油断大敵なとある出来事
俺の名前は藤居辰也だ。
ごく平凡な高校一年生である。
取り立てて美形でもなく、成績も普通という、比較的無個性な自覚が俺にはある。
何か素晴らしい才能の一つや二つがあったらそれはそれで面白いが、残念ながら今の所そこまでの才能は発揮できていない。
それに関してはゆっくりこれから探していこうと思う。
そんな俺はゲームや漫画、小説が大好きだった。
だからゲームに関しては多少慣れているといった方がいい。
確かにゲームなどの上手い人は、そもそもこの人は人間だろうか? と疑惑を持つような凄い人もいるが、そこそこ上手く出来る自信はある。
だから今回、俺たちの学校の同学年が、とあるVRゲームのテストプレイに選ばれたのは俺にとって幸運だった。
現在、VRゲームが一般化し始めており、そして若者を呼び込むためにどうしたらいいのかといった話になり……では、実際に十代の人達にプレイをしてもらうのはどうだろうか? といった話になったらしい。
ちなみにこのプレイをしてくれた人たち全員に、後で1000円分の電子書籍を購入できる券が配られるらしい。
そして、今回のゲームでは、4人までのパーティを結成して(但しそれ以下の人数で行動しても可能)、相手パーティや敵であるゲーム内のモンスターを倒して、最後に残った5人が勝利者となり後程このゲームや特殊なゲームのキャラクターなどが貰えるらしい。
ちなみに倒された人物はゲームから追い出されて、その後はネットなりなんなり好きに遊んでいていいらしい。
他にも、ちょっとしたイベントが用意されていた。
ゲーム内のシステムでも変わったものは確かにあったが、それとは別のイベント……。
「現実的な範囲で願いが一つ叶う、か。もっとも金銭は駄目らしいが」
俺は、現在、そのゲームのテストプレイの画面に入りながら、自分好みのキャラクターや装備を作り上げて、最終項目であるその項目についてみていた。
音声入力によって会話ができる優れもののこのゲーム。
ちなみに現在全員が個室に入って横になりながら、ゴーグルのようなものを目にかけてゲームをしている。
個人の家でゲームをする感覚を大切にしているらしい。
また、現実世界基準で食事の時間は決まっており、その間はゲームは全員中断される。
そしてお手洗いなどは、ゲームの片方の画面を消すことによって、それにより個人個人で移動しながらすることになるらしい。
ちなみに一部屋一部屋、トイレなどが装備されている。
小さな個室のホテルに泊まっているような形で俺達はゲームをすることになっている。
とまあ、これが現在の俺達の状況であったりする。
そして再び俺は、どんな願い事をしようかと考えてみたが……。
欲しいものはたくさんある。
ゲームにマンガに本に、その他もろもろだ。
そのどれか一つを選べばいいが、この願いが一つ叶う、という設定。
ちなみに、その願いをゲーム内で口にしたり他の人に話したりすると、失格でもあるらしい。
それもあってこの場所に隔離されるようにテストプレイをさせられるらしい。
ファンタジー系であれはもっと不思議なものを願えそうだが、
「好きな子への告白、とか」
というのもいいかもしれないと俺は呟く。
実は最近、幼馴染の女の子である平見玖瑠美がその……最近可愛いな、と思えてきていた。
可愛いというか、そ、その……好き、というか。
ついこの前まではそこまで意識していなかったのだが、あの出来事以来、俺は……。
などと俺が思った所で、時間切れですといった表示を見た。
しまった、願いを書くのを忘れていた、と思った俺の目に映ったのは……『好きな人に告白』と書かれた願いを書く欄だった。
背中に冷や汗がが垂れるが、すぐに俺は思いなおした。
「こ、これを機会に、うん。告白をしてもいいかもしれない」
そう俺は肯定的に考えることにした。
そうしていると、ゲームが開始されます、といったような声が聞こえて俺達は広場のような場所に移動させられる。
俺たちの学年は一クラス24人で、三クラス。
だから全部で72人になる。
ゲーム内でもこれだけの人数が集まると、壮観だ。
各々気合を入れたキャラクターを作っており、見ている分には楽しいが、誰が誰だか分からない。
これでパ-ティを作るのは大変そうだが、作らなくても構わないらしいので、いざとなったら一人で楽しくゲームを満喫してもいいかもしれない。
……でも今回バトルロイヤルも入るらしいのでそこまでゆっくり楽しめないかもしれないが。
なんでもバトルロイヤルな、デスゲームイベントも途中途中で開催する予定もあるので今回テストプレイで挑戦してみるとの事だった。
といった説明を思い出しながらそこで俺たちの目の前に巨大な薄い水色の光の板が大きく表示される。
そしてそれは小さく柵上に区切られてそれには一つ一つ文字が描かれていた。
なんでも常に、どこにいてもこの画面は全員が確認できるようになっているそうだ。
これは一体なんだろう? と思ってみていた俺は、すぐに凍り付いた。
そこには、俺がつい口走ってしまった願いが一つ乗っていたからだ。
そして、突然どこからともなく声がする。
『ようこそ“緑の楽園”へ。ゲームの説明は事前にしておりますので、こちらの巨大画面に説明させていただきます。現在ここには皆様の願いが書かれておりますが、戦闘で体力がゼロになると挑戦権がなくなり光が消えます。この画面はいつでもどこにいても確認できますのでご利用ください。では、説明は終わりましたので、ゲームを開始してください』
といったような適当な説明がなされる。
もう少し詳しい説明をしてくれてもいいと俺は思っていたが、すぐにそれどころではなくなった。
誰かが、とある一つの願いに気づいたらしい。それは、
「『同学年の女子の制服が欲しい』って書いたの、誰?」
冷たい声が漏れて、ざわざわといったざわめきが聞こえる。
軽蔑するといったような声が女性キャラ男性キャラが聞こえてそこで……。
「男子を全員抹殺すれば、叶わないわね」
一堂に集められた女性キャラの一人が、そんなことを呟いたのだった。
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