表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/9

第7話(パーティと職業などについて)

 俺達を追いかけてきた、玖瑠美と遥香の目的は、どうやら俺達とパーティを組みたい、そういったものであったらしい。

 どうせなら集団で組んで戦闘をした方が生き残る確率が増えるし、それならば知りあいと組んだ方がいいだろうと考えたらしい。

 だから名前を表示されたのは彼女たちにとって好都合ではあったらしい。


 といった説明を遥香がしてから、


「ただ、『女子の制服』の願いを選んでいたら、この場で即座に抹殺していた所だけれどね」


 と言って朗らかに最後に付け加える。

 だがこの軽い感じが何というか、本当にそう言った目にあわせようとしていたんだなと思い、俺と義典は震えた。

 きっと玖瑠美も女子の制服を俺が選んだなら真っ先に生まれてきたことを後悔するレベルの攻撃をされてしまうのかと思ったが、先ほどの会話だと何か違和感があり……よく分からないが、完全に俺をそんな変態と疑ってはいないようだった。


 むしろただ単にパーティを組みたいだけらしい。

 よかった、と俺は思いつつそして、一緒にパーティを組むことでもう少し公、友達以上恋人未満の関係をランクアップできないだろうかと思う。

 だがそこですぐに気付く。


 俺は、俺の願いを他の同級生達に知られるわけにはいかない。

 すべてを隠すために俺は……途中で玖瑠美をかばって体力的な意味で死ぬ形で退場しようと思った。

 うん、この方法ならば、少しぐらいは玖瑠美の好感度があげられるかもしれない。


 素晴らしいアイデアだと俺は心の中で自画自賛した。

 と、そこで遥香が、


「じゃあ、この四人でパーティ登録をしていいかな?」


 そういった所で俺も含めて全員が頷く。

 それからパーティ登録を行うよう設定をしてから、俺たち四人は手を重ね合わせて、


「「「「“私たちのパーティに祝福を!”」」」」


 そう同じ言葉を口にする。

 この音声入力と設定で、パーティのメンバーが設定されるのだ。

 ぴろぴろといった電子音が響いて俺たちの名前表示がカタカナになる。

 

 それも苗字の部分が消えて名前の部分だけだ。

 代わりに苗字があった部分には、星のようなマークが現れる。

 どうやらこれが俺たちパーティメンバーの印らしい。


 今後はどうなるか分からないが、今回のテストプレイの範囲ではパーティが発生するとそのパーティごとにマークが配られるらしい。

 どんなマークになるのかはランダムだそうだが、今後どのようにこのマークを運用していくかは未定であるらしい。

 場合によってはなくなるそうだ。


 それらの注意事項は一番初めの方のチュートリアルのあたりで大まかな説明の時に言っていた気がする。

 ちなみにこれには特に意味がないらしい。

 防御力が強くなったりといった特別な効果もないそうだ。


 といった内容を思い出しているとそこで遥香―ーハルカが、


「これでパーティはくめたね。これで相手との情報交換はできたかな」

「そうだな。って、ハルカはNINJAだったのか?」


 そこでハルカの職業部分を見て驚く。

 書かれていた属性はNINJAだったからだ。

 だが格好はといううと、忍び装束で体中を覆ってはおらず……首元がスカーフで覆われていたり、背中に細身の……よく見ると日本刀を持っていたり、腰のあたりにベルト付きの茶色い刺繍の入ったポシェットがついていて、下着かと見まごうようなジーンズにニーソといったような露出度の多い服装だ。


 ちなみに胸も大きい。

 現実世界の数倍はあるだろう盛り具合だ。

 ただそれを言ってしまうと玖瑠美――クルミも二倍くらいの大きさになっているが。


 そのあたりのお話は置いておくとして、と思って俺はキャラクターを作るときの出来事を思い出す。

 このゲーム内ではテストプレイのため、選べるものは比較的少なく設定されていた。

 初めの素体は、髪の色や目の色、顔の形、目の形はある程度自由に選べるものの種族はというと、計五つほどある。以下の五つだ。


--------------------


・人間(光、闇の二タイプ。男女選べて、選んだ職業などにより、他を凌駕する場合がある。)


