第2話(名前表示展開)
「男子を全員抹殺すれば、叶わないわね」
恐ろしい言葉を口にしたのは、弓を使う戦士の女性だった。
耳がとがっているのでエルフを選択して体を作ったのかもしれない。
確かに金髪の長い髪に青い瞳で白い肌、しかも背が高いとなると女性から見ても魅力的な女性像になるかもしれない。
だから中身は女性なのだろう。
ちなみにこのゲーム内では自分の本名を言うのは許されている。
もっとも嘘をついても、OKではあるらしい。
実際のゲーム内でのなりすましなどを見抜ける物なのかどうかも確認して今後の対策に役立てるそうだ。
とはいえ、この女子の制服が欲しいなどという、一瞬期の迷いで描いてしまいそうな気持はわかるもののぜったいに口に出してはならないような発言をしたせいで、名乗った瞬間に男だと気づかれて、このままでは女子全員に袋叩き似合う。
どうするんだこの状況、そう俺が思っているとそこで剣を持っている女性キャラの一人が、
「でもどうする? ここ見回してみると……やけに女性キャラが多くない?」
そう弓を使うエルフの女性らしき人物に、言うと、その弓使いエルフキャラは、
「そうね。確かに3/4近くは女性キャラ、明らかに男が女性キャラに成りすましているわね」
「うん、それにその中で女子だって男性キャラを使ってるかもしれないし、そうなると……」
「しかも聞きだしたからと言って本当のことを言っているか分からない。となるとやっぱり男性キャラを一人ずつ、“殺して”行くのが効果的ね」
と、物騒なことを口走る。
それを聞いていて俺は、自分が男性キャラを選んだことを思い出した。
やっぱり自分が男性なのもあり、選ぶなら男性キャラだろう、と思ってこれを選んだのだが……まさかこんな所で裏目に出てしまうとは。
今のうちにこっそり逃げた方がいいだろうか?
いや、今真っ先に逃げたなら目立ってしまう。
しかも真っ先に逃げればその、『女子の制服が欲しい』と言い出した変態だと思われて一斉に攻撃されてしまうだろう。
「どうしようどうしようどうしよう」
俺のすぐそばにいるどちらかというと背が低めの可愛い女の子キャラが、体を震わせながら……しかも顔を青くして(このゲームは言葉から表情を推察して作ったりできる)、俺の心を代弁するかのような言葉を繰り返し呟いている。
そしてこの言葉から推察するに、彼女は中身が俺の同級生の男なのかもしれない。
そう俺は思ったのもつかの間、すぐにこの危機的状況をどう打開するかについて考え始めるも……思いつかない。
だが現在の所、俺が男だということはまだばれていない。
いざとなれば色々と言い訳をして、女の子のふりをするしかない。
もしくは徹底的に防戦をするか。
いや、でも勝利者にならないとという野望はそこまでは強くないので、商品は欲しいが早目に倒され……て……。
そこまで考えた俺は、先ほど自分が何を書いたのかを思い出した。
それは、“好きな子に告白する”といった内容であったのを俺は覚えている。
そしてあそこに書かれている願いの内容は誰が書いたか分からなくなっているものの、殺されたりするとそこにある願いの内容の表示は暗くなるらしい。
つまり、現在俺がこの場でどこかの女性キャラに殺されたとすると……。
俺の書いた願いがばれて、俺に“好きな女の子”がいることが、同学年全員に知れ渡ってしまう。
い、いや、この状況ではまだ俺たちの名前は分かっていないので、ここで倒されても俺の願いと俺の名前は結び付けられないはず。
うん、大丈夫だ……と俺は焦る自分の気持ちを落ち着かせようとしているとそこで、アナウンスが流れて、
『状況が状況のため、今から成りすまし対策を兼ねて名前の表示をします』
といったような絶望的な気持ちに俺がなるようなアナウンスが流れたのだった。