第二話
(…………… え?)
目を瞑り、力を使うべく気を張っていた彼女の耳元でささやく声
女は声が聞こえた瞬間に大きく後ろに跳ね、その「声」の主と対峙せんとする
(…………… 何だこいつは )
正面に立つ「声」の主 それはニタニタと粘つく笑顔を浮かべる若い男だった
顔立ちはと言うと、とても整っている
しかし整っているからこそ、その異様さが余計に目に付く
この男は、いつ自分の前に立ったのだろうか?
女は男に警告を発するべく口を開く しかしそれを遮るように男が先に発言した
「やぁやぁ、我が娘よ 探していたぞ」
男は大きく手を広げる
「こんな所に居たのか さぁ、私と共に来るが良い」
男が手を広げながら、こちらに近づいて来る
「さぁ、私と一つとなろう それがお前の」
「動くな!!」
近づいて来る男を制止させるべく、女はその「六感」を使い
巨大な人型のコウモリのような化物へと変化し、男を威圧する
しかしあくまで威圧だけ 女は震えていた
それは恐怖からではない それは女にも良く分からない感情だった
女が言葉を繋げる
「ただの人が私の親など笑わせてる 何の目的があって私に近づいたか知らないが
この私の姿を見ても、まだ私の親などと世迷言を言うのか」
変身した女は目の前の男の体躯と比べて3倍はあるだろう
女は男を見下ろしながら、男が逃げ出すか、または「まだ」続けるかを見定める
そして男が選んだのは「まだ」だった
「証明が必要か?」
男がにやつきながら、女に問う
「証明? やれるものならやってみろ 私は」
女の言葉を遮るように男の周囲から黒い瘴気のような噴出し
女の視界を闇色に染めた
一瞬で黒に染まった空間、しかし女の目が慣れると
「あ……!! えっ……!!」
今度は本当に純粋な意味で、女は目の前の「それ」に恐怖した