第4話(どうやら追ってきたのは知っている人物だったらしい)
なぜか俺の方角と一緒に逃げていく可愛い系女子。
猫耳がついていて髪も長くてレースが付いた可愛い服を着ている。
きわめてあざとい格好だが、こうやって逃げ出している状況を見ていると中身は男なのだろう。
俺からすれば、どうして女キャラを男がわざわざ選ぶのかがよく分からなかったが、以前何かでネットで見た内容で……確かに自分が男だから男を選ぶ、女にTSしたいわけではない、という意見と共に、どうせなら可愛い女の子が見たいんだ、男などいらない、という二つの意見があった。
どちらももっともだと思った記憶がある。
などと考えながら俺達は必死に走って逃げていた。
後ろの方では約二名ほどの女性キャラ……おそらくは中身も女性なのだろう、二人の人物たちが俺達を追ってきている。
キャラクターの初期性能のせいだろう。
走る速さがやや俺達よりも早い。
一応は経験値などをためて成長をしていくとそう言ったさも埋めることはできるが、ゲームが始まったこの段階では各々の初めに選んだキャラの性質が一番影響が出る。
などと考えつつも、かといって今更逃げないで立ち止まるなどという選択肢を選べない俺はただひたすらに走っていた……のだが、そこで、背後で地面をける音がする。
同時に何かが頭上を飛びあがり俺たちの前方に降り立った。
そこには先ほど追いかけてきた女の一人がかがむように着地するも、すぐに立ち上がり、俺達に向かってナイフを見せつけながら、
「手をあげて降伏しろ!」
「「はい!」」
俺と俺の隣にいた少女が悲鳴締めた声をあげて、手をあげようとした。
だがそこで俺は気づく。
名前さえしられなけれ逃げ切れるのではないかと!
だから慌てて名前欄に手を添えて見えないように努力をしたが、
「名前、見えているわよ?」
「え!」
「藤居辰也。あ~、辰也だったんだ。私、私、今朝も話した大宮遥香」
「え!」
そこでよく話す友人の女子、大宮遥香だったらしい。
まさか友人に真っ先に目をつけられて、体力的な意味で殺されるようになるとは、と俺が思っていると、
「それでそっちは辰也だってわかったけれど、もう一人の女の子キャラは誰? 逃げたから男だと思うけれど」
そう聞いてくると、その可愛い猫耳少女は観念したように、
「僕は小原義典です。今朝、遥香さんや辰也と、あと ……」
といった自己紹介をしようとしたところで、後ろから追いかけてきた女性キャラがようやく俺たちの所に追いついた、
「はあはあはあ、ようやくたどり着いた。まったく、突然逃げ出すんだから、辰也は」
「え?」
「ほら、私。幼馴染の平見玖瑠美だよ。全然気づかないし」
怒ったように玖瑠美の女性キャラが言ってくるが俺としては、
「……真っ先に倒されそうになっている状況でそこまで確認できないだろう」
「あ、うん、それもそうだね」
俺が突っ込みを入れるとすぐに納得してもらえた。
よかったと俺が思っているとそこで、玖瑠美が言いよどむように口をつぐんでから、意を決したように、
「それで、私、辰也に聞きたいことがあるんだけれど……」
「なんだ?」
「……辰也が『女子の制服が欲しい』って書いたの? だからあの場から逃げたの?」
そう、幼馴染で片思い中の玖瑠美が、俺に聞いてきたのだった。