・エルフ(光タイプ。男女選べて、初期値が基本的に高い)


・ドワーフ(闇タイプ。男女選べて、初期値は一部が高く、その後の装備などによって能力が大きく変化する)


・亜人(光、闇の二タイプ。男女選べて、うさ耳猫耳犬耳狐耳オオカミ耳の五つから選べる。各々の個性に基づいた特殊能力がランダムにつけられる)


・おっぱい星人(公式ネタキャラ。女性のみ。胸に関する特殊能力を持ち、この中で一番高い基礎能力を持つ。育ててもあまり能力が増えない代わりに、威力がけた違いに上がる)


------------------


 但し一度決めたらそれ以降変更できない仕様だったので、スマホゲームのように良い物が出るまでリセマラ(リセットマラソンの略。良い物が引けるまで、ゲームをはじめからやるのを繰り返す)をする事が出来ないようになっていた。

 代わりに経験値をためていくと別の能力など色々なものが手に入ったり、称号がつけられた、別存在になってしまったりといったものはあるらしい。

 それにより初期の能力とは大幅に変化してしまうのだそうだ。


 ちなみにそれらは遭遇してからのお楽しみとの事で、俺達にはまだ明かされていなかったりする。

 といったふわっとした説明で俺達はゲームをさせられていたりするわけだが、そこでクルミが、

 

「でもおっぱい星人をタツヤが選ば無くてよかったよ」

「……あれを選ぶのは猛者だろう」

「そ、そうだよね。ほら、前にタツヤ、他の男子と「おっぱい」の話をしていたから……そういうものなのかなって」

「……」


 俺は沈黙することしかできなかった。

 一体どこで聞かれたのだろうか?

 女の子の前では一応気を付けていたというのに。


 俺は何となく、今すぐここで体力がゼロになってもいいかな、という気持ちになった。

 するとハルカが、


「でもクルミは、普通にタツヤが人間男性キャラでよかったわね。できればそうであった方がいいといっていたし」

「ちょ、ハ、ハルカ……」


 焦ったようにクルミはにやにやしているハルカに言う。

 どうやら俺に伝えられたくない何かがあるらしいが一体何なのだろう?

 そう俺が首をかしげているとそこでハルカが、更に俺を楽しそうに見ながら笑い、


「それで、タツヤの職業は、普通に魔法戦士を選んだみたいね」

「あ、ああ……魔法戦士だと、どんな武器でも使えるし、魔法もある程度幅広く使えるから……特別な装備がないと強力な攻撃なり魔法も使えないが、広く浅く何でもできる方が、テストプレイ期間が短いから有利だと思ったんだ」

「なるほどね。確かに私のNINJAだとそのあたりは制限がかかるかな?」


 俺の答えにハルカが頷く。

 俺たちの選べる職業は、まだまだテストプレイであったのでそこまで多くない。



・魔法戦士(魔法と武器を幅広く使える。代わりに特殊な武器等を手に入れないと強力な技が使えない)

・魔法使い(魔法全般が仕えるが、杖や魔導書といった魔法関係の道具しか装備できない)

・NINJA(めっちゃ強い。人間かどうか怪しい)

・僧侶(回復や、敵の弱体化など補助的な能力を持つ)

・村人(生産職系は全部これ。食事から鉱物採取まで全てをこなす万能型。ただし防御力が弱く、強力な力を持つ武器を装備できない)

・おっぱい星人(但し種族をおっぱい星人にしたもののみ)


