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第四十三話 これは紛れもなく俺の本音だった


 理沙はかなり疲労が溜まっていたらしく、しばらくの間安静が必要らしい。そんな様子は微塵も見せなかっただけにショックだった。


 でもよくよく考えてみると、彼女は鑑定屋を一人で切り盛りしてて助手が欲しいって言うくらい忙しかったわけで、その上俺らの食事とか毎日のように作ってくれて、なおかつ常に元気で笑顔っていう気の使いようだったからな。いい人ほど早く死んでしまうっていうのもうなずける話だった。


 そんなわけで、俺たちは用事があるという流華と店を経営する鬼婆を除いて、いつもの駄菓子屋二階に戻ってきたところなんだが、パーソナルカードをじっと見つめる六さんの様子がさっきからおかしい。


 顔が真っ青だし、よく見ると震えてるしで今にも倒れそうな気配があった。


「六さん、どうした?」


「六さん、どうしたでやんすか?」


「く……」


「「く……?」」


「く、クビになったっす……」


「「ええ……!?」」


 まさか、それって英雄のスキャンダル記事を載せた影響なのか……。


「こうしちゃいられんとでごわす!」


「「あっ……」」


 六さんは俺たちが止める暇もないほど猛然と部屋を飛び出してしまった。おそらく新聞社に抗議をするために向かったんだろう。確かにあまりにも理不尽な話だ。いくら相手が英雄だからって、無差別殺人の犯人であるという証拠を載せただけでクビにされてしまうんだからな。それだけ遺跡管理委員会の権力が絶大で、恐ろしいほどの圧力が新聞社にかかったってことだろうが……。


「……」


 って、これって実はかなりまずいんじゃ? 六さんだって口調を変えてバレないようにしてたはずなのに、英雄側に特定されてるってことだよな。


「――た、ただいまっす……」


「「あっ……」」


 六さんがあまりにも早く帰ってきた挙句、ずっとうつむいてるので色々と察した。もうここが英雄たちの裏側を暴露した者たちの根城だと、やつらに気付かれてしまってるっぽい……。


「ここまで尾行されたしまったのは、油断したおいどんの責任っす……。かくなるうえは切腹するでごわす……!」


「お、おいっ!」


「六さん、ダメでやんすよ!」


 六さんが座り込んだかと思うと、どこからともなく短刀を取り出したので慌ててコージと一緒に止める。


「大丈夫だ、六さん。むしろ、()()()()()()


「「え……?」」


 コージと六さんに意外そうな顔を向けられるが、これは紛れもなく俺の本音だった。




 ◇◇◇




「姿月ちゃんのやつ、おっせえなあ……」


 苛立った表情で部屋の中を右往左往する水谷皇樹。


「あいつ、もう来ないと思う……」


「……へ? 河波、なんでそう言い切れるんだよ? やつは俺たちの中じゃ一番頭の切れる女じゃん。こんなときこそなんとかしてくれる――」


「――だからこそ、よ」


「だからこそ……?」


「そう。これほどまでに追い詰められたからこそ、琉璃も水谷君も梯子を外されたんだよ。あの女狐に……」


「バ、バカ言うなよ……」


「水谷は幹根姿月のこと信頼してたみたいだから言い辛かったけど……琉璃ね、あいつの正体、掴んでたんだ。遺跡管理委員会の会長の娘、宵山千影よ」


 河波の告白に対し、水谷の目がこのうえなく見開かれる。


「う……嘘だろ……それ、マジヤベーやつじゃん……」


「この前の事件でわかったんだ。そうでもなきゃ、ここまで揉み消せないよ。いくら英雄でも、無差別殺人の証拠を握られたんだよ……?」


「くっ……そ、そんな大物だったとして、俺たちをどうしようってんだよ……」


「それはわかんないけど、ダンジョンの広告塔として利用してたんじゃないかなぁ。でもあいつが丈瑠と繋がってるのはこの目で見たから明白だし、汚されちゃった水谷君や琉璃は、もう不要な存在なんだと思う……」


「……クッソ! だから白崎のやつ、あんなに強気だったのかよ……!」


「とにかく、まずは水谷君を罠に嵌めた害虫を駆除しないと、何か行動を起こそうとしてもすぐ足を掬われるよ……」


「……確かにそうだけどさ、できんのか? 害虫とはいえ、結構ヤベーやつらだぜ……?」


「大丈夫だよ、水谷君。既に手は打ってあるもん……」


 水谷を見つめる河波の目が怪しく光った。

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