第12話 先輩の鬼畜稽古Ⅳ
「ここでは、私と1対1の決闘をします。ラストのメニューだから、頑張って戦ってね」
「決闘!? それって、殺し合いってことですか?」
「いやいや、そんな大層な決闘じゃないよ。それに、歩夢くんには死なれちゃったら困るし・・・・・姉さんが黙ってないだろうね。―――ということで! 早速始めよう、決闘擬きの戦いを」
「―――分かりました」
ここの天井は、ドーム状になっていてドームの欠けている部分からしか光は入ってこない。
地面は約20×20メートルの長方形だ。そのほとんどは石でできていて、石と石の間からは雑草が生えている。
長い間あるのか、何だか歴史を感じるな。
と、そんなことを考えていると、
「じゃあ、始め!」
始めの合図が先輩からかかった。
いきなり始まるのはもう慣れたもんだな。
先輩と俺との距離は10メートル、先に仕掛けてくるのは先輩だろうから、まず俺は受ける。
「受けでいいのかしら!」
バキッ!
あ、やべっ、骨折れてないよな・・・・・・。
「まだまだ!」
バキッ!
攻撃が重い・・・・・!
後ろに後退して、追撃されないように距離を空ける。
「骨大丈夫か?」
軽く両手を振って痛みを確かめる。
「折れてはないみたいだな。けど、めっちゃ痛い・・・・・・」
折れたときのような激しい痛みはしないが、力を入れるとひじの辺りが痛む。
香川先輩とは一度も手合わせしたことないから、さっきのは初見殺しだな。危うく腕を持ってかられるところだった。危ない危ない。
「先輩ってパワー型だったんですね」
多分俺の予想だけど、服の上からは見えないが中の筋肉はめっちゃ鍛えられてそうだ。
それとも、生まれつきムキムキ? ってそんな訳ないか。
「そうよ、見た目通りで驚いたでしょ」
「いや、全然見た目通りじゃないですよ! 俺の中で先輩は華奢な美人さんってイメージですから」
「それは嬉しい誉め言葉ね。けど、訓練の手は緩めないよ」
くそっ! そんなにうまくはいかないか・・・・・・。
けど、本当に美人さんだとは思ってるよ、マジで。
「そんなパワーはどうやって手に入れたんですか?」
「あー、それは由紀お姉ちゃんに聞いて。私の口からは言えないかな」
何だよみんな揃って姉さんに聞けって。
この訓練が終わったら絶対に聞きに行ってやる。姉さんが忙しかったら、無理だけど。
「それだったら、もういいです!」
「ひどい! もしかして私、嫌われちゃった?」
相変わらずの余裕っぷりだな先輩は。俺が突っ込んで行ってるっていうのに。
先輩の無防備な胸のあたりに、俺は拳を放った。
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