第13話 先輩の鬼畜稽古Ⅴ
もうゼロ距離だ、さすがにこれは入っただろ。
「ハァ!」
「それじゃまだ遅いよ」
!?
突然のことだった。
余裕を見せていた先輩の身体が、少し後ろに引いたように見えた。
勢い余って、前のめりになりバランスを崩してしまう。
先輩は!? どこに行った!?
「目の前にいるよ!」
すぐに顔を上げたときに、肌色の何かが眼前に現れる。
・・・・・・・これって先輩の拳!? ヤバい! 避けないと!
しかし、手遅れなのはもう分かっている話だった。
「・・・・・・!」
何だこれは!? もしかしてこれって、先輩の身体の中?
何か赤いものが身体を循環してる・・・・・・。
と、そんなことを考えていると先輩の拳が目と鼻の先に近づいていた。
そこで俺はある賭けに出た。
俺は―――。
「避けない!」
「・・・・・・!」
先輩の拳は俺との距離約2ミリの所で止まった。
その勢いで風が起こり、髪の毛が後ろに流れる。
さすがはパワー型だ、風の勢いがすごい。
「何で今の攻撃、避けなかったの?」
手を下ろして、不思議なものを見るような顔で先輩が俺を見る。
そんな顔で見ないで。恥ずかしいから。
俺はちゃんと理由があって避けなかった。
「それは、先輩のお腹に力が入ってなかったからです」
「どういうこと?」
「本当に俺のことを攻撃するなら、無意識にでもお腹に力が入りますよね」
「そうね・・・・・」
「けど、さっきの攻撃の際、先輩のお腹に力が入っていないのが視えたので」
「視えた?」
「はい。身体の中を循環する赤いものが・・・・・」
「ちょっと待ってね」
「はい」
マジでよく分からないんだよな。突然視えたからなぁ。
何か心当たりがあるのか、先輩が考えるポーズをとりながら30秒が経ったその時、
「真眼!!」
いきなり俺の知らない単語を大声で叫んだ。
!? 耳痛いよ。
「びっくりしたぁ~。真眼って何ですか?」
「歩夢くんは赤いものが視えたんでしょ?」
「はい、そうです」
「それは『気』って言うの」
「よく分からないです」
「まあ、それも仕方ないわ。真眼を持つ人は世界で1パーセント未満って言われてるからね」
「1パーセント未満!?」
「かなり珍しいわね」
「俺はどうしたらいいんですか?」
「どうするもこうするも、まずはみんなに報告ね。さあ、帰るわよ」
俺は先輩に手を引かれながらこの部屋を後にした。
あ、今気づいたけど、『アレ』って決闘のことだったのかな?
いざ戦うとなったら、さっきまでの疲れって感じないものなんだな。
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