第10話 先輩の鬼畜稽古Ⅱ
赤い線の引かれたスタート地点に並ぶ。
レースのコースが一直線上になっているわけもなく、前に見えるのは木の壁だけだ。
「目の前にあるのが1つ目のメニューですか?」
「そうよ、壁上りね」
「え!? あれを上るんですか?」
「そうだけど―――」
まさかのまさか、目の前の視界を塞いでいる木の壁は上る用だった。
目測で軽く見ても、10メートルは下らないだろう。
あんなのどうやって上るんだよ。
「そろそろ始めてもいい? この訓練は時間が掛かるから」
「始めますか」
気が乗らないが、やると決めたんだ。
先輩の姿が見えなくなったらそこで終わりだ。なんせ、コースがまったく分からないからな。
意地でも付いていく。
「じゃあ、位置について・・・・・・ゴー!!」
先輩の掛け声で走り始める。
先輩はスタートダッシュの勢いで地面を蹴り、軽々と約10メートルの壁を飛び越えてしまった。
「それは聞いてないよ・・・・・・・・」
砂塵に眼を瞑りながら、俺も地面を蹴る。
ドンッ!
見事、5メートルの所で壁に阻まれる。
「痛いなぁ~」
少し赤く腫れた鼻を触りながら、悔し気に呟く。
今頃先輩はどうしてるんだ? ダメだダメだ、そんなことを考えている暇はない。早くこの壁を乗り越えないと。
「今度は・・・・・・・・・!」
リズム良く壁を蹴り上がる。
壁の角度は90度、直角だがそこまでの問題ではなかった。
「先輩は・・・・・・・・・・・・・居た!」
10メートルの高さの位置から先を見据えると、全力疾走している先輩の姿がすぐに見えた。
スピードは自信があるので、見失わないようにすぐに走る。
「え? 木の中に入った?」
後ろ姿を追いかけていると、先輩が突然右側のの木に飛び移った。
?マークを頭に浮かばながらも、俺も木に飛び移る。
「これは初めてじゃないの?」
「見たことないです。おっと、あぶなっ!」
「ふふっ、頑張って追いつくことね!」
次の木へ華麗に飛び移っていく先輩の後姿を見ながら、落ちそうになりながらも頑張って付いて行く。
こんなの人じゃないじゃん。
くそっ・・・・・・・! もう大分体力持ってかれてるな・・・・・・・・。
木の幹から生えている太い枝をガッチリ手で持って、遠心力で次の木に移る。これを繰り返して、先に進んで行く。
さっきまでは、木で視界が遮られていたが、進んでいる内に視界が広くなっていった。
そして、その先に見えたのは、
「次は川を渡るの!?」
青く澄んだ、湖とも言えそうなくらい大きな川だった。
面白いと思った方は、是非ブクマ登録と評価よろしくお願いします!
モチベーションアップになります!