 といった形だ。

 これらの職業と先ほどの種族を掛け合わせて、より強力なものになったり色々するのである。

 また装備も実はエルフを選ぶと弓が中心の物しか選べなくなったり、NINJAを選ぶと日本刀といった装備しか選べなかったりといった制限があるらしい。


 まだすべてを実装していない段階で、選べるのもそれぐらいではあるが……十分キャラクターの作り込み要素がある。

 そう言ったわけで俺は、他のキャラクターを見てみると、


「クルミは僧侶なのか」

「う、うん。だって、タツヤが怪我したら大変だし、だったら癒してあげたりできるような僧侶がいいかなって」

「でもクルミも戦闘キャラで戦いたいって言っていなかったか?」


 そう俺が聞くと、なぜかクルミは顔を赤くして、


「た、確かにそうだけれど、回復しながら戦って攻撃すれば、最終的に無傷で敵を倒せたりするし、それに道具があれば戦えるからいいかなって。補助魔法では相手も倒せるし」

「そうなのか。そういえば僧侶が装備できる武器って、何なんだ?」

「モーニングスターと機関銃」

「……何かがおかしい気がするが、モーニングスターって、あれだよな? とげ付き鉄球に鎖がついて、その端が棒になっているという」


 そう俺が言うとクルミが頷いて、


「なんでもぐるぐる回転させていくと、その分遠心力がかかってくるので強力になる設定だとか」

「そうなのか。でも俺はそっちよりも機関銃の方が気になるが……いや、深く考えるのはよそう。そもそも機関銃は特殊なアイテム二分るされていたから、初期の装備で運がよくないと引けないよな?」


 俺が初期に選べる武器として表示されたものを思い出しながら言う。

 持っていけるのは三つまでということで選んだが、薄く表示されているものは選べませんといった注意書きがされていて、そのうちの一つが機関銃であり、俺の表示では薄く描かれていて選べないようにされて、また、レアアイテムの表示がされていた。


 ちなみに、他のレアアイテムを俺はひとつひいていたりするが、現状、途中でフェードアウトする予定の俺は必要のない代物になってしまっていた。

 と、そこでクルミが、


「でも銃弾は補給しないといけないのよね。その分の費用を考えると、そう簡単には撃てないかも。いざという時に弾切れをすると困るし」

「なるほど。そうなると……銃弾くらいなら作れ手材料を手に入れやすい、“村人”がいるとよかったな」

「そうだね。やっぱりパーティを組むことを前提にこう言った職業って決められているのかな?」

「それはありそう……って」


 そこで俺は義典――ヨシノリが申し訳なさそうに手をあげているのに気付く。

 どうしたのだろうか?

 そう俺が思ってヨシノリに、


「何か言いたいことがあるのか?」

「え、えっと、僕、“村人”を選択しました。生産系の職業なので……」

「それは俺達に好都合だが、“村人”だと、僧侶よりもさらに戦えないんじゃないのか?」


 そう疑問に思って俺が聞くとヨシノリが、


「それはそうなのですが、実は村人がそんなに攻撃力などがないのは知っていたのですがその……僕の選択した、“亜人”の能力の一つに、“最終形態猫パンチ(あるてぃめっとねこぱんち)”というものがありまして、敵に使うと絶大な攻撃力を持って、体力と魔力を削り、味方につかうと魔力と体力が回復し、蘇生までこなすという僕固有の技なのです。一回の戦闘での使用制限が20回までとなっていますがこれさえあれば生産職な村人でもいいかと思って」


 そう言ってヨシノリは笑ってから、


「ですからちょっとした消耗品なら全部僕にお任せください。すぐに補充して見せますから。材料を見つけ易い能力もありますし」


 と自信満々に俺達に向かって言う。

 猫耳が動いていて、こうやって見ていると……中身が男だというのを忘れそうになるのが何となく怖い。

 これがきっと巷でいう、ネカマに騙されました、みたいなことになるのだろう。


 そう俺は思っているとそこでハルカが、


「これでだいたいの自己紹介は終わったかな? 能力紹介も終わったしパーティも組み終わったし、他にすることはもうなかったかな? だったらこれから移動したりして魔物を狩ったり、敵となるクラスメイトを倒しに行くけれど」


 そうハルカが言い出して、後は武器などは実践を通して知っていけばいいか……とい俺が一人納得しているとそこでクルミが近づいてくる。

 何となくだが真剣に思い悩んでいるように見えるがどうしたのだろうと思う。

 俺が少し困惑しながらクルミが何を言うかを待っているとそこで、意を決したように俺の方を見て、


「タツヤ、あのね、私、タツヤに“お嫁さん”にして欲しいんだけれど、いいかな?」


 などと、俺が凍り付くようなことを口にしたのだった。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