするの?」
「それはここじゃ言えないから、後で私の部屋に来て」
「分かった。ちょっと時間置いてから行くね」
「よろしく。夕食が終わったら、すぐ来ていいよ」
「了解。じゃあまた後で、バイバイ」
「バイバイ」
まだ俺は食事をしているので、先に姉さんが食堂を出る。
姉さんの部屋かぁ。多分だけど、今俺が14歳だから入るのは3年振りくらいか。
知りたいことは早く知りたい、そう思うのは皆同じだろう。
だけど、早く行って迷惑かけるのは申し訳ないし、ゆっくり食べるか。
ちなみに今日の夕食は豚の生姜焼き、サラダ、大盛りご飯だ。
みんな訓練で疲れているから、夕食はいつもスタミナが付く食事になっている。おかげさまで、明日も頑張ろうと思える。
おばさんが居なかったらどうなるんだよ、俺たち。
マジで感謝だな。
いつもおいしい食事ありがとう。
「うまっ!」
生姜焼きを口にして放った言葉がこれだ。
白米に箸が進む。
食べる順番はサラダ、生姜焼き、ご飯の順だ。
血圧を気にして食事をしている。ハンターにとって体調は最も大事なものの1つだ。
と言っても俺はまだハンターではないが・・・・・。
「ごちそうさま!」
よしっ! 行くか!
食事を終え食堂を出て、俺は姉さんの部屋に足を運び始めた。
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