表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼の言っている事は全部嘘です  作者: アマゾン
3/4

第三話

(………… っあ… う……)


女を見つめる、顔があった


しかし、女はその顔の全容を完全に治める事が出来なかった

目の前のそれは明らかに女の常識を外れ、巨大すぎたのだ


真っ暗闇の空間に妖しく佇む「それ」

「それ」は寝そべっているような形で、女の小さな姿を眺めていた


「それ」の目は大きく、その眼球のだけで女の体躯の何十倍もある事が分かる

「それ」の手もまた大きかった 

女の退路を奪うような形で「それ」の手は女の背後に壁を作る


「それ」は昆虫を思わせるような外殻に覆われており

その口からは大きな、それは大きな牙が露出していた


女が変身した姿など、目の前の「それ」に比べたら蟻のような大きさでしかない

「それ」が吐息を漏らすたびに、女にその生暖かい風が送られてくる


「それ」は女を見つめている 勝敗は明らかだ 

女はもう何もする事が出来なかった


先程とは違った震えが女を襲う 女はガタガタと体を震わせながら

今から起きる事を黙って見るしか出来なくなっていた


「それ」が重圧な振動を与えながら、女に語りかけてくる


「これで、証明になったかな?」


その昆虫のような顔で、大きな目をギョロギョロさせながら「それ」は女に尋ねる

女は「それ」に怯えながらも、何とか静かに首を縦に振る


それに満足したのか「それ」が再び言葉を繋げる


「お前は自身の存在をどう思う?」


今度の言葉は女に対しての問いかけ しかし女は目の前の存在に気圧され

その言葉に答える事が出来ない


ならば、っとばかりに「それ」は言葉を続ける


「お前は私の垢から生まれた存在なのだ」


「え……」


「それ」の発言を聞いて、女がようやく、か細いながらも言葉を発する


「お前は私の半身 私の体から生まれた私の一部なのだ」

「そう、私が掻いた皮膚の垢から生まれたのがお前」

「つまり、私はお前の父親と言う事になる」


「………………………」


唐突に積み上げられていく、衝撃の真実 

女はどこか納得したような、落ち着いた様子で「それ」の言葉に耳を傾ける


そして「それ」の言葉が一段落したと判断して、女は問う


「私は… 貴方の欠片から生まれた存在なのですか?」

「そうだ お前は人の子ではない お前は私の子」


女の心が静かに揺れ動く


「お前は私の垢 私の力の一部 だからこうして迎えに来た」

「迎えに、とは… どういう事ですか?」

「私の一部となり、同化しなさい っと言う事だ」


「同化… それは、つまり…」


「私の力の一部に戻り、その存在を私に吸収されなさいと言う事」

「つまり私は…」


「消える事になる」


「父」はそう呟く 私は唾を飲み込んだ 

「父」のその言葉に、どう答えて良いか分からなかったのだ


少しの沈黙 そしてそれを破ったのは父だった


「嫌か?」


「…………………」


「娘」ではある私はそれに沈黙で答える


「それなら」


「それ」であり「父」であるそれは、そのあまりにも大きな手で

私の頭を器用に愛撫した


私はそれにどうして良いか分からなかった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