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左近の桜、右近の橘。  作者: みんくん
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第8話

「ただいまー」

「あ、お姉ちゃん、店番変わってくれない?」

「まずは最初におかえりを行って欲しいんですけど…」

「あ、ごめん、お帰りおねえちゃん、それで店番変わってもらいたいんだけど」


あれから既に20分は経っているだろう。どうせ十分程度と思っていたが思った以上に時間がかかった。

「いいけどどうしたの?そんなに急いで」

「いま先輩が私の部屋で待ってるの」

「先輩?」

「そう、立花右葉先輩、文芸部の」

「あぁいつも左枝が話してる子ね、珍しいね左枝がお友達連れてくるなんて」


因みに小学校以来友達を連れてきたことはない。

「元々常連さんだったの、お母さんがいつも言ってた美人なお客さん」

「あぁ、あの綺麗な子…高校生だったんだね」

「うん、お母さんがご飯食べてきなさいって引き止めちゃって」

「あー想像できる」


苦笑のお姉ちゃんにエプロンを託す。

「じゃぁお店よろしくね」

「相分かった!」


階段を上がりドアを開ける

先輩は私のベッドに横になり、私の枕に顔をうずめて居た。

足もバタバタしていた。


「せ、先輩、何やってるんですか…?」

「左枝!?こ、これは違うんだ!その、とにかく違うんだ!」


顔を青くして手をブンブンと振る。

余りにも大げさなそのふりは明らかに何かある顔だ。


「先輩?」

「その、左枝のいい匂いがして、こらえきれずに…」

「えぇ!?」


つまり私の枕の匂いを嗅いでいたというのか!?

「う、嘘ですよね…?冗談ですよね…?」

「…う、うそだよ?」


あ、本当なんだ…

水を得た魚のごとく泳ぎまくる目は明らかに怪しく、確実に匂いを嗅いでいた。


「先輩の変態」

「ち、ちがうんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


閑話休題


「落ち着きましたか?」

「あぁ、もう大丈夫、落ち着いたよ」

「私はまだ落ち着いてませんけどね」

「本当だ、顔が真っ赤だ、可愛い」

「叩きますよ…グーで」

「目が笑ってないよ!?冗談だよね?!と言うかそれって殴るってことだよね!?」


今度先輩のお家に行ったら絶対に同じことしてやると心に誓う。


「それよりも左枝が書いた作品を読んでみたいのだが…今すぐ出せる物あるかな?」

「私が書いたのですか?」


部屋に似つかわしくないゴツいプリンターをみて先輩は多分私が小説を刷っていることは分かっているのだろう、隠すだけ無駄か。


「ありますよ、でも本当に下手くそですから…その、あんまり期待しないでくださいね」

「期待はするさ、君がどんな文章を書くのか僕はまだ知らないからね…楽しみだよ」

「もう!そんなにハードル上げないでください!」

「ハハハ」


机の引き出しに入っている紙の束の一番上の束を渡す。

これは最近書いた小説で私と先輩をモデルにしたお話だ。

とある高校で部活に見学に行ったらすごい綺麗な人がいて一目惚れをするというお話。

色々と嘘も織り交ぜて創作しているから多分先輩も気づくことはないだろう。


「これです…笑わないでくださいね…?」

「お、おぉ、思っていた以上にたくさん書いているね…」

「これで一つです、他にもいっぱいありますよ」

「これで…」


先輩の目つきが今までの笑顔から真剣なものへと変わる。

「これは…小説だよね?」

「はい、創作の恋愛小説です」

「そうか…」


カチカチという時計の音と定期的にめくられる紙の音と私がキーボードを打ち込む音が部屋に響く


「つっ・・・!」///

赤面する先輩、多分あのシーンだろう。

因みに今書いているのは先輩が読んでいる小説の続きである。一応あっちは完結しているが続きのサイドストーリーという感じで今は書き進めていた。


細かな内容で言えば共学高校で入学式の日に文芸部を尋ねる男の子が居てその子が部室に入るととても綺麗な女性の先輩が居てその先輩に一目惚れするというお話だ。


「読み終わったよ…左枝、これは僕たちの話だよね…?」

顔を真っ赤にして恐る恐る聞いてくる先輩。え!?と言うかなぜバレた!?


「え!?いやっ、え!?なんで…」

「いや、これはわかるよ流石に…」


つまりこれは私が先輩に小説を使って盛大な告白をしたという事になるのだろうか?

恥ずかしい、非常に恥ずかしい。

それこそ顔から日が出るくらい恥ずかしい。


「さ、左枝が私のことをどういう風に想っていてくれたのかよく分かったよ…その、僕も君の事が大好きだ、そのふわふわな髪の毛が大好きだ、その大きな目が大好きだ、そのキレイに整った鼻筋が大好きだ…君のすべてが私は大好きだ」


「うぅ…」


顔から火ではなく溶岩すら出そうなきがする。こう、どろぉっと。


「左枝、その…お願いがあるんだ…」

目を伏せて遠慮がちな先輩。


「なんですか…?」

「私の事、右葉って、名前で読んで欲しい…ダメかな?」

「…」

「一回でいいんだ…今は一回でいい…だから頼むよ…」


断れるわけがないじゃないか…。

顔を真っ赤にして目が泳いででも伏せがちで…。そんなこと言われたら断れるわけがないじゃないか…。


「……ぱい」

「え?」

「みぎは…先輩」


「左枝!」


私の事をギュッと強く抱きしめる先輩

「大好きだ左枝…大好きだ」

「私も大好きですよ…右葉先輩」


こうして私は彼女のことを名前で呼ぼうと思った。…多分…できれば…。

読んでくださりありがとうございました。

次話もどうぞ、よろしくお願い致します。

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